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生活者が企業のどのような活動や事実(ファクト)に魅力を感じ、それらがどのように伝わっているのかを解析することを目的に実施している「魅力度ブランド調査」。本調査は、企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)が開発した「魅力度ブランディングモデル」に基づき設計され、毎年6月頃、全国の生活者1万人を対象に実施しています。

2025年に7年ぶりに改訂された「魅力度ブランディングモデルVer.3」は、時代の変化に合わせて新たな枠組みへと進化しました。

本連載では、この魅力度ブランド調査から得られたファインディングスをご紹介。企業におけるステークホルダーが感じる魅力や、企業のブランド価値を高める上で重視すべきポイントを業界別に解説します。

1回目の記事はこちら:新たな指標で読み解く、生活者が魅力に感じる企業のファクトとは?

24の魅力領域で200社の企業を見ると……

「魅力度ブランディングモデルVer.3」では、企業の“魅力”を、「人的魅力」「社会的魅力」「商品的魅力」の3つの魅力要素に分け、さらに8つの領域(計24領域)に分類しています。

図表1:魅力3要素の定義と24の魅力領域

この考えを基に、全国の生活者1万人に、20業界・200社の“魅力”についての調査を行った結果、以下のような順で魅力が選択されている割合が高いことは前回の記事でお話ししました。

図表2:魅力領域の選択率ランキングトップ3/全国の生活者1万人を対象に、「あなたが企業に魅力を感じる要素は何ですか?」という質問を企業ごと(20業種・200社について)に解答してもらった。

20業界全体で見てみると、1位「イシュー対応」(生活に欠かせない課題への取り組み)、2位「安定・透明性」(経営の信頼性・安定性)、3位「技術」(高い技術力やノウハウ)という結果となっています。

業界別で異なる“求められる魅力”

しかし業界別に、魅力領域のトップ3が似ている業界を近づけて配置してみると、以下のような傾向が見られました。

図表3:業界別魅力領域トップ3
  • 「人的魅力」「社会的魅力」「商品的魅力」のそれぞれが1位にくる業界が存在
  • 「人的魅力」と「商品的魅力」がトップ3全てを占める業界はあるが、「社会的魅力」がトップ3全てを占める業界はない
  • 最も頻出する魅力要素は、「人的魅力」が28領域と最も多く、続いて「社会的魅力」と「商品的魅力」が17領域と同数(全62領域[20業界×トップ3、かつ同率3位が2業界存在]の内)
  • トップ3の中で最も頻出する魅力領域は、「イシュー対応」(社会的魅力)で、20業界中14業界で見られる。次いで「安定・透明性」(人的魅力)で13業界
  • 最もトップを多く獲得した魅力領域は、「技術」(人的魅力)で6業界。次いで、「イシュー対応」(社会的魅力)で5業界

「国産自動車・二輪車」「鉄鋼・重機」「電気機器」業界は、「技術」訴求を!

24の魅力領域のうち「技術」をトップにあげている業界は、「半導体・電子機器」「電気機器」「輸入EV自動車・自動車関連部品」「鉄鋼・重機」「不動産・建設」「国産自動車・二輪車」の6業界でした。

図表4:「技術」がトップの6業界

同じ「技術」がトップの中でも「国産自動車・二輪車」や「鉄鋼・重機」は、トップ3全てを「人的魅力」が占めています。これらの業界は、特に「人的魅力」からのアプローチを重視すべきということがわかります。 

また、「半導体・電子機器」「鉄鋼・重機」「輸入EV自動車・自動車関連部品」業界では、人的魅力の「フロンティアスピリット」が含まれており、マーケット拡大やグローバル促進などの開拓努力が魅力に感じられていることがわかります。さらに、「輸入EV自動車・自動車関連部品」「電気機器」業界においては、商品的魅力の「独創・革新性」が含まれていることから、商品・サービスとしてのオリジナリティに魅力を感じていることがわかります。

これら「技術」「フロンティアスピリット」「独創・革新性」などの魅力が高く反応している業界は、スキルやノウハウを含めた先進的な技術や革新性が感じられる情報が注目されやすく、ここが競争力の鍵となり得ます。その一方で、最新であったはずの情報がすぐに時代遅れになってしまうため、常にアップデートし続ける必要があります。情報を小出しにしたり、同じコンテンツでもさまざまな切り口で表現したりするなどの方法を意識することも大切です。

「航空・物流」「外食」「コンテンツビジネス&プラットフォーム・サービス」業界は、「接客対応」で差別化を!

