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公開日: 2025/10/03

投資家目線で企業価値をどう上げる?戦略的IR支援プログラム「IR For Growth」(後編)

上場企業の約半数がPBR(株価純資産倍率)1.0倍を下回り、TOPIX改革により上場維持基準が厳しくなる中、企業は投資家に対して企業価値の持続的向上を示す必要性に迫られています。企業価値を向上させるには、経営陣だけではなく経営企画部門、IR部門、事業部門、広報部門など、さまざまな部門の連携が必要です。しかし機能分化が進む上場企業においては、戦略策定から実行までを組織横断で十分に推進できていないケースが多く、部門を横断して統合的に支援・推進できるパートナーを求める傾向が見られます。

こうした課題に応えるため、国内電通グループ(dentsu Japan)では戦略的IR支援プログラム「IR For Growth」の提供を開始しました。本プロジェクトに参画する株式会社 電通 トランスフォーメーション・プロデュース局 部長の片山享氏、株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 兼 電通 トランスフォーメーション・プロデュース局の沼田和敏氏、株式会社電通総研 コンサルティング本部の蟹江淳氏、人的資本経営案件を数多く手がける電通総研 コンサルティング本部の高橋舞氏へのインタビューの後編では、本プログラムが提供するサービスや、財務・非財務の価値向上の重要性について話を聞きました。

非財務領域でユニークなKPIを打ち出した成功事例

Q.「IR For Growth」では、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。

片山:IR戦略の策定や社内外のコミュニケーションなど、さまざまなサービスメニューを提供していますが、その1つひとつは各社が既に実施していると思われます。企業価値向上は、総合格闘技のようなものです。個々のメニューよりも、分断されている財務・非財務をつなぎ合わせ、価値創造ストーリーをつくってステークホルダーとコミュニケーションをしていく一連の流れを提供できることに「IR For Growth」の意義があると考えています。

片山:クライアントが、既に経営、IR戦略、人事経営などさまざまなコンサルタントを抱えていることは多く、それが各部門の分断を促進することになってしまっているケースもあります。そんなケースを支援させていただく場合、電通グループが全てを束ねるだけでなく、既存のコンサルタントとも協業しつつ共創しながらストーリーを描くこともできます。

株式会社 電通 片山 享氏

Q.財務と非財務の価値を掛け合わせて、企業価値向上につながった事例があればお聞かせください。

高橋:株式会社サンリオさまの事例をご紹介させて下さい。同社は2021年に新たにビジョン、ミッション、バリューを制定され、そのタイミングで電通が支援させていただくことになりました。

電通らしいご支援ができたのは、サンリオさまが目指す姿のコンセプト化の部分です。サンリオさまはIPビジネスで知られていますが、企業価値を新たな視点からあらためて捉えるために、私たちは「生活者がサンリオのキャラクターや商品に触れる時間」に着目することをご提案。この着眼点をサンリオさま内で発展させ、独自の非財務指標である「サンリオ時間」(※)が生まれました。

片山:「サンリオ時間」をつくるという非財務目標の独自性は投資家からも高く評価されているそうです。サンリオさまの業績は好調に推移しており、2025年7月時点でPBRは14~15倍になっています。

※商品やデジタルコンテンツ、テーマパークでの体験などを通じて、お客さまがサンリオのキャラクターやサービスに寄り添い、夢中になることで、笑顔を生み出した時間の総称。

dentsu Japanが支援する本質的なIR戦略

Q.PBRが伸び悩んでいる企業の方々に向けて、財務と非財務の価値向上の重要性や、電通グループの支援体制について、メッセージをお願いします。

片山:企業が投資家から求められているのは、未来に向けた成長の期待度です。これからの企業経営には、財務と非財務が一体化した成長ストーリーを打ち出し、社内外に浸透させること、そして具体的なアクションを起こすことが求められています。こうしたお話をさせていただきましたが、電通グループは、広告領域で培ってきた「人の気持ちを動かし、行動を変えていく」というケイパビリティが、本領域においても力を発揮すると信じています。是非お声がけください。

蟹江:事業戦略に関しては、どこに投資し、どこから撤退するか、ポートフォリオ分析によりロジカルに意思決定している企業も多いと思います。ですが、そこに非財務領域が関わると、途端にどうすればいいか分からなくなるケースも。電通総研では、財務と非財務を交えた情報を基にした、根拠に基づく判断基準の確立をご支援しています。経営者層の皆さまの意思決定にぜひお役立てください。

株式会社電通総研 蟹江 淳氏

沼田:企業価値を向上させるために、経営陣がやるべきことは多岐にわたります。まずどこから手を付ければいいのか、優先順位をつけるのも難しいのではないでしょうか。お悩みを抱えたままでは前に進めませんので、電通グループに相談することで解決の糸口を見いだしていただけたらと思います。「こうすれば解決します」という単純な問題ではないからこそ、まずは私たちと議論を重ねていただけたらうれしいです。

株式会社ドリームインキュベータ 兼 株式会社 電通 沼田 和敏氏

高橋:非財務価値を打ち出そうと一気に改革を進めることは不可能で、IRやHRの取り組みを段階的に進めていく必要があります。フェーズの切り方は企業ごとに違いますが、ステップアップしていくためのフェーズをどのように設計するかが成否を分けると思います。こうした点についても、電通グループでお手伝いできたらと思います。

 


 

投資家の関心は、売り上げ・利益から人的資本へとシフトしています。投資家の期待を高め、企業価値を向上させるには、財務・非財務を統合した成長ストーリーを社内外に伝えることが重要です。電通グループのアセットを活用した戦略的IRプログラム「IR For Growth」で、まずは自社の課題と未来に向けて提供し得る価値を見直し、ステークホルダーの共感を生むストーリーを構築してはいかがでしょうか。

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著者

片山 享

片山 享

株式会社 電通

ビジネスプロデュース局で大手通信事業者グループを長く担当。サービスコンセプト設計からブランディング・キャンペーンの実行までを一気通貫で数多くプロデュース。近年は顧客の企業変革・事業変革などをサポートするBX領域でプロデュース業務に従事。また電通グループ横断の戦略的IR支援プログラム「IR For Growth」をリード推進。

沼田 和敏

沼田 和敏

株式会社ドリームインキュベータ

2025年1月より、株式会社 電通 トランスフォーメンション・プロデュース局 ビジネス・ディベロプメント・ディレクター兼務。株式会社ドリームインキュベータではさまざまな大企業・ベンチャー企業に対して、成長戦略・新規事業戦略の策定や、複数の大企業やベンチャー企業を巻込み/連携させ、新規ビジネスを立ち上げ・伴走するビジネスプロデュースに取り組む。

蟹江 淳

蟹江 淳

株式会社 電通総研

製造業/出版業/飲食チェーンなどのさまざまな業界における戦略立案/業務変革・BPR (ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の経験が豊富である一方で、タレントマネジメント、組織活性化など、人・組織に関わる問題の解決にも幅広く携わる。事業を価値創出プロセスと人・組織の両面から変革し、顧客の価値提供力向上を支援。近年はサステナビリティ経営の高度化や経済安全保障、サイバーセキュリティ といったテーマへの取り組みを強化している。

高橋 舞

高橋 舞

株式会社 電通

2010年に電通を退職し渡米。MBA取得や出産子育てを経て、2018年電通復帰。銀行勤務時代のシステムアナリスト経験、自動車会社勤務時代のコーポレート戦略立案経験など、豊富なビジネス現場体験を基に企業の変革をサポートしている。

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