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公開日: 2025/11/30

Jリーグ躍進へのテレビマーケティングと、データ分析を支える「STADIA360」

板垣 伸典

板垣 伸典

公式社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

原 玄

原 玄

株式会社 電通

2024年に入場者数も、クラブ収益も過去最高を記録し、さらに2025年も過去最高の入場者数を記録するなど、快進撃を続けている日本プロサッカーリーグ(以下、Jリーグ)。その背景には、ローカルエリアを含めた全国の放送局をはじめとするメディアとの関係構築や、テレビマーケティング戦略がありました。

Jリーグでは、注力するテレビマーケティングの効果を可視化するために、進化を遂げた電通の「STADIA360」をご利用いただいています。Jリーグのテレビマーケティング施策とデータ分析を活用した取り組みについて、Jリーグでプロモーションを担う板垣伸典氏と「STADIA360」を担当する電通の原玄氏に、話を聞きました。

(左から)Jリーグ 板垣伸典氏、電通 原玄氏

Jリーグ躍進の決め手であるテレビマーケティングと、感じていた課題

──初めに、Jリーグがテレビマーケティングに力を入れ始めたきっかけを教えてください。

板垣:北海道コンサドーレ札幌の代表を務めていた野々村芳和氏が、2022年3月にJリーグのチェアマンに就任したことが力を入れ始めたきっかけです。札幌時代の野々村氏には、ローカルテレビを軸にしたマーケティング戦略の成功体験がありました。そこで「Jリーグをさらに支持していただくために、テレビ露出に注力していこう」と方向性を定めたことがスタートになります。

2022年10月から、Jリーグは全国5つのエリアでサッカー番組のスポンサー活動をスタートしました。翌年には番組を全国各地に広げ、在京キー局でさらに番組数を増やし、現在は全民放でサッカー番組を放送しています。

Jリーグがテレビ番組のスポンサーとなる一番の狙いは、Jリーグの入場者数を増やすことです。お客さまを増やすためには、Jリーグに興味がなかった人たちにも、その魅力を継続的に届ける必要があります。その手段として一番効率的なツールの一つがテレビだと思います。

札幌時代に野々村氏が積み重ねた成功体験を、今、全国に広げていますが、昨年はJリーグの入場者数とクラブの総売上高が過去最高を記録しており、一定の成果が出ています。当然、テレビだけが要因とは言い切れませんが、方法は間違っていないのではないかと考えています。

──テレビマーケティングを進める上で感じていた課題についてお聞かせいただけますか。

板垣:課題の一つに、効果の可視化が挙げられます。Jリーグは顧客を9つのセグメントに分けて分析しており、その中にターゲットセグメントとして定めている層があります。

テレビを活用する理由はターゲットにJリーグの魅力を継続的に届けるためです。インターネット調査でターゲットに届いていることまでは分かったのですが、それ以上の情報を追跡できていませんでした。

そこからさらに深掘りして、どのような人に届いて、実際に入場などのアクションにつながっているのか、などの効果を可視化できていないことは大きな課題であると感じていました。

原:そこで、板垣さんが懸念されていた「どれだけターゲットに届いているのか」や、「Jリーグのテレビ露出は、入場者数に本当に寄与しているのか」「セグメントの中で、狙い通りの動きが出ているのか」などを、ぜひ「STADIA360」で可視化しませんか?というご提案をさせていただきました。

板垣さんと何度かお話する機会があり、「最初に、来場調査をやってみましょう」ということで「STADIA360」をご活用いただくことになりました。

進化した「STADIA360」で、ファンの行動を見届けられるように

──「STADIA360」について、詳しく教えていただけますか。

原:「STADIA360」とは、国内で1560万台におよぶコネクテッドTV(インターネット回線に接続されたテレビ端末)において、ユーザーの同意許諾を得たテレビメーカー由来の視聴データに基づいた、デジタル広告の配信・効果検証が可能な統合マーケティングプラットフォームです。

もう少しかみ砕いて説明すると、テレビ視聴データとさまざまなマーケティングKPIを連携できるプラットフォームで、例えば位置情報データや購買データなど、40社以上のデータホルダーが保有するユーザーの同意許諾を得たデータ群とテレビの視聴データをひもづけられるソリューションになっています。昨今、広告主のニーズが多様化しており、例えば「視聴者が本当に来店したのか」「購買に至ったのか」など、テレビCMの効果検証のKPIが多岐にわたっている中で、さまざまな視点においてテレビの効果検証を行うことが可能です。

「STADIA360」の活用例は、コネクテッドTVの視聴データに基づいたターゲティング広告の配信を行う場合と、テレビCMや番組、露出の効果検証に使う場合の2通りがあります。今回のケースは後者で、Jリーグさんの多様なCMだけではなく、テレビ露出の効果検証などに使っています。

