株式会社 電通 データ・テクノロジーセンター(以下:DTC)では、デジタル時代のマーケティングを推進すべく、データプラットフォーム環境を整え、そこで得たデータ分析を土台としながらさまざまなソリューションを開発・提供しています。その中核を担うのが、DTCに在籍する多くのデータアナリストです。
Transformation SHOWCASEでは、電通グループで活躍するデータアナリストたちによる座談会を開催。本記事はその第3弾となります。他社でデータアナリストとしての経験を豊富に積み、今は電通DTCで活躍する福田真大氏、舟木姿子氏、中嶋真氏、淺田祐希氏に話を聞きました。後編では、電通で求められるデータアナリストとしての資質や、仕事のやりがいについて深掘りしました。
データアナリストにも、ビジネスの視点が必要
Q.電通が提供するマーケティング領域で求められるデータアナリスト像についてお聞かせください。どんな人が適しているのでしょうか。
淺田:根本として、pythonやRなどのプログラミング言語・解析ツールを用いた、汎用的な統計解析を理解できる能力を持っている人です。たとえ異業種からの転職であっても、そのようなデータアナリストとしてのコアスキルを持っていれば、電通で業務をこなしていくうちに、「マーケティングサイエンス」と呼ばれるマーケティング理論に基づいたデータ解析を行う電通に特化した領域を習得することができます。ただ、マーケティングサイエンスのアカデミックなナレッジのみを習得しただけでは、お客さまが満足する形で業務を遂行するのは難しいと思います。データアナリストには、クライアントさま、プランナー、ビジネスプロデューサーに対する説明責任が伴うので、誰もがきちんと理解し納得できるだけの説明力が必要です。それには、学術用語を並べ立てるだけでは不十分。アカデミックに帰結する論法ではコミュニケーションできませんし、真摯な対応ができません。これは電通に限った話ではないと思いますが、そういった翻訳力が欠かせないのではないでしょうか。
株式会社 電通 淺田 祐希氏福田:それに加えて、データの分析結果をどうマーケティング施策に役立てるかというアウトプットは、プランナーと一緒に取り組む必要がありますよね。こうした連携が苦手な人だと、円滑に仕事を進めるのが難しいかもしれません。
舟木:確かにデータアナリストにも、ビジネス課題を捉える視点が必要ですよね。「コミュニケーションは苦手だけど、データ分析は得意です」という方は、難しさを感じるかもしれません。逆に言うと、こうしたスキルがあれば、経験年数に関わらず仕事を任せてもらえます。実際にDTCは若手の活躍が目覚ましいですよね。
中嶋:キャリア入社して特に若い方の活躍は確かに勢いを感じますね。一方で「組織」としてはもっと伸びしろがあるのではないかというのが私の個人的な意見です。そもそも、広告業界において、データサイエンスやデータアナリストといった領域はまだ歴史が浅く、昨今の時代のニーズに従って、人材を強化している企業も多いのではないかと思います。私たちが所属する電通も同様です。個々の高いスキルセットを保有するデータアナリストがビジネスへの貢献力を高めるためにプランナーやビジネスプロデュースのチームとワンチームで駆動する組織としての統合力がカギになると思っています。またそういった統合力を再現性・継続性を持ったソリューションとして提供し続けていくためには、組織として採用/育成、業務プロセスの型化・標準化、さまざまな取り組みが必要と考えています。あらためて「組織力」をどう高めていくか。そのためには、データ領域において、私のような「アラフォー世代」が果たすべき役割も大きいのではないかと思っています。
株式会社 電通 中嶋 真氏企業のデータ活用方針を左右する、やりがいのある仕事
Q.では、皆さんが仕事において達成感や楽しさを感じるのは、どんな時でしょう。喜びを感じるポイントについて、教えてください。
福田:大きく2つあります。1つはデータを見ながら「これはどういうことだろう」と生じた疑問やそこで生み出した仮説が、調査や分析を進めていく中で「これだ!」とつながった瞬間です。
