Roblox上で広がる、IP活用の可能性
「IP Game Jam Powered by dentsu and GeekOut 」を開催
2025/09/30

IP活用の視点から、没入型ソーシャルプラットフォーム「Roblox」の可能性を探るイベント「IP Game Jam Powered by dentsu and GeekOut」が、2025年7月17日(木)、18日(金)に電通ホールにて開催された。
電通グループと、Robloxにおけるコンテンツの企画・開発・パブリッシングなどを行うGeekOutによって開催されたもので、GeekOutが運営するGeekOut StudioからRobloxのトップゲームクリエイター28人が来日・参加した。17日(木)はクリエイターたちが、限られた時間内にゲームを企画・開発する「Game Jam」形式でIPをテーマにしたゲームを制作し、18日(金)は開発したゲームプロトタイプを、来場した日本のIPホルダー企業に向けて発表した。また、ゲームプロトタイプの発表前に、IPホルダー企業に向けてRobloxの概要や活用方法などを紹介するセッションも実施された。
18日(金)のイベント内容は以下の通り。

最初のセッションでファシリテーターとして登壇したのは、GeekOut代表の田中創一朗氏。田中氏はまず、本セッションの目的は、IPホルダー企業がRobloxをコミュニティの構築と育成をクリエイターと共に行う場所として活用できる視点を提供することであると説明。Robloxの特徴や注目度の高さ、ユーザー属性などの概要を紹介したうえで、Roblox内のゲーム「Grow a Garden」が同時接続数2160万人(25年6月末時点)を超え、世界で最も遊ばれているゲームのひとつになったといえることや、Roblox内のコンテンツはすべてUGC(User Generated Content=ユーザーが生成するコンテンツ)であることなどを語った。

続いてRoblox Japan Developer Relations 本部長の辻潤一郎氏が登壇し、Robloxの人気を支えるクリエイターについて紹介。「Robloxでは、短時間で簡単に誰でもコンテンツを作れるゲームエンジンを提供しており、ゲーム開発を“民主化”した。これがUGCコンテンツを生み出すクリエイターが増える理由になっていると思う」とRobloxならではの魅力を語った。

次に、カナダ出身のRobloxゲームを題材に動画制作を行うYouTuber・MeEnyu氏が登壇。MeEnyu氏は2021年からRobloxのゲーム実況動画を配信し始め、現在のYouTubeチャンネルの登録者数は330万人以上(25年7月時点)。動画視聴回数はのべ7億回を超えるインフルエンサーとして活躍している。動画とゲームそれぞれのアクセスデータを交えながら「Robloxのクリエイターが作るコンテンツを、動画クリエイターが広めることで相乗効果が生まれる。ゲームのコミュニティを拡大するには、Robloxのクリエイターと動画クリエイターとのシナジーが大切だと思っている」と語り、UGCエコシステムにおける動画クリエイターの役割を強調した。

最後に登壇したのは、セガ トランスメディア事業部 ブランドマーケティング部 ブランドディレクター向大地氏。セガとGeekOutは現在、Roblox内で「龍が如く※」公認のゲームを共同で開発している。またセガは、Robloxが提供する新プラットフォームで「龍が如く」のライセンス提供も開始した。向氏は「クリエイターの意思やRobloxの文化を最大限に尊重しながらコンテンツを展開し、新しいファンコミュニティを生み出すきっかけにしたい」と語った。
※龍が如く:日本に拠点を置く「龍が如くスタジオ」が作り出す、ドラマチックアドベンチャーゲームシリーズ。https://ryu-ga-gotoku.com/
セッション終了後は、GeekOut Studio所属のクリエイターたちによる、ゲームプロトタイプ発表が行われた。今回は電通のオリジナルIP「豆しば※」を活用し、制限時間8時間で、3つのチームに分かれてゲームを開発。発表に対し、辻氏と、豆しばの生みの親である電通 第1CRプランニング局の金 錫源(キム・ソクウォン)氏が講評を行った。
※豆しば:電通が開発したオリジナルキャラクター。「ねぇ、知ってる?」というセリフから始まり、シュールな豆知識を披露する。

一つ目のチームは、豆しばが披露する「豆知識」の内容をもとにしたミニゲームを制作。Robloxでのプレーは多くのユーザーが友達と一緒に5~10分のプレーを繰り返すという特徴がある。そのカルチャーを意識した5~10分の短時間で遊べる点もポイントとなっている。金氏は「豆しばをよく理解して丁寧に作ってくれたことが伝わった。自分もプレーしたくなったし、このゲームが海外でも豆しばの認知拡大につながる気がした」とコメント。辻氏は「IPの魅力を生かしながら、Robloxコミュニティに受け入れられる構造になっている。特にミニゲーム形式は初めてのユーザーにも入りやすく、豆しばの世界観を知ってもらう入り口として秀逸」とコメントした。

二つ目のチームは、日本の高校を舞台に豆しばが描かれたカードでバトルが楽しめるゲームを制作。カードに書かれた豆知識によって強さが異なり、カードバトルで「生徒会長に戦いを挑む」ことが目的となっている。金氏は「“ねぇ、知ってる?”の豆知識をカードバトルに生かす発想が新鮮で、遊びながら自然と学べる構造になっている。IPのエッセンスをよく理解してくれている」とコメント。辻氏は「カードバトルはRobloxでは珍しく、日本のカルチャーが背景にある点も面白い。親子でも楽しめるゲーム設計で、IPを深く理解して構成されている」とコメントした。

最後のチームは、さまざまな豆しばを探しながらゲーム内で写真撮影ができるゲームを制作。撮影すると豆しばが「豆知識」を披露し、撮った写真はゲーム内のアルバムに保存することができる。キム氏は「かわいらしい世界観が完成していて、見たことがない豆しばもいたが、どんな種類の豆しばが出てくるか楽しみになる。市販ゲーム並みのクオリティを感じた」とコメント。辻氏は「小さな子どもから大人まで楽しめるファインド型ゲームで、視覚表現のクオリティも高い。豆しばの魅力を最大限に引き出している」と評価した。
3チームの発表後、田中氏は「8時間で制作したとは思えないクオリティのゲームを体感してもらえたと思う」とコメント。精度の高いコンテンツを短時間で作れるというRobloxならではの開発力と柔軟性に加え、IPの本質を理解しつつ、世界観やキャラクターの潜在的な可能性を創造的に引き出してくれるプラットフォームであることを、IPホルダー企業に強く印象づけた。

イベントでは、新サービスとして「Global Fan Community Growth Solution」の提供を開始したことも紹介された。本サービスはRoblox社より発表された新たなIPライセンス管理プラットフォームの発表に伴い提供するもので、IPが適切な形で活用され、IPの持つ可能性を最大化することを目的としている。
本件を担当する、電通グループ グローバルビジネス開発オフィス シニアマネージャーの池田心平氏は「UGCプラットフォームには大きな可能性を感じていただいている一方で、IPホルダーの皆さまからは、活用にあたっての課題や懸念も多く寄せられている。IPホルダーの皆さまのご判断を尊重しながら、ニーズのある具体的なユースケースを起点に段階的にスタートし、ともにファンコミュニティと向き合う新しい形を模索していきたい」と語った。(詳しくはこちら)
グローバルのデイリーアクティブユーザー数が1億1180万人(2025年7月時点)を超えるRoblox。このプラットフォーム活用による、IPの新たな可能性が見えたイベントとなった。
開催概要
名称:IP Game Jam Powered by dentsu and GeekOut
開催日時:2025年7月17日(木)、18日(金)
会場:電通ホール