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公開日: 2023/11/30

100年後の渋谷はどうなる? 東京建物が描く、まちと人と教育の未来(後編)

渋谷エリア最大規模の再開発「Shibuya REGENERATION Project(渋谷二丁目プロジェクト)」を推進する東京建物株式会社。2029年度の竣工を目指し、ファッションやITなどのイメージが強い渋谷エリアでありながら青山学院大学や旧こどもの城など、教育文脈も残るこのエリアの特徴を生かしたまちづくりの検討が進められています。株式会社 電通サステナビリティコンサルティング室は、東京建物の関宏太氏を訪ね、渋谷二丁目プロジェクトの概要や、その柱となる「STEAM教育」の構想についてインタビューしました。

後編では、3つの街区から成るまちづくりのイメージや、再開発のコンセプトについてお聞きします。聞き手は、電通サステナビリティコンサルティング室の山田健人氏が務めます。

人の流れをつくり、渋谷の奥行きを広げる新たなランドマーク

山田:渋谷二丁目プロジェクトでは、エリアをA、B、Cの3街区に分けてまちづくりを検討しているとお聞きしました。それぞれのエリアの特徴を簡単に教えてください。

関:A街区には渋谷駅東口エリアの新たなランドマークとなる上空広場を建設予定です。B街区にはオフィスやホテル、商業施設やバスターミナル、STEAM人材育成拠点を備えた複合施設を、C街区には住宅メインのタワーを建てます。これまで渋谷二丁目は、渋谷の他のエリアに比べると人の流れが少ないエリアでした。そのため、A街区に人を集め、そこからB街区やC街区、周辺エリアに人流を生み出し、エリア全体に新たな賑わいをもたらすといった構図を描いています。

山田:A街区のイメージ写真を拝見しましたが、かなり個性的なランドマークになりそうですね。

青山通りから見たA街区に建設予定の上空広場

関:A街区の階段状の建物にはランドマーク性だけではなく、実は渋谷駅や青山方面から来た人を地上から2階レベルに上げ、AB街区間の歩行者デッキに促す機能も持たせています。それにより、B街区やC街区、その先の周辺市街地へと歩行者の流れを生み出し、渋谷の奥行きを広げていく狙いがあります。また、ランドマークとなる上空広場でイベントを開催するなど、新たな集いの空間としても機能させたいですね。

サステナビリティの次にくる新しい概念「リジェネレーション」

山田:まちづくりでは、地権者や行政、民間企業など、多くのプレイヤーを巻き込んでいくことが求められると思います。渋谷二丁目プロジェクトを前に進めるために、意識されていることはありますか?

関:まちづくりは、ものすごい数の関係者を巻き込みながら、何年もの時間をかけて進められます。そして、プロジェクトの推進に重要なのは「何を道しるべに掲げるか」だと思っています。そこで私たちは今回、「Shibuya REGENERATION Project(シブヤ・リジェネレーション・プロジェクト)」というコンセプトを掲げました。コンセプト策定にあたり、実際に100人ほどの関係者にインタビューを行い、意見交換をしながら定めていきました。これによって、渋谷二丁目プロジェクトを自分ごととして捉えてくださる方が増えたと感じています。このような共通認識をつくったことが、プロジェクト推進に生きているのだと思います。

東京建物株式会社 関 宏太氏

山田:リジェネレーションという言葉は、「再生」や「生み続ける」といった意味を持つ言葉ですよね。サステナビリティとも通じるところだと思うので、詳しくお聞きしたいのですが、なぜ「Shibuya REGENERATION Project」をコンセプトに定めたのでしょうか。

関:「リジェネレーション」や「リジェネラティブ」は、最近欧米を中心に注目され始めている言葉です。私たちはこれを、新しい概念、サステナビリティの次にくる概念だと考えています。

これまでは、持続可能な社会のために「悪いものを減らしていこう」といった考え方が主流でしたが、最近は「未来の世代のためにより良いものに変えていこう」という方向に変わってきています。まちづくりでも「開発して終わり」ではなく、新たな価値が生まれ続ける生態系のような仕組みをつくっていきたいという思いが、このコンセプトには込められています。

山田:まちづくりというのは、竣工までがピークだと思われがちですが、本プロジェクトでは、その後の持続や進化を見据えていらっしゃるんですね。このコンセプトは、地権者の皆さんからも肯定的に受け止められているのでしょうか。

関:そうですね。地権者の皆さんも、この理念に共感してくださっています。地権者さまはご高齢の方も多く、中には「これが自分にとって人生最後の大仕事だ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。そのくらい、このプロジェクトに期待してくださっているということだと思います。そこはうれしくもあり、しっかりと責任を果たさなければ、と身の引き締まる思いです。

「孫の孫世代」を考えたまちづくりが教育の在り方を変える?

山田:サステナビリティな視点という意味で、例えば100年後の渋谷を想像した時に、渋谷二丁目プロジェクトはどのようなポジティブな影響を与えられるのでしょうか?

株式会社 電通 山田 健人氏

関:元々、STEAM人材の育成拠点という構想を考えていた時に、「孫の、その孫の世代のことを考えて」というのがキーワードにありました。これまでの大学や研究機関は、専門分野に特化することで社会に貢献してきましたが、渋谷二丁目プロジェクトによって学問における分野横断的な学びの重要性が高まるといいですね。これからの教育の在り方や概念を変える可能性もあると思います。

山田:長期的な視点でまちや文化をつくり、世の中の流れをより良い方向に変えていくといった点にとても感銘を受けました。これから渋谷のまちがどうなるのか、とても楽しみですね。

関:プロジェクトは、東京建物単独では成立しません。地権者さまをはじめ、さまざまな方と一緒に、既存の枠組みでは見えてこない取り組みや、新しいアイデアについて考えていけたらうれしいです。

 


 

時代の流れに合わせて変化し続ける都市。東京建物の開発によって、渋谷のまちが今後どのように変化していくのか注目です。

サステナビリティコンサルティング室は、これからもサステナビリティな取り組みにおける次世代オピニオンリーダーとなる方々にお話を聞いていきます。自社のビジネスと地域社会との関わりをあらためて考える際に、お役立ていただけそうな情報を今後も発信していく予定です。

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

山田 健人

山田 健人

株式会社 電通

幼少期はエジプト・カイロで過ごす。早稲田大学大学院卒業。在学時代は安藤絋平研究室に所属。株式会社 電通入社後、ビジネスプロデューサーとして食品会社、不動産デベロッパーなどのブランド業務を中心にマーケティング支援活動全般に従事。23年1月より現職。現室ではDEIを注力領域としながらさまざまなサステナビリティ領域で活動中。好きな映画は『リトル・ミス・サンシャイン』。

関 宏太

関 宏太

東京建物株式会社

1997年生まれ。埼玉県出身。慶應義塾大学商学部卒業。「人々の生活基盤を総合的に支えることができる仕事に就きたい」という思いから、総合不動産デベロッパーを志望し、大学卒業後、東京建物株式会社へ入社。新卒入社から現在に至るまで、大規模複合再開発の事業推進に従事。

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