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AIが拡張する、ニューロダイバーシティの可能性

鈴木 慶太

鈴木 慶太

株式会社Kaien

飯田 剛史

飯田 剛史

株式会社 電通総研

北本 英光

北本 英光

株式会社 電通

ニューロダイバーシティ#3_メインカット
写真左よりKaien代表取締役・鈴木慶太氏、電通総研・飯田剛史。Kaien秋葉原サテライトにて。
フォトスクライビング:甲斐千晴(電通グラレコ研究所 代表)

ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)とは、「ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)をはじめとする多様な発達特性を、“脳の特徴の違い”であり“個性”であると捉え、社会で生かしていこう」という考え方。この考え方に着目し、2021年、電通や電通総研の有志によって立ち上げられたのが、ニューロダイバーシティプロジェクト【noiro(ノイロ)】です。本連載では、noiroのメンバーが、有識者や当事者との対話を通して、ニューロダイバーシティの現在地や未来をひもといていきます。

 

連載3回目となる今回は、noiroのアライアンス企業であり、発達障がいや精神障がいのある人々の就労支援や学習支援を行うKaienの鈴木慶太氏をお招きしました。noiroメンバーの飯田剛史(電通総研)も交え、同じくnoiroの北本英光(電通)モデレートのもと、「AIとニューロダイバーシティ」をテーマに語り合いました。

※ニューロダイバーシティとは
ニューロ(脳・神経)とダイバーシティ(多様性)を組み合わせた言葉。脳や神経、それに由来する個人レベルでのさまざまな特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこうという概念。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)など定型と異なる非定型的な発達(ニューロダイバージェント)を、障がい、能力の欠如、優劣としてではなく人それぞれの自然な違いだと捉える。ニューロダイバージェントのみならず、すべての人を対象としている。オーストラリアの社会学者であるJudy Singer氏が1990年代に提唱し、2010年代から海外のIT企業を中心に、高い集中力や創造的思考力など発達障がい者が発揮する特性を生かす取り組みが広まった。

渡米する2日前、息子に発達障がいの診断。MBAを取得し、Kaienを設立

北本:本日のテーマは「AIとニューロダイバーシティ」。AIをはじめとするテクノロジーが、どのようにニューロダイバーシティを拡張するのか、世界を変えていくのかといったことをお話ししたいと思っています。まずはゲストの鈴木さん、電通総研の飯田さんから、自己紹介をお願いできますでしょうか?

鈴木:発達障がい者の就労支援や学習支援を行う、Kaienという会社で代表を務めている鈴木と申します。

もともと私は、NHKでアナウンサーをしていました。2007年の8月にMBA取得のためアメリカへ留学をすることになったのですが、その2日前に、息子が発達障がいだと診断されました。後から考えると子どもは私とは別の個人であり、悲しむというのは違うと思い直したのですが、当時はとてもショックで、涙が止まらなかったことを覚えています。

その後、「とにかく前へ進まなければ」という気持ちでアメリカに渡り、MBAを履修するなかで、発達障がいとビジネスについて模索することに。同世代の優秀なMBA学生と学び合い、刺激し合ううちに、発達障がいがある人々の支援を目的に、起業に挑戦したいと考えるようになって、紆余曲折の末にKaienを立ち上げました。

ですから、父であり、支援者であり、事業主でもある。3つのロールや視点で、発達障がいやニューロダイバーシティに関わっています。

飯田:私は電通総研で、瞳孔反応解析技術などのテクノロジーを活用したソリューションや、障がい者が働く現場で活用できるようなクリエイティブツールの事業開発に関わっています。現在はnoiroのほかに、電通総研のニューロダイバーシティプロジェクトにも携わっています。

私も少しだけ過去を振り返ってみますと……。「野球が下手なのに、ずっと野球部のキャプテンをやっていた」という学生時代の経験があります。下手だからこそ、強いリーダーシップで引っ張るのではなく、一人一人と目線を合わせて、公平性を意識しつつ、その上での個別最適化を目指しながら対話し続けていたように思うんですよね。そうした、個と個で向き合う人との関わり方や価値観が、今、ニューロダイバーシティの取り組みに携わる上でも生きていると思っています。

ニューロダイバーシティとの出合い

 

北本:ニューロダイバーシティという言葉は、日本ではまだあまり一般的ではない、なじみの薄い言葉だと思います。そんななか、鈴木さんは、いち早くニューロダイバーシティという言葉をキャッチして、積極的に情報発信をしていらっしゃいます。いつごろ、どんなきっかけでニューロダイバーシティという言葉に出合われたのでしょうか?

