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生成AIの“対話”で変わるマーケティングの未来No.2

生成AIはマーケティングの何を変えるのか? -活用事例から見えてきた本命の使い方-

2025/01/07

生成AIの登場は、マーケティングの未来を大きく変革する無限大の可能性を秘めています。

電通デジタルでは、AIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI(ムゲンAI)」を開発し、対話型生成AIを構築する「∞AI Chat」をはじめとする各種ソリューションの提供を通じて、さまざまなクライアントの課題解決に取り組んでいます。

数多くのクライアントの生成AI活用を支援する中で見えてきた、マーケティングにおける生成AIの本命の使い方について、電通デジタル 執行役員 データ&AI部門長の山田健氏がお伝えします。

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写真提供:Brand Summit Autumn
※本記事は「Brand Summit Autumn 2024」で講演した内容をもとに構成しています。
 


生成AIによる「対話」が、マーケティングファネル全体に変革をもたらす

世の中は、空前の生成AIブーム。業界問わずあらゆる企業が活用を検討するようになり、もはや実証実験レベルの取り組みは珍しくありません。そして、すでに業務やサービスへの導入を実現しているケースを耳にする機会も増えています。

私たち電通デジタルも「∞AI」というAIソリューションブランドを中心に、さまざまなクライアントの生成AI活用を支援しています。それらの活動を通じて、いよいよ生成AI活用の“本命”とも言える使い方が見えてきたので、今回はそれを紹介したいと思います。

生成AIの登場は、従来のマーケティングファネル上に「対話(チャット)」というフェーズを生み出しました。例えば、従来であれば認知フェーズの顧客接点はテレビCMなどが中心でしたが、生成AIを活用したチャット検索では対話を通じて潜在ニーズを引き出すことができるため、顧客が自分でも意識していなかった商品と出会えるようになるなど、潜在層へのリーチを獲得することも可能になります。

そして、関心から購買までのフェーズに対話型広告やコンシェルジュAI、営業AIなどを通じた「対話」「相談」を組み込むことで、個別最適化されたインタラクティブなナーチャリングができるようになります。さらに、購買後もパーソナライズAIとの対話を通じて既存顧客対応の向上、リピート増加などが見込めます。このように、生成AIの「対話」は、マーケティングファネル全体に変革をもたらす可能性を秘めているのです。

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これは一例ですが、三井不動産様との取り組み「三井でみつけて」では、すまいに関するご相談にワンストップでお応えする住宅総合サイト上に生成AIチャットを実装し、情報検索の効率化を目指しています。また、集英社様の事例では、対話AIによるパーソナライズでユーザーの潜在的なニーズにマッチしたマンガをレコメンドするサービス「DEAIBOOKS」を実現しています。このように、多様な業種、多様なビジネスシーンで生成AIを活用したマーケティングの効率化・高度化はどんどん進んでいるように思います。

生成AI活用を成功に導くための「3つのReason」

生成AIのビジネス活用への期待はますます高まる一方ですが、「本当にうまく使えるの?」という疑問をお持ちの方も多いと思います。私たちはこれまでに多数のクライアントの生成AI活用を支援してきた経験から、生成AIの力を最大限に有効活用するための3つのポイントを重視しています。

これからお伝えする「3つのReason(理由)」を押さえることで、生成AIをマーケティングで機能させることができると考えています。

(1)商品を求める“理由”を捉える

一つ目のポイントは、商品を求める理由、いうなれば「顧客のVoC(Voice of Customer)」の収集装置として生成AIを機能させることです。

分かりやすい事例として、アートネイチャー様と開発した「HAIRの部屋」というサービスを紹介します。「HAIRの部屋」はウェブ上で毛髪相談ができるカウンセリングAIサービス。医師の監修のもと制作した150以上のコンテンツをもとにした生成AIが、ユーザーと対話しながら個々のお悩みに合わせたアドバイスを行います。

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これだけを聞くと、「単なる検索機能がチャットになっただけでは?」と思うかもしれません。しかし、チャット対話は従来の検索が直面していた“限界”を超えることができるという点で大きな違いがあります。例えば、ユーザーが「白髪 シャンプー」と検索した場合、「白髪染めにも使えるようなシャンプーを求めているのだろう」と推測することはできます。

でも、もしかするとユーザーは使用者本人ではなく、お父さんやおじいちゃんに使ってもらうことを考えているのかもしれません。このように、通常の検索行動から追えるのは「行動理由の“推測”」にとどまり、本当の理由や背景を捉えることは難しいのが現状です。

