
「RDワーカー」という言葉をご存知でしょうか?RDワーカーとは、2025年9月に発表された新しい概念で、「難病(Rare Disease)」とともに働いている、働こうとしている人たちのことです。「難病」と聞くと、自分には関係のない世界と感じる方もいると思います。でも、これから「難病×はたらく」は今よりずっと身近になるでしょう。
本連載では、社会でこれまでオープンな話題になりづらかった「難病×はたらく」というテーマに挑んだクリエイティブのプロジェクトについて、電通 クリエイティブディレクタ―・コピーライターの外崎郁美がご紹介します。
※本記事における難病とは、国の制度上定義された「難病」「指定難病」「障害者総合支援法上の難病」「希少疾患」に加え、NPO法人両育わーるどが独自に定義する「難治性慢性疾患」も含め、総合的に「難病」ととらえています。
「難病×はたらく」という世の中で埋もれていた課題と可能性を、言語化する
2024年8月。NPO法人両育わーるど理事長、重光喬之さんからご連絡がありました。「難病×はたらく」を世の中に広げるための言葉を開発できないか?というご相談でした。重光さんとの出会いは10年前、「クリエイター×NPO・NGO」で社会課題に取り組む電通発のプロジェクトでご縁があり、さまざまな障害・難病・希少疾患の認知を広げるためのポスターやワークショップツール制作でご一緒したのが始まりです。それ以来、この課題を広く知ってもらうために情報交換をしながら、何らかの形にして世の中に広げることができないか、模索を続けてきました。
当時からNPO法人両育わーるどの理事長としてさまざまな活動をされていた重光さんでしたが、実はご自身が「脳脊髄液減少症」という難病の当事者です。
脳脊髄液減少症は原因不明かつ治療法が確立されていない難病で、人によっても症状に差があるようですが、重光さんの場合は、親知らずの抜歯の痛みに匹敵する全身の強い痛みが毎日続くそうです。その痛みによるストレスと闘いながら、障害・難病・希少疾患がある方の社会参加を後押しする活動を続けてこられています。
そんな重光さんが、なぜ私に言葉の開発を依頼したか。それは言葉の力を強く信じていたからです。「“ヤングケアラー”や“LGBTQ+”など、言葉が生み出されたことによって存在が可視化され、多くの人に認知されることで世の中が変わってきている感覚がある。“難病×はたらく”も、多くの人にその課題と可能性を知ってもらうために、わかりやすく言語化したい」重光さんがそうおっしゃるのを聞いて、これは取り組むべき課題だと思い、私も動き出しました。

「知ってもらう」ことは、社会を変える第一歩
そのような経緯で重光さんや他の難病当事者の方々と議論を重ね、最終的に生み出したのが「RDワーカー」という言葉です。今、両育わーるどのウェブサイトや「難病者の社会参加白書2025」で「RDワーカー」の定義は以下のように記載されています。

このRDワーカーの「Rare」には、英語の「Rare Disease(=希少疾患)」に加えて3つの意味が込められています。
- 支援制度が少ない
- 社会の認知が少ない
- 働く選択肢が少ない

この「Rare」が大きなポイントです。多くの人が「正しく知らない」「知ろうとしない」状態が続くことが、難病への理解が進まない要因です。結果として周囲からの理解を得られず、制度の整備も進まないことで、働きたいのに働くことがかなわない方が多くいらっしゃいます。その数はなんと、推定100万人以上(NPO法人両育わーるど推計)。また、難病患者の就業経験者の半数近くが難病に関連して離職しているとの調査結果もあります(「平成30年版厚生労働白書」)。
難病とひとことで言っても種類や症状は数多くあり、リモート勤務や時短勤務など、柔軟な働き方や工夫があれば働ける方が多くいます。つまり、世の中にまだまだ多くの可能性が潜んでいるのです。この100万人の可能性を一気に知らせるのにもっとも効果的な手段のひとつが、「クリエイティブ」の力。そこで私は、同じく可能性に満ちた若手クリエイターたちに、柔軟な発想力で「RDワーカー」の認知と理解を広めてもらうためのアイデアを形にしてもらうことにしました。すべての作品は、重光さんや難病当事者のみなさんと議論を重ねて仕上げたものです。
そして2026年4月7日、日建設計が運営する「社会課題を解決するための共創空間プラットフォーム“PYNT竹橋”」にて、シンポジウム「『難病×はたらく』の未来をデザインする ~クリエイティブの力で“RDワーカー”の可能性を引き出す~」の開催と合わせて、これらの作品の発表を行いました。そこで発表された若手クリエイター4チームの作品を、制作過程とともにご紹介します。(前半の記事では、2チーム分のご紹介となります)
Vol.1 RDワーカーの可能性を「ロゴ」で表現する


企画制作:

──このチームは「RDワーカー」という新しい言葉をシンボリックなロゴにしました。デザインで大事にしたポイントを教えてください。
──積み木のようにパーツを組み合わせることでいろんな形をつくれるデザインは、まさにRDワーカーの可能性そのものですね。タグライン「あたらしいはたらくを、ここから。」に込めた思いは?
──すべて平仮名なので見やすく象徴的で、「ここから」という言葉に未来の可能性を感じますね。ロゴデザインの可変性を生かしたポスタービジュアルには、どういった趣旨や意図がありますか?
──この作品を通して届けたいメッセージをお願いします。

Vol.2「ももたろう」が多様な働き方を体現!

企画制作:

──このチームは「ももたろう」という誰もが知る物語のフォーマットを活用して、「RDワーカー」が直面する課題を登場人物に反映させることで、誰もが自分ゴト化しやすい形で伝えています。「ももたろう」という物語をフックにしたアイデアは、どのように思いつきましたか?
──誰もが知る「ももたろう」という導入があることで、難病というテーマにぐっと入りやすくなりますね。登場人物を描くときに気を付けたことはありますか?
──鬼が「価値観がアップデートされていない上司役」として登場するのも、ユニークなアイデアですね。
──この物語を通して伝えたいメッセージは?

※後編につづく
著者

外崎 郁美
株式会社電通
第2CRプランニング局
クリエイティブディレクター/コピーライター
クリエイティブディレクション、コピーライティングを主軸に、ブランディング、クリエイティブ視点での事業開発支援、コミュニケーション開発・プロダクト開発・プロジェクト運営などに携わる。 2016-2020年まで電通ギャルラボ代表。