鈴木:事業を始めたときは知りませんでした。いつ知ったかはハッキリ覚えていないのですが、おそらく2015年辺りに出合ったのではないかなと……。

ニューロダイバーシティは、個々の発達特性や障がいを、例えばASDだとかADHDだとかで色分けする概念ではなく、「一人一人みんな脳って違っているよね」「それって個性だよね、当たり前だよね」と認める考え方。私自身も親として、「明確に区別する必要はないのではないか」と感じており、「あなたはASDです」と無理やりラベリングされるより「単なる脳の多様性という“ファクト”です」と言われるほうが自然だと思っていたので、いろんな意味で、とても便利で受け取りやすい言葉だなと思いました。

その後、2020年にスタンフォード大学のメディカルスクールがニューロダイバーシティサミットを開催するということを知って、「これは興味深い」と思い、迷わず申し込んでオンラインで参加しました。これが非常に刺激的な内容だった。こういうセミナーやイベントというのは研究者や医師などの専門家が講演されることが多いのですが、そうではなくて、ニューロダイバージェント(発達特性のある人)自らが、当事者の立場で、課題や取り組みについて力強く情報を発信されていました。

非常に心を揺さぶられて、すぐにスタンフォード大学に連絡し、「ニューロダイバーシティサミット JAPANをやらせてください!」とお願いしました。ご快諾いただき、名前だけ借りるような形で、2022年、当社が企画運営を担い第1回を開催しました。

ニューロダイバーシティに対する企業の捉え方はさまざま。スムーズな受け入れに必要な3つの視点とは?

 

北本:企業では、ニューロダイバーシティの話を障がい者雇用にひもづけて語られる場面も多くあると思います。2024年に、一定規模の企業に義務付けられている障がい者雇用率が2.5%へと引き上げられました。しかしながら達成できている企業は46%しかいないのが実情です。またいわゆる2027年の崖……デジタルが加速する社会で、IT人材が不足するという課題に対し、その領域にマッチした発達特性のある人々を活かせるのでは、ニューロダイバーシティが解決に寄与するのではといった流れもあり、ニューロダイバーシティ自体がさまざまな捉え方をされています。鈴木さんは事業を通してこうした状況をどう感じていますか?

鈴木:「ニューロダイバーシティ」をプロジェクト名にして、当社に発注してくださっているクライアントがいます。その企業では、誰にでも発達特性的な要素はあり、本当に一人一人違うのだということを理解されています。しかし、多くの企業ではまだまだ障がい者雇用や一部の発達障がいといった文脈で使われている現状を感じます。

北本:障がい者雇用においても、このニューロダイバーシティが法定雇用率達成のためのクリティカルなアイデアになると希望を見いだしている人もいる一方、DEIの新たなバズワードと考える人もいます。その中で、この考え方をどのように自社に導入すればいいか悩まれている企業も多いようです。

noiroでは、ニューロダイバーシティを進めていくフレームワークとして、①「ロール(Role)」②「ルール(Rule)」③「ツール(Tool)」という3つの構成要素を見いだしています。1つはマネジメントも含めた役割や立場である「ロール」をしっかりとつくる。2つ目はそのために、会社の仕組みや人事制度などの「ルール」を変えていく。さらに特性に合わせた物理環境やテクノロジーなど、誰もが使いやすい「ツール」を開発・導入する。この3つを柱として進めていこうという考え方です。本日「ツール」に関する話が中心になりますが、やはり企業が多様な人を受け入れていくためには、これらを総合的にダイナミックに変えていく必要があるのではと。

鈴木:その3つの考え方でいきますと、「ルール」についてはトップダウンで進めないとなかなか変えるのは難しいと思います。「ロール」であれば、組織内の「部」や「課」単位でもある程度変えられると思うので、当社が関わる障がい者雇用や、ダイバーシティの担当者さんは、ここを変えられるくらいのレイヤーではないかと感じます。あるいは「ツール」の部分は個人や現場で導入できるかもしれないというのが現状なのではないでしょうか。とはいえ受け入れの視点で考えると、やはりどこかで会社の構造……「ルール」の部分を変えることが必要なのでしょうね。

テクノロジーやAIは、ニューロダイバーシティをどう支えるのか?

