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公開日: 2025/02/27

働く女性が直面する、職場の「疑うべきあたりまえ」とは?(後編)

企業のサステナブルなビジネス創造をサポートする株式会社 電通 サステナビリティコンサルティング室のメンバーが、この分野のオピニオンリーダーにお話を伺う本シリーズ。第5回は、「NewsPicks for WE」編集長を務める株式会社NewsPicks Studiosの川口あい氏に、サステナビリティコンサルティング室の福島崇幸氏がインタビュー。前編では、女性活躍の視点から見たサステナブルな働き方や、組織経営の課題について語っていただきました。後編では、企業のサステナブル経営に欠かせない視点や、国際女性デーに合わせて開催される「WE CHANGE AWARDS 2025」についてお聞きします。

企業の風土を変えるには、経営層のコミットが不可欠

福島:今、サステナブル経営、インクルーシブな働き方というパーパスを掲げる企業も増えています。従来の社会構造では、女性の視点が十分に考慮されていなかったため、職場に女性トイレがないというハード面の課題から、マネジメント層が男性ばかりで女性が相談できる環境が少ないというソフト面の課題まで、さまざまな課題が浮上しています。こうした「疑うべきあたりまえ」に気付き、変化をもたらした事例をご存じですか?

川口:労働人口の減少が続く今、長時間労働をはじめとする旧来的な働き方の考えは、サステナブルとは言えません。男性が大黒柱となって家庭を支えるというライフスタイルに、生きづらさを感じる男性も多いでしょう。

こうした構造的な問題に着目して、是正している企業はたくさんありますが、中でも管理職の要件定義を変更したリクルートは、画期的な事例だと思います。同社では、これまでは暗黙知かつ判断基準が人によってバラバラになっていた管理職要件を洗い出し、事業部とDEI(Diversity, Equity, Inclusion/多様性、公平性、包摂性)部門で管理職に求める能力や行動を明文化したそうです。分かりやすく言うと、長時間労働や飲み会への参加は必ずしも管理職としての要件ではない、と。そうした点もクリアにして「本当にリーダーに求めるべき能力は何なのか?」を定義したそうです。その結果、女性はもちろん男性の管理職も増えたそうです。そこに、サステナブルな働き方の本質があるように感じました。

株式会社NewsPicks Studios 川口 あい氏

福島:それは画期的ですね。こうした取り組みでは、経営・マネジメント層がいかにコミットするかが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

川口:そうですね。ジャーナリストの浜田敬子さんは、「DEI推進は制度より風土、風土よりトップ」とお話されています。例えば、生理休暇をはじめとした休暇制度はあっても、制度化が先行してしまい実態が伴っていない会社もあります。なぜ休みやすい風土が醸成されないかと言えば、トップの号令が行き届いていない場合が多い。私もトップのコミットメントは非常に重要だと思います。

私の元にも、企業のDEI推進担当者から「どうすれば上司や経営層の意欲を引き出せるでしょうか」という質問が届くことがありますが、そういう時にはエビデンスベースで説得するようにアドバイスしています。DEIや女性活躍推進に注力している企業は、売り上げや株価などの数値的な結果も出していますから。

福島:企業のような大きな組織をいきなり変えていくことは大変ですが、4、5人のチーム単位など、まずは小規模なところから少しずつ変化をもたらしていくことも考えられるのではと思います。少人数のチームで、サステナブルな働き方をするにはどのような工夫が考えられますか?

川口:コミュニケーション量を増やすことですね。女性が育休から復帰した時、仕事と育児を両立しやすいよう、本人の意思に反して責任のあるポジションから外されてしまう“マミートラック”という状態に陥ることがあります。公益財団法人21世紀職業財団が行った「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究(2022年)」によると、マミートラックから抜け出せた女性の多くが、抜け出せた理由を「上司に要望を伝えた」「上司からの働きかけがあった」など、上司とのコミュニケーションが増えたことにあると答えました。上司も善かれと思って配慮しているわけですから、どれくらいならチャレンジングな仕事ができるのか、どういう働き方をしたいのか、小さなチームこそしっかりコミュニケーションをすべきだと思います。私自身も、自社のチームでは1on1でしっかりと話を聞くように心掛けています。

