カテゴリ
テーマ

メーカー、決済サービス会社、小売業各社が連携し、お買い物を通して社会貢献団体に寄付ができるプロジェクト「お買いいもの~It's Shopping for Good.~」。

前編では、初年度から参画する花王グループカスタマーマーケティング株式会社の牧野真也氏、足立絢香氏、株式会社NTTドコモ 原壮一氏、株式会社 電通 川畑茉衣氏が、共同プロジェクトの概要や背景を語りました。後編では、サステナブルな取り組みを実現するまでの課題や得たもの、今後の展望などについてお話を伺いました。進行役は、電通サステナビリティコンサルティング室の竹嶋理恵氏が務めます。

デジタルの活用で広がるロイヤルカスタマー育成の可能性

竹嶋:今回の「お買いいもの」プロジェクトは、いわゆる通常の販促キャンペーンとはちょっと違う取り組みだと思います。社会課題への取り組みと事業性を両立するために、ビジネスや収益面で苦労したことはありましたか?

川畑:このプロジェクトは、複数の企業が参画することによって意義のある取り組みができるものだと思っていますが、参画していただくメーカー企業さまを集めるという面では、決してスムーズにいったわけではないのも事実です。このようなサステナブルな取り組みには共感してもらえるのですが、市況や各社のコンディション、営業部との関係性など、それぞれの企業で抱えている課題があることを感じました。

牧野:メーカー側としては、限られた販促予算の中で費用対効果の高い施策を打っていきたいというのがやはり本音ではありますよね。他メーカーさまとキャンペーンの話をした際に「理想や思想の部分は充分に共感できるが、現時点では、社の状況から参加は厳しい」という声を聞くこともありました。

花王グループカスタマーマーケティング株式会社 牧野 真也氏

原:タイミングの問題もありますよね。企業によって売り上げを重視しないといけない時期があったり、他のキャンペーンを打っている時期と重なっていたり。

竹嶋:そのような困難や課題がありながらも、昨年の第1弾では約30万人の消費者が参加し、今年も実施することができました。社内的にも良い評価があったからだと思うのですが、どのような成果がありましたか?

牧野:生活者の皆さまへの還元を中心としたキャンペーンが多い中、そういったお得感だけではない、情緒的なところでお客さまに応援していただける施策だなと感じています。会社としても、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を重視しており、お客さまと長く付き合い続けていきたいという思いを強く持っていますので、総合的に判断して非常に評価が高かったです。

原:そういった観点で言うと、今回の施策によって、メーカーさまのロイヤルカスタマーになりそうなお客さまとの関係性を育てていくのがドコモの役割かなと思います。例えば、今年は、昨年キャンペーンに参加した方にメッセージをお送りしました。データを活用して、お客さまにしっかりとメッセージを届けていくことによって、企業の活動や方針を理解してくださるお客さまを中長期的に増やしていくサポートにもつながっていくのではないかと考えています。

株式会社NTTドコモ 原 壮一氏

竹嶋:どういった人がどのくらい商品を購入したのか、どんなタイミングで買っているのかなどのデータとともにどんな社会課題に着目して行動してくれているかが蓄積されていくことは、参画メーカーさまにとっても大きなメリットですよね。単にユーザーということだけではなく、志に賛同してくれるファンの方と一緒になって取り組むことで、「物を売って、買って」という付き合いを超えたつながりを築くことができそうです。

継続によって、「創費社会」への変革をもたらすアクションに

竹嶋:2年目を迎えたプロジェクトですが、今後どのようなところを目指していきたいですか?

株式会社 電通 竹嶋 理恵氏

川畑:このプロジェクトは、お買い物に着目したことから始まりましたが、今の消費社会そのものをサステナブルな仕組みに変えていくことを大きな目標に掲げています。これまでは、メーカーが作ったものを小売店が売って、それを消費者が購入して、その先に環境への負荷があったとしても、消費が回っていました。これからはそうではなく、消費の先に寄付があるなど、消費行動に意義ある仕組みを内包させていくことが必要だと考えています。造語ですが、より良い社会を創る消費という意味の「創費社会」への変革を促すきっかけとして、プロジェクトを位置付けたいですね。

足立:正直私は、このプロジェクトに関わるまではSDGsやサステナビリティはあまりにも大きなテーマで、ハードルが高いと思っている節がありました。だからこそ、キャンペーンではとにかく参加のハードルを下げて、特別なことをせず、いつもやっていることの延長線上でできる手軽さが重要だと考えています。意識を変えるために、行動を変えることから始めることができるプロジェクトですから、長く続けていきたいですね。