北本:今年9月に行われた4回目のニューロダイバーシティサミット JAPAN 2025は、私も参加しました。医師、テクノロジー企業の責任者、企業の障がい者雇用担当者、当事者と、非常に幅広い立場の方がスピーカーとして参加されており、バラエティに富んだ内容でしたね。なかでも今回は、AIやテクノロジー関連の話題が多彩でした。

ここから本題である「AIとニューロダイバーシティ」の話に入っていければと思います。先ほどの「ロール」「ルール」「ツール」でいうところの主に「ツール」の部分になるのですが、まずは、テクノロジーの最前線でニューロダイバーシティに関わっている飯田さんから、実際に携わっていらっしゃる“テクノロジー×ニューロダイバーシティ”の取り組みについてお聞かせいただけますか。

飯田:いろいろ取り組んでいるのですが、印象に残っているのは、Kaienさんと2023年に行った実証実験ですね。発達障がいの人々が働く事業所で、ヘッドマウントディスプレーを装着し、仮想現実空間(コンピューターによってつくり出された仮想的な空間、以下VR)を用いて、一人一人にとってより働きやすい環境をつくる取り組みを行いました。

それまでは、個々人に合った環境をオフィスにつくるとなると、例えばパーテーションの設置や、複数のモニターを用意しなければならないなど、物理的な投資が必要でした。その点、VR環境なら、ヘッドマウントディスプレーをかぶるだけで自分だけの環境を構築できる。モニターを無限に出すこともできますし、好きな音楽もかけられますし、人の視線が気にならない環境をつくることも容易です。就業環境を自分好みにアレンジしていくことができるんです。

実証実験では、こうしたツールを使って、実際に働きやすくなるのかを見ていきました。結果としては、主観評価ではありますが集中度は高まり、眠気も改善しました。一方で、カームダウンスペース(※)にかわるようなリラックスコンテンツについては効果がだいぶ限定的だということがわかり、課題や改善点も見つけることができました。

※カームダウンスペース = 音や光などの刺激で体調不良やパニックを起こしやすい人が、一時的に気持ちを落ち着かせるための場所

北本:私もこの実証実験に立ち会ったのですが、ニューロダイバーシティの場にテクノロジーを取り入れることは、現場に導入負担をかけるイメージがあるものの、実は非常に相性がよくて、可能性を秘めていると改めて感じました。

VRにもさまざまな可能性があると思います。さらにテクノロジー観点では、近年はやはり生成AIが存在感を増しています。聴講したサミットで印象に残っていたお話に、AIは人間に「苦手の補完」「得意の拡張」「機会の創出」といった3つの大きな価値をもたらすというものがありました。これらはすべて、ニューロダイバージェントと非常に相性がいい。私はAIによって、ニューロダイバーシティがより大きく拡張するのではないかと感じています。鈴木さんはテクノロジーやAIについてどのような印象をお持ちでしょうか?

鈴木:非常に便利なツールですが、一方で依存やハルシネーションなどいろいろな課題もあります。ただ、SNS同様、出てきたからにはいずれ皆が利用していくと思うので、避けて通るのではなく使うしかないという感想です(笑)。

2025年11月に「精神科医が教える AIメンタルケア入門」(翔泳社)という精神科医の益田裕介先生との共著が出版されましたが、パッと思いつくのが、AIを活用したセルフカウンセリングですね。24時間アクセスできて即時性が高く、人を介さないため余計な気遣いも必要ありません。また、AIに自分が考えた目標をどのように達成するかといったような、段取り、スケジュールを考えてもらう使い方も有効です。

ニューロダイバージェントの中には段取りを考えるのが苦手な人も多い。空気を読むこと・状況を整理することが難しく、いろんなことに圧倒されて、「なにをどうすればいいかわからない!」となりがちです。そうしたとき、AIにパーソナルカウンセラーやパーソナルコーチとしてサポートしてもらえば、かなりラクになると思います。

AIは王道とか一般的な価値観を、自分向けにカスタマイズしてわかりやすく教えてくれる存在です。ですから、特にコミュニケーションや異文化交流に大いに活用できると感じています。自分がもし今、アメリカに留学することになったら、たぶん、めちゃくちゃAIを使うと思いますね。「こんなパーティーに誘われたんだけど、どう返事すればいい?」「なにを持っていくべきかな?」とか聞きまくっていると思う(笑)。一般的な答えや平均値を教えてくれるという点で、さまざまなニューロダイバージェントの助けになると思います。

北本:確かに、ニューロダイバージェントが抱えがちな“対話や価値観の微妙なズレ”を分かりやすく示してくれるという点で有用ですよね。あとはなんでも聞けるのがいい。ちょっと他人には聞きづらいな……ということでも24時間、気兼ねなく聞けますからね。