──「STADIA360」を使って実施したこと、それによって可能になったことを教えてください。

原:大きく分けて二つあります。一つ目は、テレビ番組、露出が与える影響の可視化です。「どのテレビ番組のどのような露出が、Jリーグが重視するKPIの一つである『入場者数の増加』に影響したか」を「STADIA360」で可視化しています。

具体的には、各テレビ番組の視聴者データと、Jリーグが選定しているスポーツニュースや試合結果などのテレビ露出データを「STADIA360」に読み込ませて集計し、Jリーグに関連する番組や露出の視聴者を算出しています。算出データをNTTドコモの許諾が取れたユーザーの位置情報と連携することで「どの番組の接触者が、一番リーチがあったか」「Jリーグへの来訪率が伸びたか」を調査しました。

二つ目は、ファンが取る行動の可視化です。前述の通り、Jリーグにはファンマーケティングの指標として、顧客起点マーケティングのフレームワークである9segs®調査に基づきセグメントを設定しています。その上で、例えばライト層だった方が、Jリーグ関連のテレビ番組やテレビ露出に触れた後にどう変化したかを「STADIA360」で分析しました。

1月のアンケート調査時点でライト層だった方が、テレビ露出に触れることで、4月調査の時点では認知度や関心度が上がったことを分析したり、番組視聴の有無で関心度を比較し、テレビの効果を可視化したりしています。2025年は1月と4月で分析を実施しましたが、この10月に追加実施することで、Jリーグのシーズン開幕前の状況から、テレビの接触者がどのように変化していったかを可視化したいと思っています。(インタビューは2025年10月に実施)

「ターゲットに届く露出」「効率のいい露出」が可視化される

──「STADIA360」の分析結果をご覧になった感想をお聞かせください。

板垣:私たちは、まだJリーグの試合を見に行ったことがない4000万人弱の方々を戦略ターゲットにしています。

「STADIA360」で分析する前は、戦略ターゲットがテレビを通してJリーグにどのように触れているかを、ある程度の仮説は持っていたのですが、しっかり認識できていませんでした。「STADIA360」の調査結果を見ていくつか認識できたことがあります。

その一つは、戦略ターゲットに届いている情報についてです。テレビで露出されるJリーグの試合結果は、非常に多くの方々に届いていることが分かりました。その一方で、Jリーグがスポンサーを務めるサッカー番組は他の露出と比べるとそこまでターゲットに届いていませんでした。ただし、接触した人のスタジアムへの来訪率は高いことが分かりました。

「ターゲットに届く露出」は今後も継続的に増やすべき、「効率のいい露出」についても、より多くの人に届けるために重きを置くべきと、今後のアプローチ方法が具体的に分かったことが大きな成果でしたね。

──「STADIA360」で分析した視点からお伝えしたいことはありますか。

原:今回はさまざまな工夫を凝らした分析を行いました。例えば分析対象を、2023年にスタジアムに来訪しなかったライト層に絞り、「どのテレビ番組や露出を見て2024年に来訪したのか」を分析したりもしました。

先ほど板垣さんがおっしゃっていた通り、Jリーグがスポンサーとなっているテレビ番組を視聴するとスタジアムへの来訪率が高いという結果が見られたのもよかったです。比較的テレビに露出しやすい試合結果が一番ターゲットに届いていることが分かったので、露出に対するJリーグさんの考え方が間違っていなかったことも、分析としてお伝えできたと思います。

さらにデータを可視化して、テレビマーケティングの効果を探求したい

──テレビを含めた、今後のマーケティングの展望についてお聞かせください。

板垣:「STADIA360」によりテレビの効果は可視化されましたが、今後はより詳細な可視化が求められると思っています。

「具体的にどのような露出が高関心化に効果的か」を可視化したいと思っています。野々村チェアマンの就任後、在京キー局の露出量を最重要の指標の一つとしており、おかげさまでJリーグの露出は前年比1.6倍に増えているのですが、どういった露出が高関心化に寄与するのかはしっかりと追跡できていない状況にあります。

今後は、例えばグループインタビューを実施し、Jリーグのサッカー番組や試合結果などのテレビ露出、バラエティ番組のタイアップを見ていただいて「どのような露出がターゲットの気持ちの変化や態度変容につながるか」まで見届けたいです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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板垣 伸典

板垣 伸典

公式社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

不動産・住宅に関する総合情報サイトの営業職を経験後、2011年にJリーグに入職。パートナー担当や事業戦略、映像を活用したビジネス領域を経験。2020年ごろから現部署にて、世の中のJリーグへの関心を高めることを最大のミッションに、さまざまなメディアを活用してJリーグの魅力を届ける業務に携わっている。

原 玄

原 玄

株式会社 電通

入社後、ラジオテレビ局に配属され、日本テレビ系列におけるテレビタイムのセールス業務に従事。その後、データ・テクノロジーセンターで商品開発、分析業務を担当。2019年からSupershipでセールス戦略やプロダクト開発を推進し、2022年に帰任。2025年現在、「STADIA360」の担当としてソリューション開発、プロダクトセールスの推進を行っている。

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