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公開日: 2025/12/09

TikTok広告は、実店舗購買にどれだけ寄与するのか?

左から電通デジタル 小山圭太氏、電通 井崎正太郎氏、TikTok for Business Japan秋葉大輔氏

2017年に日本においてサービスを開始して以降、若年層を中心に幅広い世代から支持を得ているショート動画プラットフォーム、「TikTok」。そのムーブメントは世界中に広がり、今やトレンドやカルチャーの発信源となっています。

また、企業やブランドが活用する広告プラットフォームとしても注目されており、今年6月には、「TikTok Market Scope(以下、TTMS) 」「Brand Consideration」といったTikTok独自の測定・分析プラットフォームや広告ソリューションをリリースしました。

今回電通・電通デジタルはTikTok for Businessと協力し、TTMSのデータも活用しながら「実店舗購買」に対する定量的な広告効果の測定に挑戦しました。

TikTok広告は、ユーザーの実店舗購買にどう影響するのか?

TikTok for Business Japanの秋葉大輔氏と電通デジタルの小山圭太氏、電通の井崎正太郎氏にお話を伺いました。

TikTok広告の「フルファネルマーケティング」とは何なのか?

TikTok for Business Japan秋葉大輔氏

──自己紹介をお願いします。

秋葉:TikTok for Businessの日本でのマーケティングサイエンスの責任者として、広告主が出稿された広告の定量的な効果検証や分析を統括しています。今回はTikTokで配信されている広告について、電通と共同で「実店舗購買」を起点とした効果検証を行いました。

小山:電通デジタルのプラットフォーム部門でTikTok広告を専門的に担当し、現在はTTMSとBrand Considerationの推進を中心とした業務を行っています。

井崎:電通のデータテクノロジーセンターに所属しています。普段は広告効果計測プロダクトの開発や分析業務などを担当しており、本プロジェクトではTikTok for Businessと共同で、広告効果測定プロダクトの開発とプロダクトを用いた検証などを行いました。

──プロジェクトのお話の前段として伺います。今年TikTok for BusinessからリリースされたTTMSとBrand Considerationとは、どのようなものなのでしょうか?

秋葉: TTMSは、高い購買意欲を持つオーディエンスの成長をリアルタイムで可視化できる、測定・分析プラットフォームです。TikTok広告の広告主向けに提供しています。

このプラットフォームの大きな特徴は、マーケティングファネルを可視化できる点です。具体的には、マーケティングファネルの「認知」「比較検討」「購買」、各段階にそれぞれ何人のオーディエンスがいるのか、どのユーザーがどの段階にいるのかを把握できます。

マーケティングファネルの各段階にそれぞれ何人のオーディエンスがいるのか、またどのユーザーがどの段階にいるのかを可視化できるのがTTMSの大きな特徴。

秋葉:従来のマーケティングファネルはあくまでも概念的なもので、認知、比較検討、購買といった段階ごとに想定上のオーディエンス像を設定し、そこに対して広告を配信していたんです。TTMSでは実際のユーザーをTikTok上での行動データを基に各段階に振り分け、実在するオーディエンスを形成することで、正確にオーディエンスの動きを可視化することが可能になりました。

そしてTTMSで可視化したファネルを基に、「比較検討層」を増やすことを目的とした広告商品が、Brand Considerationです。

小山:Brand Considerationでは、「受け手がどの段階に属しているか」というのを把握した上で、比較検討層の拡大に向けて広告配信を行っています。これはTTMSという分析環境を持つ、TikTok広告ならではの特徴といえます。

──多様な広告プラットフォームがある中で、TikTok広告の特徴と強みを教えてください。

秋葉氏:TikTok広告は、先ほどお話ししたように、マーケティングファネルの全段階をカバーできる「フルファネルマーケティング」に対応している点が、特徴であり強みです。認知、比較検討、購買の3段階から広告主ごとに目的を選んでいただき、レコメンドシステムにより最適なユーザーに広告を配信する、というシステムになっています。

特に私たちは、比較検討層に強みを持ち、現在はBrand Considerationをはじめとする比較検討層を増やすための広告配信の仕組み作りを強化しています。

実店舗で買われるタイプの商材でも、広告効果を測定したい!

電通 井崎正太郎氏

──今回のプロジェクトに取り組むに当たって、広告主が抱えていた課題やニーズにはどのようなものがあったのでしょう。

秋葉:これまでは、特に実店舗で買われるタイプの商材において、「配信された広告が、商品の売り上げやビジネスの成長にどれくらい寄与したのか」が可視化できていませんでした。例えば、TikTokキャンペーンを実施した後に店舗の売り上げが上がったとして、その売上増加のうちどれだけが、TikTokキャンペーンによりもたらされたのか、を正確に把握することを課題に感じていました。

広告主からは、特に実店舗で買われる商材の場合において、「広告配信を行った結果、実際のビジネスがどう動いたかを知りたい」という声をよくいただいておりました。その声に応えるために、具体的なメディアのプランニングや運用改善が、事業成果を最大化させる形で精緻化できていなかったのが私たちの課題でした。

──そうした背景がある中で行われた、電通・電通デジタルとTikTok for Businessの共同研究。電通グループと協力することで、どのようなことが可能になったのでしょうか?