牧野:まさに、本プロジェクトは継続して実施していくことによって、大きな価値が生まれるものだと考えています。そのためには「主語を変えて物事を考えることが大切」だと思います。例えば“自社”や“企業”を主語にするのではなく“社会”や“困っている人”などみんなが共通で持てる主語で物事を考えることが必要だと思います。主語が変われば、述語が変わる。生活者の皆さまの目線を大切に、行動が変わるきっかけをつくっていきたいです。

原:ドコモでも、「あなたと世界を変えていく」のスローガンのもと、新たな生活価値やライフスタイルを生み出し、より良い社会づくりへの貢献に取り組んでいます。ドコモはカーボンニュートラルに向けた取り組み「カボニュー」を開始し、10年後、20年後、30年後を見据えて、未来を考えていく活動を全社的に進めています。私自身、子どもがいるのですが、この子たちが30歳になったときにどんな社会や環境になっているのか、そこにはわれわれ世代の責任が大きいですよね。そういった長い時間軸で物事を見て行動するという点で、このプロジェクトが何らかの役割を果たせたらうれしいです。

川畑:最後に意気込みとして、生活者の価値観の変化を捉えてアップデートを重ねながら2030年まで絶対にプロジェクトを続けたいと思っています。われわれが目指す世界観を実現するためには、多くの消費者に参加してもらいたいのはもちろんですが、参画してくださる企業が増えることが不可欠です。ぜひ多くの企業にプロジェクトに賛同していただきたいですね。

 


 

目先のことだけではない、未来を見据えた取り組みには、「継続」が大きなポイント。そのためには取り組みのプロセスや成果を可視化すること、誰もが気軽に参加し継続したいと思える雰囲気やモチベーション設計も重要でしょう。そして価値観の変革とともにアクションを社会に実装していくためには1社ではなく、さまざまな領域のステークホルダーが連携することが不可欠です。この先、プロジェクトの参画企業が増え、より良い社会を創っていく輪が広がっていくことが期待されます。

※掲載されている情報は公開時のものです

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

著者

川畑 茉衣

川畑 茉衣

株式会社電通

関西MCプランニング局、第3統合ソリューション局を経て、現在は2020プロデュースセンターで東京オリンピック・パラリンピックの大会プロデュースを担当。電通ギャルラボにも所属し、日々女子のインサイトを研究中。※ただし、自身の女子力と声は低め。

竹嶋 理恵

竹嶋 理恵

株式会社 電通

ストラテジー立案からキャンペーン構築、ウェブサイトやイベント、店舗開発まで関わり、政府広報や環境・観光・地域振興・教育・飲料・金融・スポーツなど、さまざまなジャンルの商品やサービスのプランニングに携わる。 電通Team SDGsではSDGsに関する情報発信、ソリューション開発を手掛ける。サステナビリティコミュニケーションとともに電通グループのSDGsビジネスソリューションとしてサーキュラーエコノミー構築やカーボンニュートラル推進も支援。サステナビリティ起点での事業変革を手掛ける。国際会議等での登壇や寄稿にも多数携わる。

牧野 真也

牧野 真也

花王グループカスタマーマーケティング株式会社

花王グループの販売部門において、デジタルを活用した販促キャンペーンの企画立案・進行に従事。全国のリテールやペイメント事業者と連携した施策実現により、生活者へのブランド価値伝達、エンゲージメントづくりを担う。「お買いいもの」キャンペーンでは全体のプランニングを担当。

足立 絢香

足立 絢香

花王グループカスタマーマーケティング株式会社

花王グループの販売部門において、デジタルを活用した販促キャンペーンの企画立案・進行に従事。全国のリテールやペイメント事業者と連携した施策実現により、生活者へのブランド価値伝達、エンゲージメントづくりを担う。「お買いいもの」キャンペーンではコミュニケーション関連のプランニングを担当。

原 壮一

原 壮一

株式会社NTTドコモ

外資系メーカー勤務時に、企業の責任として環境対策やコミュニティー支援活動、サステナビリティへの取り組みを経験する。株式会社NTTドコモ入社後は、データ活用による企業のマーケティング支援業務に従事。ドコモの「カーボンニュートラル宣言」実現に向け、パートナー企業と共に、経済活動と社会貢献活動の実現を目指す。ドコモのカーボンニュートラルに向けた取り組み「カボニュー」を推進。

あわせて読みたい