もう1つは、データの分析結果をクライアント企業さまに報告する際、思いもよらない角度からのご指摘を頂いた時です。「そういう視点もあるのか」と発見があり、楽しくなります。分析結果をわれわれ視点でご説明させていただくことで、クライアントさまから価値観や、ターゲットに込めた思いをあらためてご説明いただけることもあります。ただデータを提出してアカデミックに分析結果を報告するだけでなく、クライアントさまと、「こういう考え方もできないか」という新たな解釈や表現をディスカッションさせていただくことに楽しさを感じます。
舟木:クライアントさまが納得するアウトプットを作れると楽しいですよね。いろいろな意見を取りまとめ、最終的にクライアントさまの利益につながるアウトプットができると達成感を覚えます。
株式会社 電通 舟木 姿子氏中嶋:自社データを保有するクライアントさまと共同でソリューションやサービスを作る際には、そのクライアントさまが今後どのようにデータを活用するのかという将来的な構想を含めた動きが関わってきます。そのために、例えば電通がソリューションを提案しても、クライアントさまがデータを取り扱うにあたってのプライバシーポリシー面の整備や、社内での各部門への調整、承諾を得ていただかなければ、データの活用範囲が制限されます。そうした中で、クライアントさまも含めたチーム一丸となって大きな組織を動かせたときにやりがいを感じます。
淺田:私も2つあります。まず、何か問題が発生した際、その原因を追求・特定できたときに喜びを感じますね。前職ではシステム保守・運用を担当していた経験もあるので、システム上のフローにエラーが生じたとき、問題の根本にスピーディーに到達できるとやりがいを覚えます。
もう1つは、当初の想定とは異なる形でプラスのデータ分析結果が出たときに面白みを感じます。具体例を挙げると、「自動車関連商材の広告クリエーティブをSNSに流し、広告を閲覧した人のペルソナを測定してほしい」という案件。昔懐かしい商材だったので高齢の方がクリックするのかなと思いましたが、ふたを開けてみると最も反応が多かったのは「メイク好きの若い女性」。「レトロかわいい」と感じて、広告をクリックしたようです。「この商材はそういう捉え方もできるんだな」と分析者として興味深かったですし、クライアントさまにも非常に喜んでいただけました。
データ分析結果に基づくアウトプットまで、一気通貫でソリューションを提供
Q.ITコンサルティングを専門とする企業もたくさんありますが、その中で自分たちのユニークネスはどこにあると思いますか?
福田:一番のユニークネスは、データの分析結果に基づくアウトプットまで作れる点だと思います。アウトプットを考え、実際にクリエーティブの作成まで行うことができるのは、電通グループならではの提供価値ではないでしょうか。
株式会社 電通 福田 真大氏舟木:私もクリエーティブまでできるところが、一番の価値だと思っています。より良いプランニングができるのも、幅広いデータを扱えるからこそ。
中嶋:電通のDTCでは、開発部門でありながら、“外”を向いて働いている人が多いという印象です。データ・テクノロジーセンターとして、クライアントさまに対してどのようなソリューション、サービスを提供するのかという明確な方向性がありますよね。当たり前のことを当たり前に実行できている、そこがユニークネスだと思います。
淺田:1人ひとりの可動域がとても大きいですよね。もちろん個人情報が保護される範囲ではありますが、どういうデータ分析ができるのか存分に試せる環境だと思います。
Q.データマーケティングの重要性を理解しつつも、データの専門家に対してどのように相談を持ち掛ければいいのか分からない方もいると思います。どのようなお声掛けをすればいいでしょうか。
福田:難しいことは考えず、ざっくりした相談で全く問題ありません。とりあえず「困っていることがある」とお声掛けいただき、対話を重ねながら課題の認識、ソリューションの提案ができればと思います。ぜひお気軽にご相談ください。

日々膨大なデータに向き合い、分析やソリューション開発を行うデータアナリスト。アカデミックな分析スキルはもちろん、データや分析結果を活用するビジネス的な視点も持ち合わせることで、クライアントさまに喜んでいただける価値の高い仕事をご提供することができるという指摘は興味深いものでした。また、データアナリストという職種にご興味がある方にとっては、それがどういう仕事かを具体的にイメージする上で、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。