井崎:電通グループが連携する実店舗購買データと、TikTokの広告データをプライバシーが保全された分析環境で突合分析することで、実店舗購買データを基にした定量的な効果測定が精緻に行えるようになりました。つまり、「TikTok広告が実店舗購買にどれくらい寄与しているのか」を可視化できるようにになったんです。

──実店舗購買データを基にどのような分析を行い、その結果どのような発見が得られたのか教えてください。

秋葉:一言でいうと、電通グループから共有していただいた実店舗購買データと、TTMSによる分析で私たちが得たファネルデータを、プライバシーが保全された分析環境で突合させ、分析しました。もう少し詳しくご説明しますね。

まず、「TikTokで該当の広告を見たことがあるか」を基準に、TikTokユーザーを「広告配信グループ」「広告を意図的に配信しないグループ」に分類し、広告キャンペーンを実施します。2つのグループのオーディエンス属性に違いをなくすことで、広告による効果を純粋に把握するためです。その上で、2つのグループと実店舗購買データと突合させることで、2つのグループの購買量の差を見ます。

さらに今回は「広告配信グループ」「広告を意図的に配信しないグループ」をTTMS内で「認知層」と「比較検討層」に分類。つまり購買客を「非接触層」「認知層」「比較検討層」と3段階に分け、オーディエンスの内訳と購買量の差を見ました。

その結果、「比較検討層の購買率が高いこと」と「広告配信によって比較検討層がさらに増加し、全体の売り上げが上がったこと」が、定量的に証明されました。TikTok広告が実店舗購買の増加にどのような形で寄与しているか、実データとして示せたんです。

実施した3つのテストキャンペーンで、いずれも「比較検討層」がもっとも購買率(CVR率)が大きかった。
TikTok 広告が購買検討層の増加をもたらし、購買率が高い購買検討層が増加したことで、全体の売上が純増した。

井崎:「TTMSにおける比較検討層を増やせば購買につながり、事業成長につながる」という傾向が見られたことで、広告主が広告配信をする際の中間KPIとして有効であると考えています。

また、この分析に伴って、実店舗購買や事業成長につなげるために、どのようなプランニングやクリエイティブが有効かも見えてきます。今後のプランニングや予算配分に生かせる有益なインサイトが得られるという点は、広告主に大変喜ばれました。

TTMSでマーケティングファネルを健全に育てていく

電通デジタル 小山圭太氏

──電通・電通デジタルとTikTok for Businessによる共同研究の結果、TikTok広告が事業成長にどう寄与しているかが定量的に証明され、次につながるインサイトも得られたということですね。では、今回得たことを今後どのように発展させていくのか、お考えをお聞かせください。

小山:今回の分析で、「比較検討層の増加」が実店舗購買率の向上に重要であることが、改めて分かりました。今後は、認知層をターゲットに広告配信を行い比較検討層への“ファネルダウン”を促すなど、比較検討層を増やすための広告配信施策に力を入れていきたいです。

秋葉:さらにいうと、TikTok for Businessとしては、比較検討層を増やすことだけに終始せず、「ファネル全体の循環」をつくることにも目を向けていきたいですね。

私は、事業の持続的な成長のためには、ファネルのエコシステムを健全に育成していくことが大切だと考えています。TTMSを活用していただくことで、いかにマーケティングファネルの循環を促し、企業の持続的な成長につなげるか。電通グループと共に、今後も取り組んでいきたい部分です。

井崎:今年6月に「TikTok Shop」というEC機能と、「TikTok Shop」におけるGMVの拡大を実現する広告ソリューション「GMV Max」もローンチされました。今後はオンライン購買と実店舗購買を掛け合わせた分析など、TikTok Shop購買の分析も進めていきたいですね。

また、電通グループが連携したさまざまなデータと掛け合わせた多角的な検証を行い、TikTok広告の価値を最大化できるようなプロダクトの開発に注力していきます。

──広告主にTikTok広告をどのように活用してほしいですか?

井崎:今日お話ししてきた通り、TikTokはフルファネルマーケティングに対応した広告プラットフォームです。今回得られたようなインサイトや、Brand Considerationをはじめとする広告ソリューション、分析プロダクトをご活用いただき、広告配信におけるPDCAをフルファネルで回して、マーケティングにご活用いただければと思います。

実店舗購買に対する定量的な広告効果測定は、実店舗での販売や購買が主である日用消費材などの商品に有効なので、そういった業界の方々には特に喜んでいただけるのではないでしょうか。

小山:まずは、マーケティングファネルの各オーディエンスが可視化されたことと、TikTok広告が実店舗販売につながっていることが明確に証明されたこと、この2点に価値を感じてほしいですね。

また、先ほど井崎さんから話があった通り、TikTok Shopなどのコマースも増えてきました。広告配信から購買までのプロセスをひとつずつ検証し、改善を重ねながら、より効果的なマーケティング活動につなげていただきたいです。

秋葉:先ほども申し上げた通り、事業を持続的に成長させるには、ファネル全体の健全な育成が欠かせません。広告主の皆さまにも、「TTMSを用い、いかに自社のマーケティングファネルを健全に育てていくか」という部分にも意識を向けてほしいと思います。

私たちも、電通グループが連携する購買データや多彩なソリューションの力をお借りしながら、広告主の課題解決の一助となれるような取り組みを行っていきたいです。

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著者

秋葉 大輔

秋葉 大輔

TikTok for Business Japan

Meta、Amazon、Pinterest等の広告プラットフォームにてマーケティングサイエンス業務に従事。2025年6月から現職。

小山 圭太

小山 圭太

株式会社 電通デジタル

新聞社、大手ウェブメディアにて広告営業を経て、電通デジタルに入社。ソーシャルプラットフォーマー担当として、データクリーンルームやAPI連携、マスメディア連携などに従事。

井崎 正太郎

井崎 正太郎

株式会社 電通

データクリーンルームを中心にクライアント向けの広告効果計測や分析業務を担当。 同時に国内・グローバルにおけるデータプロダクト開発、購買データ等を保有する事業者との協業もリードするなど、一貫してデータテクノロジー関連の業務に従事。

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