健康意識が“低い”生活者が6割超!?8つの新・ヘルスケア・クラスター
本連載の第1回では、年代別に異なる健康意識や意外な発見をご紹介しました。今回は、電通ヘルスケアチームオリジナルのクラスター分析の視点から「どんなタイプの人に、どんなアプローチをすると健康行動が起こるのか」、具体的なヒントを探ってみたいと思います。
私たちが実施する「ウェルネス1万人調査」(調査概要はこちら)は、2025年から新たに70代を調査対象に加え、健康意識・行動にもとづくクラスター分析を刷新しました。約130個の健康意識・健康行動の項目を因子に、生活者を8タイプに分類するクラスター分析を行っています。
ヘルスケア商品やサービスを設計する際に、ターゲットとする生活者像は具体的にどう定義すると実践的なのか。事業・新商品開発戦略やコミュニケーション戦略を考えるうえで、「どの層にどう響くのか」を捉えるヒントになれば幸いです。
ヘルスケア・クラスターの全体像と出現率
まず8タイプの全体像を見てみましょう。
下記は、健康意識/健康行動についての平均反応数を横軸、縦軸に設定してプロットした図です。つまり、右上にいるクラスターほど、いわゆる「健康意識が高い人」に当たります。

それぞれのクラスターは以下の割合で出現します。

一般に“健康意識が高い層”として思い浮かべられるのは、①全方位アクティブトレンド層、②スマート・コンディショニング層、③コツコツ・シンプル層の3層だと考えられます。それ以外にも独自の健康観や行動特性を持つ5つのクラスターが存在し、これらが全体の66.9%を占めることが明らかになりました。
健康意識が高くても、動機は一様ではない
では、ここから各クラスターの特性をご紹介します。
まずは、一般に健康意識が高い層とされる3つのクラスターからご紹介します。

全方向アクティブトレンド層は、食事・運動・睡眠といった健康行動をバランスよく取り入れ、自己管理を効率的に行う工夫そのものを楽しむタイプです。健康関連への支出額は全クラスターの中で最も高く、20〜40代男性の比率が高い点も特徴といえます。
また、ヘルステック領域への関心が強く、近年存在感を高めている新しいヘルステック商品・サービスにも前向きに接しています。機能に納得すれば積極的に試す傾向があるため、エビデンスやデータで効果を可視化しながら、市場で注目されている最新の流れを踏まえた体験を提供することが有効といえます。

スマート・コンディショニング層は、近年広がる「心身のコンディションを整える」という潮流を端的に体現するクラスターです。仕事、家事、学習のパフォーマンス向上を主な動機とするため、この文脈でのアプローチと非常に相性が良い層といえます。
男女比はほぼ半々で、日常的に健康を意識した生活を送り、ヘルステック系のサービスや商品を活用して睡眠や食事を記録・管理することにも積極的です。また、情報収集にも前向きで、自分に合った方法を見極めながら継続して取り組む姿勢が特徴として挙げられます。

コツコツ・シンプル層は、約7割を女性が占める中高年中心のクラスターで、ベーシックな生活習慣を大切にする堅実なタイプです。健康な生活を送れているという自己評価も全クラスターの中で最も高く、日々の食事やウォーキングといった基本行動を丁寧に積み重ねることで、生活リズムを整えることを重視しています。歩数に応じたポイントアプリなども積極的に取り入れており、生活の動線に沿って無理なく続けられる設計が響きやすい層といえます。
健康意識が低いように見える層にも、行動を左右する多様な背景がある
次に、健康意識や行動に独自の傾向を持つ、残りの5クラスターについて見ていきます。

食だけセーフティ層は、特に70代に多く見られ、健康への自信も比較的低い層です。トクホ商品や機能性表示食品の利用は少なく、野菜・果物・納豆といった身近な食材を中心に、自炊による自然志向の食生活で健康を維持しようとする傾向が強い点が特徴です。
食生活には意識を払う一方で、運動などその他の健康行動は十分に取れていない状況も伺えます。こうした背景から、自然で安心できることを重視し、日々の食生活の延長線で無理なく取り入れられるアプローチとの親和性が高い層だと考えられます。

セルフイメージ先行層は、健康行動そのものは少ないものの、健康への自信は比較的高いという特徴を持つクラスターです。自身を「健康をうまく管理できている」と認識している一方で、実際の行動が伴わないケースも多く、6割を男性が占める中高年層に多く見られます。この層には、自分にふさわしいと感じられる手軽でスマートな健康習慣として提示するアプローチが有効と考えられます。

将来不安・停滞層は、精神的なストレスが強く、自身の健康や社会の状況に漠然とした不安を抱えやすい層です。健康への自信は全クラスターの中で最も低く、女性が約6割を占めますが、年代は幅広く分布しています。また、目先の快適さを優先する傾向があるため、意識と行動のギャップが大きくなりやすい点も特徴です。ストレスの軽減やメンタルケアといった領域との親和性が高い層だと考えられます。

お疲れ健康後回し層は、不調を抱えつつも健康行動に割く余裕がない人々で、疲れやすさや運動不足、イライラ感など日常的な不調を抱えている点が特徴です。男女とも中年層が中心で、約7割が既婚者という属性からも、仕事や育児、自分の時間など、経済的・時間的・精神的に余裕のないライフステージである人が多いと考えられます。そのため、健康への投資金額は全クラスターの中で最も低い傾向にあります。こうした層に向けては、負担が少なく時短で取り入れられ、不調を軽減しながら自分を取り戻せるようなアプローチが適しているかもしれません。

最後に、低感度・無欲層です。健康意識も行動も少ない層ですが、まったく不健康というわけではなく、時には動画を見ながら軽く運動することもあります。男性が6割を占め、ストレスや悩みが少ない点が特徴で、健康に関しては “無欲”の層ともいえます。全体の15.1%と最もボリュームが大きいため、今後のヘルスケア市場では、この層をどう巻き込むかが重要になります。
今回のクラスター分析が示すのは、健康意識が高い・低いといった単純な分類だけでは、生活者の姿を正確に捉えられないという点です。健康意識が高い層の中にも、健康行動自体を楽しむ人もいれば、日々のコンディショニング維持を目的とする人もいます。反対に、意識が低めに見える層でも、背景や価値観によって行動しない理由は大きく異なります。だからこそ、生活者が置かれた文脈や価値観を丁寧に読み解く視点が欠かせません。
さらに注目すべきは、健康意識が高いとされる3クラスターを除いた残り5クラスターが、全体の66.9%を占めているという点です。多くの人々は、忙しい日常のなかで“健康だけ”を優先して生きているわけではありません。むしろ、それ以外の価値観や楽しみ、優先順位のなかで健康行動が後回しになることこそ、生活者の自然な姿であり、私たちヘルスケアに携わる側がしっかりと向き合うべき本音だといえます。
生活者の健康行動を捉えるには、その背後にある価値観や日々の暮らしまでを見渡すこと。今回の8クラスターが、そのヒントになるはずです。
【調査概要】
調査名:第19回「ウェルネス1万人調査」
実施時期:2025年6月
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国20~70代の男女(10000サンプル)
調査会社:電通マクロミルインサイト
※掲載されている情報は公開時のものです
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著者

姜 婉清
株式会社 電通
第6マーケティング局 CXコンサルティング1部
プランナー
中国出身。ソリューションプランナーとして、食品・医薬品・テーマパークを中心に、マーケティング戦略の立案に従事。OSAKA未来プレゼン大賞にて金賞受賞。