飯田:わかります。私自身もAIを活用して、コミュニケーションの仕方を変えようと試みていました。私、どうも抽象的な話し方をしてしまうクセがあるようでして……。ずっと、プロジェクトについてわかりやすく、具体的に伝えるのが苦手だったんですよね。それでAIに、同僚のシステムエンジニアやコンサルタントに伝わる話し方について何度も何度も相談して、なんとか伝えられるようになったんです。生成AIがあったからこそ他者とうまくコミュニケーションが取れるようになり、自己肯定感や自己効力感が高まりました。他にもメール文やビジネス文書の作成など、伝え方が問われるシーンでAIは役立ちそうですよね。

テクノロジー全般でいうと、働き方の部分では環境づくりや仕組みづくり、AIに特化するとコミュニケーションのハブや思考の整理という面で役に立つと感じています。

ニューロダイバージェントのAI利用率は約77%。AI依存との付き合い方は?

北本:ニューロダイバーシティサミット JAPAN 2025のなかでも、ニューロダイバージェントのコミュニケーション支援、メンタルヘルスケア、タスク管理などで、実際にAIが使われているという話が出ていました。

一方で、先ほどチラッと鈴木さんがおっしゃっていた依存の問題が気になっています。筑波大学の佐々木銀河先生の調査によりますと、ニューロダイバージェント当事者(IT業務にかかわっている人が多い)で生成AIの利用経験がある人は76.8%であることがわかっています。これだけの割合の人々が、これだけ便利なものを使っているとなると、依存の度合いも高いのではという気もしますが……。

鈴木:少数派の人を徹底的にサポートしてくれる“万能君”が出てきたら頼ってしまうのは、もう、仕方がないことのように思います。特にAIは、人間と違って身体性がない。人間のようにふるまっているけれど中身は人間ではなく、痛みも感じなければ眠くもならず、疲れず、おなかもすきません。そういう存在なので、いくらでも入り込めちゃうところがありますよね。だからといって、これだけ便利な、世の中に出てきてしまったテクノロジーを使わないということもできないわけで。

ですから、依存の在り方が大事だと思うんです。1つのAIに依存するのではなくて、複数のAI、さらにAIだけでなく複数の人間に頼ってほしい。偏らないよう、1つの考えにとらわれないように、できるだけ依存先を増やしてほしいなと思います。

これは、精神科医療やメンタルケアの現場でもよく言われること。依存に「AIだから」とか、「人間だから」「SNSだから」なんて区分けはあまり関係ないと思うんです。没入しやすいからこそ多様なツールや人と接点を持つことが大事なんだろうと思います。

ニューロダイバーシティは、ファクトであり、OSである

北本:以前から、テクノロジー分野と発達障がい者は相性がいいですとか、シリコンバレーで働く方の中にも、ニューロダイバージェントが多いという話もよく聞かれます。相性や実績という点でテック系業務が注目されていますが、少子高齢化が進み生産人口が減っている日本では、テック系だけでなくより幅広い領域でニューロダイバージェントが活躍しそうだと感じています。

最後に、日本企業のニューロダイバーシティの受け止め方であったり、現状や未来などについてお聞かせいただけますでしょうか?

鈴木:冒頭の自己紹介で述べた通り、ニューロダイバーシティというのは、「脳には一人一人特徴がある」「違うのは当たり前、それは個性」という考え方です。もっと言うと、「誰もが発達障がいと共通する要素を持っているよね」「診断の有無にかかわらず、音に敏感だとか、不調がおなかに出やすいとか、みんな当たり前にいろんなことがありますよね」という価値観でもあります。そこを理解して、診断に関係なく、多くの社員を上手にサポートしようという企業も、わずかですが出てきている。ただ、障がい者雇用の文脈でニューロダイバーシティという言葉を使っている企業の方がまだ多い状況です。

では、この認識のバラつきをどうしたらいいのかという話になると思うのですが、私は、バラついたままでよいと思っています。今は相手によって臨機応変に使い分ける形でいいのかなと。

そもそも私は、ニューロダイバーシティという言葉を広げようとあまり思っていないんですよね。なぜかといえば、ニューロダイバーシティは「ファクト」だからです。「H2Oって水ですよね」ぐらい当たり前の、単なる事実。そうだからとしか言いようがない自然なことなわけですから、勝手に広まるだろうなと。多様性を考える上での共通言語やOSになりうる便利な概念ではありますが、それ以上でもそれ以下でもないというか。そう、新しい診断の基準とかルールとかじゃなくて“概念”なんですよね。

