新しい未来のテレビ「ABEMA」の開局10周年を記念したイベント「ABEMA開局10周年記念 Dentsu ABEMA DAY――ABEMAのこれまでとこれから」が、2026年3月2日に開催された。
本イベント内で行われた特別対談では、AbemaTVの代表取締役社長である藤田晋氏と、dentsu Japan CEO 兼 電通 代表取締役 社長執行役員(当時)の佐野傑氏が登壇。モデレーターを電通の國府潤士氏(AbemaTV社出向)が務め、2016年のABEMA開局から2018年の電通からの出資を経て現在に至るまでの両社の関係性の変遷、そしてこれからの10年に向けた展望が語られた。
※所属、肩書は2026年3月2日当時のもの。
IGPを体現する重要なパートナーであるABEMA
対談は、2016年のABEMA開局、2018年の電通からの出資、そして2026年の10周年という3つのフェーズを振り返ることから始まった。両社の距離感や役割がどのように変化してきたかという問いに対し、佐野氏は当時の率直な心境を明かした。
2018年の出資当時、ビジネスプロデュース局(当時営業)に在籍していた佐野氏は「正直、驚きました」と語る。ABEMAをテレビ朝日と共同運営するサイバーエージェントは電通にとっては競合関係にあるからだ。しかし、その後のABEMAの躍進、特に2022年の「FIFA ワールドカップ カタール 2022」のテレビ朝日との放映権獲得といった大きな取り組みを経て、その認識は大きく変化した。佐野氏は、「出資は素晴らしい判断だったと思います」と振り返り、現在では番組企画に関わるなど、ABEMAは電通が目指すIGP(※)を実現するうえで欠かせない重要なパートナーになっていると語った。
※IGP(Integrated Growth Partner)=広告やマーケティングにとどまらない広い領域から、パートナーとして顧客の持続的成長を支援し、社会の活性化に貢献するdentsu Japanが目指す姿。
一方、藤田氏も、開局当初は電通との関係性に悩んでいたことを明かした。ABEMAがテレビ事業である以上、「電通との協力は必要不可欠」と考えていたという。出資以降、広告売り上げの拡大や大規模なプロジェクトの実現など、2018年を境に両社の関係は大きく前進したと述べた。
ネット中継の世界的な先駆けとなったFIFA ワールドカップ カタール 2022
続いて、ABEMAを10年間率いてきた藤田氏が、この10年で「一番きつかったこと」と「やって良かったこと」を語った。
最もきつかったこととして挙げたのは、経営者としての視点から「投資し続ける」ことであった。新しいチャレンジであるがゆえに事業としてすぐの黒字化は難しい状況の中、上場企業としてのプレッシャーは非常に大きかったという。
その一方で、やって良かったことは、その投資を「長く続けられたことそのもの」だと語る。メディア事業は長く続けるほど視聴習慣が根付き、番組というIP(知的財産)の価値が上がっていく。その中でも特に大きな転機となったのが、テレビ朝日との共同プロジェクトである2022年の「FIFA ワールドカップ カタール 2022」への投資だった。藤田氏は「その投資から、ABEMAのフェーズが一段変わった」と断言する。この投資により、ABEMAにはより質の高い広告主が集まり、一流のタレントも快く出演してくれるメディアへと成長を遂げた。本田圭佑氏の解説が大きな話題になるなど、その影響力は計り知れない。
藤田氏は、あの規模のネット中継は世界的に見ても先駆けであり、「動画の世界が変わったタイミングだった」と、その歴史的な意義を強調した。
若者への影響力と“テレビの再発明”
10周年を迎え、これからのABEMAが持つ魅力について、藤田氏は“若年層への影響力”を挙げた。恋愛番組「今日、好きになりました。」に出演することが人気タレントへの登竜門となったり、次世代ラッパーを発掘するオーディションプロジェクト番組「ラップスタア誕生」がラッパーたちの成功への道筋になっていたりと、かつてテレビのみが担っていた役割をABEMAも担いつつあるという。
もともとABEMAは、若者の“テレビ離れ”を背景に、テレビ朝日との共同事業として「ネットで若者にアプローチする」という思想で始まったメディアである。藤田氏は、開局当初こだわっていたリニア放送(テレビのような番組表に沿った配信)だけでなく、視聴者の視聴スタイルに合わせてオンデマンド配信にも力を入れるなど、形を変えながらも「テレビの再発明を目指す」という基本姿勢は変えていないと強調。「新しいテレビということに期待してほしい」と、聴講者へメッセージを送った。
ABEMAと電通が共創する「次の10年」
対談の最後には、次の10年に向けて、資本パートナーである電通がABEMAとどのような未来を目指すべきかが議論された。
佐野氏は、ABEMAというパートナーと共に「メディアと広告主とわれわれマーケティングの会社、そして生活者の新しい在り方を創っていくということだと思います」と語った。CMの間に「5本中の2本目です」といった表示が入るなど細かな仕様にいたるまで、ABEMAは生活者や広告主のことを考えた工夫がされていることが素晴らしいと言及。こうした実験的な取り組みをさらに推し進め、メディアの進化の在り方を創っていくことが重要だと述べた。
この言葉を受け、藤田氏も「パートナーとして、電通とは連携していきたい」と応じた。インターネットメディアの広告の在り方はいまだ定まっておらず、変化し続けている。その中で、広告に限らず、IP開発、イベント、物販といった多様なビジネス開発を共に仕掛けていきたいという期待を表明し、対談を締めくくった。
出資を機に強固なパートナーシップを築き、メディアの歴史を変えるほどの大きな進化を共にしたABEMAと電通。対談からは、次の10年に向けて、両社が手を取り合って「新しいメディアの形」を創造していくという強い意志が感じられた。
「ABEMA」10周年サイトURL
https://contents-abema.com/10th/



