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マンションの「あたりまえ」を覆す、革新的な“未来の住まい”のつくり方

山本 修平

山本 修平

株式会社 オープンハウス・ディベロップメント

國崎 泰司

國崎 泰司

メディアサーフコミュニケーションズ株式会社

岩崎 文美

岩崎 文美

株式会社 電通

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする100人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

オープンハウスグループでは、マンション事業のリブランディングを2年がかりで行ってきました。これにより新たに誕生した2つのブランドが、「INNOVACIA(イノベイシア)」と「INNOVAS(イノバス)」。両ブランドの中核を貫くコンセプトは、これまでのマンションの固定観念を打ち破り、新たな住まいの形を追求するという「革新性」です。

たとえば一般的な共用設備は、本当に入居者が求めているものなのか。一人一人のライフスタイルが多様化している今、入居者に一律で同じプランを提供するのは正しいのだろうか。こうしたマンションの「あたりまえ」と向き合い、未来の理想の住まいのあり方を提案していくのが、マンション開発事業リブランディングの根幹となっています。

では、そういった「革新的な住まい」はどのように作っていけばよいのでしょうか。リブランディングプロジェクトに携わったオープンハウス・ディベロップメント マンション開発事業部の山本修平氏、メディアサーフコミュニケーションズの國崎泰司氏、電通FCCの岩崎文美 が意見を交わしました。

(左から)メディアサーフコミュニケーションズ 國崎泰司氏、オープンハウス・ディベロップメント 山本修平氏、電通 岩崎文美氏


未来の住まいを考えるために必要だった「発想の逆転」

――この記事では、「未来の住まい・暮らし」とはどのようなものなのか、そしてそれはどう作っていけばよいのか、皆さんで語り合っていただきたいと思います。まずはその前に、今回行ったマンション事業のリブランディングについて、その内容をお聞かせください。

岩崎:取り組みが始まったのは、2年ほど前にさかのぼります。オープンハウスグループ(以下、OHグループ)では、高価格帯のラグジュアリーマンションブランドを新たに立ち上げることとなりました。そこで、どのようなブランドにするのがよいのか、私たちFCCのチームから提案させていただいたところ、ラグジュアリーブランドだけでなく、OHグループが持つ他のマンションブランドも含めて、マンション事業全体にこの提案内容を取り入れるのがよいのでは、ということになったのです。そこから、事業全体のリブランディングが始まりました。

山本:私たちOHグループでは、もともと「オープンレジデンシア」というマンションを展開していました。当初はこれに加えて高級ラインのブランドをつくるということでしたが、FCCの提案したブランドの世界観を見て、これを機に既存のオープンレジデンシアを含めて、マンション事業全体を貫く新たなブランドの軸にしようと会社として動き出しました。


――その新ブランドの軸になったのが「革新性」ということですね。どのような理由で革新性を据えたのでしょうか。

岩崎:OHグループをひもとくと、業界の常識やあたりまえをいくつも覆してきた歴史があります。その革新性が人々に受け入れられ、成長してきたのではないでしょうか。マンション事業においても、やはり革新性をコアとして、これまでにない「マンションの在り方」を追求していく。そのような姿を新ブランドに反映したいという思いがありました。

山本:こうした考えのもと、新たなラグジュアリーブランドとして誕生したのが「INNOVACIA」です。さらに、オープンレジデンシアとして展開していたマンション群は、「INNOVAS」というブランドに再構築しました。いずれも革新性を核としたブランドです。

2025年7月に全社にお披露目された新ブランドのキービジュアルより(1)
2025年7月に全社にお披露目された新ブランドのキービジュアルより(2)
2025年7月に全社にお披露目された新ブランドのキービジュアルより

 

岩崎:これらの新ブランドを定めた上で、未来の住まい・マンションを作るための活動もしていきました。まず行ったのは、OHグループでマンション事業に関わる役員やリーダー層が部署横断で集まり、それぞれの思う「未来のマンション」や「理想的な暮らし方」を自由に出し合うセッションです。併せて、マンション事業部の全部員300人にもアンケートで同様の意見を募りました。皆さんの考える「革新性」を言語化していく作業だったといえます。その内容は、事業全体のブランドの未来と世界観を示す「ビジョンブック」にまとめています。

さらには、この事業ブランドの未来ビジョンを自分のものにし、実際のマンション開発に生かしてもらうため、事業部内の公募で、自らの意思でブランドを形にしていきたいと集まってくださった社員向けのプロジェクトを開始、その中でクリエイティブ・セッションも実施しました。