「航空・物流」「流通・小売」「外食」「コンテンツビジネス&プラットフォーム・サービス」業界は、商品的魅力が重視される業界です。特に、「ニーズ開発」「接客対応」「コストパフォーマンス」などの魅力が重視されています。

図表5:「接客対応」「ニーズ開発」が現れた4業界

これら4業界は、「ニーズ開発」や「接客対応」がトップ3に見られることから、自社のノウハウやシステム技術などをアピールしたり、新作のお知らせをしたりするよりも、“顧客に関する課題解決”や“ステークホルダーに向けた努力”についてコミュニケーションすることが鍵となりそうです。

クラスター分析から見るコミュニケーションのポイント

これまで解説してきたトップ3の魅力だけでなく、各業界の24領域の魅力をクラスター分析にかけた結果、下記のように分類されました。

図表6:20業界のクラスター分析結果とコミュニケーションのポイント

5つのクラスターが形成され、それぞれ「基盤産業型」「耐久消費・安定型」「革新産業型」「消費・生活密着型」「独自型」と名付けました。なお、クラスターごとに重要となるコミュニケーションポイントは以下の通りです。

「基盤産業型」……生活への必需性や技術への信頼性
「耐久消費・安定型」……経営の安定志向が強いこと
「革新産業型」……新しい価値創出が重要
「消費・生活密着型」・「独自型」……顧客との接点が重視され、それ以外はコーポレートとしての技術やノウハウが重要となる

各業界に即した情報経路で効率化を!

前回の記事では、魅力の情報経路について、「リアル」が1位(40.6%)。「メディアの広告」が2位(33.5%)。「メディアの番組・記事」が3位(31.4%)という結果をお伝えしました。

図表7:20業界全体の情報経路

この魅力の情報経路においても、下記のように業界ごとに差が見られることがわかっています。

図表8:業界で特徴が見られる情報経路

各業界の魅力の情報経路において、「エネルギー」業界では「メディアの広告」が、「飲料」業界では「リアル」と「メディアの広告」が、「鉄鋼・重機」業界では「メディアの番組・記事」が突出しています。「コンテンツビジネス&プラットフォーム・サービス」業界では、他業界に比べて「ソーシャルメディア」が圧倒的に高いという結果が得られました。

この結果は、生活者が企業の魅力を感じる情報経路は、業界ごとにアンテナの張り方が異なることを示唆しています。もちろん、ターゲットに届きにくい経路や、業界の情報が取り上げられにくい経路もあると思います。しかし、少なくとも生活者が「この業界の魅力(ファクト)は、この情報経路から得られる」という認識を持っていることを踏まえた戦略策定をすべきと考えます。

「誰に、何を伝えるのか」を明確に。そして、ターゲットの“理解”を

企業広報戦略研究所では、業界ごとの「魅力の傾向」を“ファクト(事実)の優先度”として捉えています。企業の魅力を3要素、24領域に分類して分析しましたが、魅力に感じる程度の差には大小あれど、全てが欠かせない大切な魅力です。しかし、その一方で、「生活者があまり魅力を感じないファクト」や「その業界では当たり前すぎるファクト」を発信しても、期待したほどには響かないという現実も見えてきています。

例えば、生活者が日常的に購入する商品やサービスを扱うBtoC企業と、取引先を中心にビジネスが成り立つBtoB企業では、必要とされる伝え方もコンテンツも大きく異なります。だからこそ、コーポレートコミュニケーションにおいては 「誰に、何を伝えるのか」 を明確にし、優先順位をつけることが基本であり、極めて重要となります。

「全ての人を幸せにしたい」という理念・理想はKGI(最終目標)としては適切ですが、KPI(具体的な指標)としては曖昧です。限られた予算の中で、効率的に企業の魅力を伝えるためには、どのような道程で成果を積み上げていくのかを示すKPIを、着実にクリアしていくことが求められます。

そこで重要になるのが、ターゲットの“理解”に目を向けることです。企業は、理想とするゴール・将来像に向けて進むためには、

  • ターゲットは今何を理解しているのか
  • 何がまだ理解されていないのか
  • これから何を理解してもらうべきなのか
  • その理解を促すために相手が関心を持つファクト(事実)は何か

といった視点で考える必要があります。関心の薄いファクトをいくら積み上げても、企業の魅力は伝わりにくいのです。

ターゲットの理解度を知る“視力”、ターゲットの声を聞きとる“聴力”、そしてターゲットに伝わる“声量”、これらを鍛えることで、企業コミュニケーションはより強固で効果的なものになるでしょう。 

次回の掲載では、「企業の経済的価値/社会的価値/ブランド価値」について、調査データを基にご紹介していきます。

【調査概要】
調査名:魅力度ブランド調査
調査時期:2025年6月20日~7月8日
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:20~69歳の全国の男女 10000ss (以下セグメントごとに男女均等割付)
(内訳)20代2000ss / 30代2000ss / 40代2000ss / 50代2000ss / 60代2000ss /

※上記サンプルの抽出のために、20~69歳の一般男女(高校生以上、未既婚・職業不問)を対象にスクリーニング調査を実施。年代条件に加え、魅力に感じる20の業界(企業)が各500ssになるように振り分けた。

調査リリース:
https://www.dentsuprc.co.jp/releasestopics/news_releases/20251020.html

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著者

末次 祥行

末次 祥行

株式会社 電通PRコンサルティング

企業広報戦略研究所

副所長

広告会社からプランニング会社を経て、2007年電通パブリックリレーションズ(現電通PRコンサルティング)入社。飲料、電機、通信、大学などのコミュニケーションプランニングを手掛ける。現在、企業広報戦略研究所にて、レピュテーション分析、広報効果測定、IR発信力調査、イシュー分析やソーシャルリスクなどの調査・分析、コンサルティングに従事。

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