人事施策を推進しつつも、自社だけでは全ての課題をカバーし切れず、プラットフォーマー、データベンダー、コンサルティング企業など多岐にわたる社外プレイヤーの支援を受けている企業も多いのではないでしょうか。そんな中、株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)、株式会社電通デジタル、イグニション・ポイント株式会社は、戦略・基盤・データ分析を一気通貫で行うトータルHRソリューション「HUMAnalytics(ヒューマナリティクス)」を2023年5月にリリースしました。
そこでTransformation SHOWCASEでは、プロジェクトに携わった、ISIDの二ノ宮雄将氏、電通デジタルの山田健氏、イグニション・ポイントの福井雄貴氏に、同ソリューションの特長についてインタビューを実施。後編では、人事部門が抱える課題、“攻めの人事”への変革に必要な考え方について語ってもらいました。
人的資本経営が求められ、企業の人材戦略が大きく変化
Q.皆さんは統合HCMソリューションの提供、コンサルティングなどさまざまな形で企業の人事部門と接点をお持ちです。人事部門が抱える課題として、共通項はありますか?
山田:どの企業も「生産性が上がらない」「研修の効果が分からない」「異動配置が属人的になっている」「内定の歩留まり率が見えない」など、さまざまな人事課題を抱えています。こうした課題に対し、これまでは人事部門が属人的に対応してきましたが、昨今はビッグデータ分析やAIによるデータドリブン人事に注目が集まっています。ただ、表面的にデータを分析しても、的を射た人事施策は打ち出せません。「今の人事制度の在り方で本当にいいのか」「データの取り方はこれでいいのか」とコンサルティング領域まで落とし込んでいく必要があると感じています。
福井:外的要因としては、上場企業を中心に2023年度から人的資本の情報開示が義務化されたことも大きな課題です。これは、簡単に言うと「経営戦略と連動し、人材戦略を投資家やステークホルダーに開示しなさい」「オペレーショナルに人事制度を運用するだけでなく、これからは戦略的に改善していく姿勢を示しなさい」ということ。とはいえ、オペレーション人事に注力していた企業は、何をどうすればいいのか分かりませんよね。「HUMAnalytics」は、こうした課題にも対応しています。
イグニション・ポイント株式会社 福井 雄貴氏二ノ宮:クライアント企業さまに足を運んでいると、オペレーショナルな領域を担う人材よりも、人事の企画・戦略に携わる方々の比率が少しずつ上がってきているように感じます。人事制度を策定でき、なおかつITの知見を持ち合わせた人材が人事部門に必要だと浸透してきたからかもしれません。ただ、まだまだそういった人材が少ないのが各社の課題ではないかと思います。
Q.人事は専門職ですが、“人事のプロ”はなかなかいないということでしょうか。
福井:というより、ここにきて、人事部門に求められるものが変わり始めているのだと思います。「オペレーショナルな人事領域」というと、ただ制度を運用しているだけのように聞こえるかもしれませんが、人事は専門性が高く、非常に重要なポジションです。採用面接も限りなくヒューマンスキルが求められる仕事ですし、労務に関しても人間関係とルールの間でうまく折り合いをつけなければなりません。そもそもオペレーショナルな領域をしっかり対応できるという時点で、その人材は非常に高い専門性を発揮しています。
ただ、昨今はデータドリブン人事への変革に取り組む企業が多く、従来の業務にプラスしてデータ活用や人事施策の提案が求められるようになっています。もともと専門性の高い部署でしたが、“攻めの人事”にシフトしようとしている過渡期に差し掛かり、経営戦略などにも目を向ける必要性が生じてきたのです。
私たちがコンサルティングをする中でも、多くのクライアント企業さまから「プロ人事がいない」「“攻めの人事”をしたいけれど、社内にはそれができる人材がいない」「新たに採用しようとしても、ほとんど見つからない」というご相談をいただきます。人事系のプロフェッショナル人材の需要が高まっているにもかかわらず、これまでオペレーショナルな、いわば“守りの人事”を重視してきた文化があるため、そういった人材が不足しているのではないかと感じます。こうした課題をお持ちの企業に対しても、お力になれればと思います。
他部門も巻き込んだ横断的な人事改革が必要
Q.人事部門が変革を迎えているということは、このソリューションのターゲットも人事担当者とは限らないのでしょうか。どんなイメージを抱いていますか?
二ノ宮:ISIDもそうですが、今、人事部門と事業部門が連携して取り組みを進めている企業は増えているのではないでしょうか。採用や育成、人材の配置などは、今や人事部門だけでは決められません。事業部門も巻き込まなければなりませんし、経営戦略も絡んでくるため経営企画部門も関わってきます。関係する部門は確実に広がっていると思います。
山田:人的資本情報開示の義務化となれば、IR部門も関わってきます。フェーズにもよりますが、人事部門に限らず、経営企画部門、事業部門も巻き込んで人事施策を立てるようになっていくと思います。
株式会社電通デジタル 山田 健氏Q.今後、「HUMAnalytics」をどのように進化・普及させていきたいですか?
山田:現状では、ISIDの統合HCMソリューション「POSITIVE」を導入済みのクライアント企業さまのご意見を伺いつつ、幅広い人事課題をサポートできたらと考えています。将来的には、さらにコンサルティング領域を強化し、今以上のフレームワーク化も検討していきたいですね。
二ノ宮:まさに今、クライアント各社さまと商談を進める中で、その課題がどの企業にも共通しているのか、それとも個別の課題なのか、模索している段階です。共通している課題については、テンプレート化やプロダクト化を検討していきたいですし、個別の課題についても私たちのソリューションの範囲を広げたり、変化をさせながらアジャイルに対応していけたらと思います。
株式会社電通国際情報サービス 二ノ宮 雄将氏福井:先ほども話に上がったように、今は人事の在り方が変化しつつあるタイミングです。こうした変化の中で、クライアント企業さまが本当に求めているのは何なのか、どんな悩みがありどのようなソリューションが求められているのか。まずはそれを見極めていくことが、直近のゴールだと捉えています。その先に、山田さんがお話されていたような新しいフレームワーク化が実現できたらと思います。

上場企業に対する人的資本開示の義務化、経営戦略と人事戦略の連動、データドリブン人事への移行など、人事を取り巻く環境は今、大きく変わりつつあります。「人事の課題をあらためて見直したい」「採用・育成・配置・評価など幅広い領域でデータを活用したい」など、企業によって直面している問題も大きく異なるのではないでしょうか。「HUMAnalytics」のようなサイクルを通じて企業価値向上につなげることができるトータルHRソリューションを導入することが、課題解決の一助となるかもしれません。