そのプログラムの1つとして、革新的な物件をつくるために、改めて「未来の暮らしをつくる、とはどのような体験価値が必要なのか」、その土台となる街や建物はどうつくられていくのか、クリエイティブ・セッションに参加するメンバーに学んでもらう機会も設けました。実際に、未来の暮らしや街をつくる体験価値づくりに関わっている方にご協力いただき、そのプロセスをお話いただくことで、ノウハウやエッセンスを感じとり、刺激を得ることに注力しました。國崎さんは、そのうちの一人でした。

 

國崎:私が所属するメディアサーフコミュニケーションズでは、「都市の編集者」として、街の再生や活性化を手掛けています。たとえば近年は、日本橋・兜町の街づくりプロジェクトに携わってきました。兜町はビジネスパーソンが多い地域でしたが、その状況を変え、さまざまな人が訪れる街にしようと、2019年ごろからプロジェクトを進めてきたのです。

今回のプロジェクト参加メンバーの方に、初回セッションで兜町に来ていただき、私たちがどのような考えのもとで街づくりを進めてきたのか、フィールドワークをしながら説明していきましたね。

 

山本:社員にとっては、普段使わない頭の筋肉をフル回転する時間になったと思います。マンションをつくるためには、当然ながら「人の暮らし」を起点に考えることが重要です。とはいえ、マンション事業を長くやっていると、得てして「人の暮らし」の前に、立地や金額といった条件を起点にマンションを考える流れに陥りやすい。その順序を逆転し、まず住まわれる方の暮らしを思い浮かべて、それを基にマンションを設計することが大切です。特に、今までの常識にとらわれない、未来の暮らしや住まいを考える上では、その思考プロセスが不可欠でした。その意味で、國崎さんのフィールドワークは大きな意義があったと感じています。

國崎氏を迎えたセッションの様子。OHグループでマンション事業に関わる社員が兜町でのフィールドワーク後、革新的な理想のマンションづくりについてディスカッションした


固定観念にとらわれない「未来の住まい」のつくり方

――ここからは、未来の「住まいづくり」「家づくり」とはどのようなものか、そしてそれをどう作っていけばよいのか、皆さんでお話しいただければと思います。

山本:今回作ったビジョンブックには、私たちが考える未来の住まいのアイデアがいくつも掲載されています。その中でも特に面白いと感じるのは、「複数住戸をローテーションできるマンション」という発想ですね。

マンションは、一度買ったらそこに住み続けるか、買い替えるかという選択肢が一般的です。その常識を変え、生活のフェーズや時期に合わせて、いくつかの住戸を移り住んでいけたら面白いですよね。そういうシステムを持ったマンションがあったら革新的だと思いました。

岩崎:ビジョンブックには他にもいろいろなアイデアが載っています。たとえば「コンペ形式で若手建築家を集めてマンション設計を依頼し、活躍機会を支援する」というアイデア。マンション購入者にとっても、未来の有名建築家の第1作になるかもしれないマンションのオーナーになれる、資産価値も上がるかもしれない、といったメリットがあります。このように、マンションを取り巻く仕組みごと新しくしてしまうような、夢のあるものも含まれています。そんなアイデアを発想しながら、この事業で実現していきたいビジョンを描くことで、革新の意味を他の人と共有しやすくもなります。ここまで広げて考えて良いのだと互いに刺激し合いながら、また次のアイデアが頭の中に浮かんでくるので、社員一人一人の発想を広げるツールにもなると感じますね。

プロジェクトで作成したビジョンブック。「コンペ形式で若手建築家を集めてマンション設計を依頼し、活躍機会を支援する」「複数住戸をローテーションできるマンション」など未来の住まいのアイデアが多く収められている

 

國崎:新しい住まいを追求していくには、そもそも「どういう部屋に住むと、人はどう変化するのか」を知る必要があると思います。そこで私が考えるのは、未来の住まいを考えるための“実験的なマンション”があると面白いかもしれない、ということです。

――実験的なマンション。

國崎:はい。たとえば部屋に花やアートを飾っている人は多いと思います。きっとそれは住んでいる人の暮らしを豊かにしてくれているのですが、では、実際にアートを飾ったことで人の心にどういった変化が生まれているのか、飾るアートの数によって違いが出るのか。そうした効果を検証できる住戸があるといいですよね。その結果を分析することで、どのような居住環境が人にプラスをもたらすのか、理想的な住まいの解像度が上がっていくと思います。


「生活を豊かにするマンション」をどう実現するか

岩崎:面白いですね。ちなみに、街づくりの視点で未来のマンションを考えたとき、國崎さんが思い浮かべるアイデアはありますか?