一方、チャット対話であればユーザーとの会話からさまざまな情報を取得することができます。さらに、AIとのチャットだからこそ、“本音ベース”のVoCを取得できる点も大きなポイントと言えるでしょう。このように、ニーズ(検索)の理由・背景を捉えることはもちろん、ライフスタイルや経済条件なども加味した「商品を求める理由」までを解像度高く捉えることができるのが生成AIの強みであり、目指すべき価値だと思います。

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生成AIチャットと本音ベースの会話を重ねることで、解像度の高いペルソナを作成することも可能になる

(2)生成AIと対話する“理由”を作る

ここまでお読みになって、「そもそも、AIとそんなに話さなくない?」という疑問が浮かんだ方もいるかもしれません。確かに、ChatGPTと毎日長々と会話を楽しんでいる人はいないですよね。

だからこそ、生成AIの対話を設計する上では、ユーザーが話したくなる理由をきちんと作ることが重要になります。

ユーザーが話したくなるAIとは何か?対象となる商品・サービスの専門知識を持っていることは大前提として、その上で大切なのは、ユーザーにとって「話が分かる人」です。つまり、その人(ユーザー)のことを知っている、なおかつ、その商品を買う人たちの特徴を知っていることがポイントになります。

例えば、私がチャットを立ち上げた時点で「過去にあの商品を買ったことがある、あの山田さんね」「あんな悩みがあって、こんな相談をくれている、あの山田さんね」という情報をすでにAIが把握している状態を作る。さらに「そんな山田さんのような人たちのインサイトや傾向はこんな感じだよね」という情報も把握した上で会話をスタートする。そうすることで、ユーザーはより自分の悩みやニーズにぴったりなアドバイスや提案を受けられるようになり、「このAI、分かってるじゃん!」と会話も弾むようになるのです。

この「話が分かる人」を作るためのアプローチ方法はさまざまですが、∞AIの場合は、クライアントが保有するファーストパーティデータ(CDP)やチャットの会話ログだけでなく、国内電通グループ独自の統計分析から得た知見を活用することで実現しています。

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(3)パーソナライズで買うべき“理由”を提供する

ユーザーが商品を求める本当の理由を理解し、ユーザーが生成AIと話したくなる理由を設計する。その先に目指すのが、3つ目のポイントである「パーソナライズで買うべき“理由”を提供する」です。

分かりやすい事例が、前回の記事で紹介したゴルフダイジェスト・オンライン様の「GDO店員さんAI」です。これは、ゴルフ場予約ページに設置した対話型AIサービス。フリーワードでユーザーとAIが自然な会話をしながら一人一人の細かな要望や好み、潜在的なニーズを汲み取り、AIが個別に最適な提案を行うことでゴルフ場予約を促進します。

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さらに、プレー後の振り返りにもAIとの対話を活用いただくことで、ユーザーのニーズに合わせたアイテムや次回のゴルフ場の提案にもつなげています。とことんパーソナライズされたAIとの対話を通じて、そのユーザーにとってぴったりな商品・サービスを提案できる。それが生成AIの強みを最大限に生かした活用方法ではないかと考えています。

3つのReasonを回すことで、マーケティングのエコシステムをどんどん成長させる!

ユーザーが生成AIと“本音ベース”の対話を重ねることで、解像度の高いVoCを取得する。ファーストパーティデータや外部データを活用して、ユーザーが話したくなる生成AIを構築する。対話を通じて得られたインサイトに基づいて、ユーザーにぴったりな商品・サービスをパーソナライズに提案することで購買につなげる。この一連のプロセスを経てまた高度なデータを取得できるので、それらを活用して「3つのReason」をぐるぐる回していく。このマーケティングのエコシステムをどんどん成長させていくことこそが、私たちが考える生成AIの本命の使い方です。

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さらに、このエコシステムはマーケティングを超えた幅広い領域に拡張できる可能性があると考えています。例えば、「∞AI」にはデジタル広告のクリエイティブや効果予測などを自動化・最適化する「∞AI Ads」というソリューションがあるのですが、エコシステムに蓄積されたインサイトを活用することで、より一人一人のニーズにパーソナライズされたクリエイティブを自動生成できるようになるかもしれません。広告に限らず、オウンドメディアの記事コンテンツやメルマガ、LPなどの各種クリエイティブへの応用も考えられるでしょう。

このように、日進月歩で大きな変化と成長を遂げている生成AIは、常に未完であり、まさに“ムゲン”の可能性を秘めています。電通デジタルはこれまでにもAI技術を活用してさまざまなサービス開発やプロジェクトを実施してきたケイパビリティを生かし、これからもクライアントのビジネス革新と生活者のより良い暮らしへの貢献を目指していきます。

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