北本:なるほど。“OS”や“概念”といったとても大きな基盤だと考えると、受け止めは、まさに多様でいいのだなと思えますね。

鈴木:はい。もう少しお話ししますと、ニューロダイバーシティって、過去の反省から出てきた考え方なんです。ASDとかADHDとか精神障がいだとか、そういった定義づけからの解放運動とでも言えばいいのか……。もともと発達障がいや知的障がい、精神障がいって、かぶる部分が多く、非常にあいまいで、明確に診断しづらい状態だと思うんですよ。それを医療の世界では、治療のため、やや強引に診断しなければならないというジレンマがあった。

そもそも「あなたは普通ですね」「あなたは基準から外れているので普通ではありませんね」と区別するのも無理がありますよね。そこからもう1回自由になろう、フラットにファクトだけを見てみましょうよということでもあると思うので、「ただの自然な状態」という認識でよいのではないかと思っています。

ただ今後の人材不足局面においては間違いなく存在感を増してくる考え方だと思っています。人材が不足すると、これまでなんらかの理由で活躍しにくかった方々に活躍していただかなければならなくなってきます。診断がついている人、障がい者手帳を持っている人はもちろん、診断は受けていないものの周囲と少しズレがあるな……という人も、もっと適性を生かせる場で、力を発揮していただくことになるでしょう。企業は働く人の適性や個別最適化の支援をこれまで以上に考えなければならなくなってくるし、働く人については活躍の場が大きく広がると思います。

特に中小企業ですね。中小企業は限られた志望者から採用することも多く、結果として多様な人が集まりやすい。そこに対応してきた中小企業は、既に、ニューロダイバーシティの先端をいっていると言ってよいと思います。今後人材不足が加速することで、中小企業が、まさにニューロダイバーシティのドライバーになるのだろうなと思っています。

飯田:なるほど。これまでは人口減少をネガティブにとらえていたのですが、鈴木さんのお話をお聞きして、「一人一人にスポットが当たり、選択肢が増え、自信が持てるような、そんな力強いニューロダイバーシティな未来が、本当にやってくるんだな」と強く感じました。

鈴木:なんにせよ、チャンスですよね。他国を見ても、人口減少はうまく対応すれば、イノベーションを加速させるきっかけになり得ます。人口減少と、テクノロジーと、ニューロダイバーシティ。これらがそろってきている今って、捨てたもんじゃない、めちゃくちゃ希望の持てるいい状態だと、私は思っています。

 

ニューロダイバーシティが浸透した未来の(景)色は

鈴木慶太の色
「仮面を被る必要がない世の中」

飯田剛史の色
「多様な個性の中にある個性的な自分を知る」

【フォトスクライビングの制作:電通グラレコ研究所 代表 甲斐千晴】
電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングを中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断プロジェクトチームです。本記事では撮影写真に取材内容を描きこむ〝フォトスクライビング″という手法で制作しました。https://www.dentsu.co.jp/labo/grareco/index.html

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著者

鈴木 慶太

鈴木 慶太

株式会社Kaien

代表取締役

2009年、長男に発達障がいの診断が出たことを機にKaienを起業。これまで1000人以上の発達障がい者の就労支援に携わる。元NHKアナウンサー、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。著書に「フツウと違う少数派のキミへ: ニューロダイバーシティのすすめ」(合同出版)など。学会登壇や専門誌への寄稿などを通じて、実務・学術・ビジネスの視点からニューロダイバーシティの推進に取り組んでいる。

飯田 剛史

飯田 剛史

株式会社 電通総研

クロスイノベーション本部 ソリューションディベロップメントセンター

障がい者就労領域におけるクリエイティブツールの企画開発、生体信号を活用したサービス事業の設計、新規事業の立ち上げを担当するビジネスプロデューサー。 ダイバーシティワークモデル共創研究所 特任講師として、ニューロダイバーシティを基軸に、誰もが自分らしく働ける社会システムの共創を推進している。

北本 英光

北本 英光

株式会社 電通

未来事業創研

電通入社後、企業・自治体や多くの知育・教育ブランドの戦略PRやクリエイティブ、コンテンツ開発に従事。2011年電通ダイバーシティ・ラボ創設に参画。在学中より幼児・児童教育を学び、精神障がいや特異な才能を持つ発達障がいの子どもたちと向き合う。2020年電通とTBSのジョイントベンチャーである次世代教育事業会社「スコップ」を設立。現在電通未来事業創研にて、主に次世代教育やエデュテインメント、宇宙領域のプロジェクトを手掛ける。「未来の働き方」となるニューロダイバーシティプロジェクト【noiro】をリード。保育士。著書共著:「レゴブックミュージアム」(扶桑社)「希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン」(宣伝会議)など。

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