國崎:いろいろありますね。たとえば、活性化されている都市には、大きく2つの方向性があると考えています。1つは「目的地型の都市」で、観光地などが該当します。もう1つは「生活文化拡充型の都市」。これは、そのエリアに住む人の生活を豊かにする要素が揃っている都市といえます。

たとえば、こだわりのコーヒーを提供する喫茶店や、アジア各国の陶器が並ぶお店が近所にある――こういった、「住む人の生活を豊かにする」「生活文化を拡充する」コンテンツがそろうエリアには、自然と人が集まってくると考えています。

この生活文化拡充型の都市について、マンションを起点に街づくりができたら面白いと思いますね。マンションは暮らしの真ん中にありますから、ここを中心に生活文化を豊かにするコンテンツを配置していく。そうやってこの街に人気が出てくると、マンションの価値も増していくでしょう。それは、住人がマンションを売却する際にもメリットになります。

――エリアの活性化が、マンションの資産価値も上げていくと。

國崎:これに近い話で、ホテル業界では今、「ライフスタイル・ホテル」が人気を博しています。ライフスタイル・ホテルの1つの定義は、ホテルの中だけでお客さまに楽しんでもらうのではなく、その地域のお店や暮らしなど、ホテル周辺の街全体を楽しんでもらうもの。ホテルの中に閉じないからこそ、お客さまに「宿泊以上の価値を感じてもらえる」という魅力があります。

この考え方を、マンションに当てはめたら面白そうですよね。マンションを中心にして、周辺エリア全体で楽しんでもらう。そのためのコンテンツを街にそろえていく。それは生活文化の拡充になるでしょう。マンションを起点に街の生活文化を高めていくのは、「未来の住まいづくり」につながると思います。

山本:とても興味深いお話ですし、まさに、マンションを起点に街がつくられ、そして街の生活文化が高まることで人が集まり、さらに未来のマンションの価値が高まるという新しい好循環が生まれますね。単に、新しいものをつくり続けるということだけでなく、街ごと暮らしを考えていくという視点は、私たちの事業の今後のヒントにもなりそうです。今回のリブランディングは、どこかにゴールがあるものではありません。革新性のあるマンションとは何か、それを実現するためにはどのような発想が必要か、これからもずっと考え続けていかなくてはなりません。固定観念にとらわれず、理想のマンションを追求する。その姿勢を持続し、革新的な住まいをつくっていけたらと思います。

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著者

山本 修平

山本 修平

株式会社 オープンハウス・ディベロップメント

マンション開発事業部 首都圏プロジェクト推進部長

1988年北海道生まれ。2013年に室蘭工業大学大学院修了後、建築設計事務所での経験を経て、2022年に株式会社オープンハウス・ディベロップメント入社。現在はマンション開発事業部首都圏プロジェクト推進部に所属、最高峰ブランド「INNOVACIA」の第一弾「イノベイシア恵比寿」、第二弾「イノベイシア六番町」の開発を担当。設計・開発両面の経験を活かし、顧客ニーズを追求した住まいづくりに取り組む。

國崎 泰司

國崎 泰司

メディアサーフコミュニケーションズ株式会社

取締役

1982年神奈川県生まれ。早稲田大学商学部卒業。「都市の編集」を掲げるメディアサーフコミュニケーションズ株式会社において、都市開発や商業開発のリサーチ、コンセプトプランニングからテナントリーシング、運営にいたるまで、プロジェクトを一気通貫でリード。現在は、美意識に基づく文化資本が都市に与える影響を探究している。

岩崎 文美

岩崎 文美

株式会社 電通

フューチャークリエイティブリード室フューチャークリエイティブ2部

GM/クリエイティブ・ディレクター/サービスデザイナー

1977年静岡市生まれ。電通入社以来、企業価値を高める未来創造プロジェクトを多く推進し、パーパス策定やブランディング、事業やサービス開発におけるコンセプト構築などを得意とする。ストラテジックプランナーの出自を活かし、どんな課題にも常に仮説構築から企画の根っこをつくり、人が動きたくなる流れをつくるところまでを一気通貫でやり通すのがモットー。

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