社会に本質的な変化をもたらす個人・企業を表彰

福島:社会構造の変化促進に向けて、2025年にはアワードも開催するそうですが、どのようなアワードなのか教えてください。

2024年に行われた国際女性デーイベント「NEXT WOMANSHIP SUMMIT」の様子

川口:国際女性デーに合わせて、2025年3月5日(水)に「WE CHANGE AWARDS 2025」を初開催する予定です。政府が定める「2030年までに女性管理職比率30%」という目標まで残すところ5年ですが、今の進捗状況では到達は難しいと見込まれています。実行力を加速するため、今回のアワードを企画しました。

「WE CHANGE AWARDS」は個人と企業の2部門があり、DEIと女性活躍において本質的な変化に向けて行動する人と企業に賞を授与します。個人部門で表彰するのは、次世代の女性リーダー。2030年に女性役員になり得る女性や、メディアの露出は少ないものの活躍が著しい女性を発掘したいと思っています。

企業部門においては、女性管理職比率30%という指標はありつつも、そうした数値的指標だけに左右されず、本気で行動を起こしている企業にフィーチャーしたいと思っています。DEI推進を達成できている企業の話も聞きたいですが、今まさに実直に頑張っている企業を表彰できたらと思います。

このアワードは、上から目線でたたえるのではなく、「私たち」の中から選ぶ「“OUR”D」です。昨年も単発イベントは行いましたが、「WE CHANGE AWARDS」は少なくとも2030年まで続けたいですね。

福島:「WE CHANGE AWARDS」の新設も大きなトピックですが、今後「NewsPicks for WE」としてどのようなことに取り組んでいきたいですか?

株式会社 電通 福島 崇幸氏

川口:2つあります。まず1つは、「NewsPicks for WE」がキャッチした声を基に、国に対して社会構造を変えるための提言をすること。もう1つは、この活動を全国に広げること。今は都市部を中心に活動していますが、2025年以降は地方にも広げていきたいと考えています。

そしてゆくゆくは、「女性活躍」に代わる言葉も見つけたいですね。メディアとして、ジェンダーギャップ解消につながるような他の言葉を見つけられたら面白いだろうなと思います。

福島:電通としても、そのお手伝いをしたいですね。今、パーパスを掲げる企業は多いですが、社員1人ひとりが自分の言葉で語れる状態とは言えない企業もあると思います。みんなのワクワクする未来として、誰もが自分の言葉で語れる状態になるため、電通のクリエイターが言語化やストーリー化のお手伝いができるかもしれません。インクルーシブな未来、サステナブルな働き方を見える化することで、現在の社会構造を変えるきっかけになれたらと思います。

 


 

2025年に5年目を迎える「NewsPicks for WE」は、本気で社会を変えるための具体的なアクションに取り組んでいくそうです。「WE CHANGE AWARDS 2025」は、その第一歩となるアワードです。当日の模様は、後日オンライン配信される予定なので、ぜひそちらもご覧ください。

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

川口 あい

川口 あい

NewsPicks Studios

昭和女子大学大学院文学研究科修士課程修了。小学館クリエイティブ、ハフポスト日本版パートナースタジオ チーフ・クリエイティブ・ディレクター等を経て現職。スポンサードコンテンツ制作、メディアビジネス領域に従事。映画・海外ドラマや英米文学に関するコラム等を新聞、雑誌、Web等で執筆。Forbes Japan オフィシャルコラムニスト。

福島 崇幸

福島 崇幸

株式会社 電通

電通入社以来、企業や事業のブランディング設計、商品開発、アクティベーション開発など幅広い領域のプランニングに取り組む。ワクワクする未来を創るプロジェクト開発を多く手掛ける、対話型のクリエイティブプランナー。グッドデザイン賞はじめ国内外のアワードも多数受賞。2024年よりNewsPicks StudiosのCCO(Chief Creative Officer)にも就任

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