広告とECが急速に融合しつつある現在、動画広告が購買に直結する時代がすでにやってきている。その変化の中心にいるのが、北欧スウェーデン発のテクノロジー企業・SeenThis。とりわけ同社が持つアダプティブストリーミング技術は、静止画枠に動画を配信できるという独自性から、広告業界で大きな注目を集めている。
こうした現状を見据えた「Advertising Week Asia 2025」( 2025年12月2日(火)~12月4日(木)の3日間、都内にて開催)のセッションに、電通 第9ビジネスプロデュース局の林田昂平氏、SeenThis Japan Head of Salesの飯嶋攝子氏、モデレーターとして電通イノベーションイニシアティブの岡孝亮氏が登壇。SeenThisのテクノロジーがAmazonと交わることで、どのようなインパクトを生むのか、広告の未来を象徴する「ブランド×EC×動画」の可能性を、事例とともに深く掘り下げた。
「静止画枠に動画を出せる」SeenThisの技術とは
セッション冒頭、飯嶋氏がSeenThisの特徴を紹介した。同社は2017年にスウェーデンで設立され、日本法人は2024年にローンチ。世界50カ国以上の市場で5000社以上が利用する動画配信テクノロジー企業だ。
飯嶋氏は、SeenThisを「世界で唯一、静止画枠を動画広告枠に変えることができるテクノロジー」と紹介した。
一般的な動画広告は動画データを完全にダウンロードしてから再生するため、表示の遅延や容量の重さ、掲載枠の制約、通信環境による体験差といったUX課題を抱えている。これに対しSeenThisは、動画データを小さなパケット単位で配信するストリーミング方式を採用。「必要最小限のデータだけを送ることで、動画を静止画と同じくらい速く表示できる」と説明し、高画質・低負荷・高速表示を同時に実現できる点を強調した。
さらに無駄なデータ転送を抑える仕組みにより、無駄なCo2の排出を削減することができ、サステナビリティにも貢献するテクノロジーであることを示した。
伸び続けるEC市場で、動画広告を活用する意味
次に議論は「ECモールの現状」へと移った。岡氏は経済産業省のデータをもとに、2024年のEC市場規模は約26兆円と推計され、10年前から倍以上に成長していると説明。リテール全体に占めるEC比率も着実に高まっている現状を示した。その上で、ECモール内で動画広告がどのように価値を発揮できるのかを問題提起した。
これに対し飯嶋氏は、静止画広告と動画広告を比較した調査結果をもとに、動画広告は静止画に比べて認知・理解・利用意向のすべてで効果が高いと説明。さらにSeenThisのストリーミング動画では、同環境における通常の動画(ダウンロード型)に比べて、アテンションが約1.7倍に向上した事例があると述べ、動画の質を高めることが成果につながると示した。
そして話題は、より具体的なAmazonマーケット面の広告にシフト。飯嶋氏は「Amazonのマーケット面には広告在庫が潤沢にある一方、圧倒的に静止画枠が多く、動画広告は検索一覧など限定的」と整理した上で、「動画広告は、原則としてAmazon ECサイト出店者に限定され、出したくても出せない広告主がいる」と現状課題を提示した。
こうした状況に対しSeenThisは、独自のテクノロジーとともに、キャンペーンの目的に応じて動画と静止画を組み合わせて革新的なクリエイティブを制作するソリューションを提供。出店の有無を問わず静止画枠で動画を運用することができ、静止画の即効性と動画による理解・好意形成を一体化できる点を強みとしている。岡氏もこれを「ブランディングとパフォーマンスを同時にかなえる、エポックメイキングな手法」と評価した。
SeenThis動画はどんな課題にマッチするのか?
続いて、メディアプランナーである林田氏が、広告現場のリアルな課題と可能性を語った。林田氏は、いま起きている変化として「ファネルの崩壊」や「短尺動画を見てその場で購入する衝動的導線」を挙げ、TikTokやYouTubeショッピングの文脈とも重ねながら、「いまの導線は、必ずしも従来のように直線的にファネルダウンするわけではない」と語った。 その上で、Amazonで広告を出す意味を「すべての人が買い物かごを持った状態で画面を見てくれる」とたとえ、購買モードのユーザーが集まる場であること自体が価値だと位置づけた。
一方で、従来のAmazonマーケット面広告には「リーチが限られる」「出店者に限られる」「原則出店していないと動画広告は出せない」といった表現の限界があったとし、SeenThisはこうした課題を解決するソリューションであると評価した。林田氏は、Amazonの中で「テレビCM的なブランディングの価値」と「購入というボトムファネルまでの寄与」を同時に生み出す点に価値があると述べ、「認知から興味喚起、比較、購入までを一気通貫でできる」可能性を示した。
配信結果から読み解くSeenThis動画の効果
本セッションのハイライトは、実際にAmazonマーケット面に広告を配信した結果による仮説検証である。飯嶋氏は、静止画+動画を組み合わせたSeenThisクリエイティブを用いた、3つの仮説の検証結果を紹介した。
仮説1「SeenThis動画はユーザーアクションに寄与できるのか」では、広告接触後のブランド検索(Amazon内で履歴が残る検索)を指標に、検索行動の単価が静止画広告の約5分の1に改善し、「動画で印象に残るからこそ、検索というユーザーアクションにつながった」と読み解いた。
仮説2「SeenThis動画は購買行動に寄与できるのか」では、商品詳細ページ遷移、カート追加CVR、購入CVRがいずれも改善したと語り、最後まで買い切らない「カート落ち」を抑えられた可能性にも言及した。
そして会場の空気を一気に変えたのが、新規購入比率だ。飯嶋氏は「初めて購入、または1年以上ぶりの購入を新規と定義し、それが70%を超えた」と明かした。岡氏は、「すごい数字」と驚きを隠さず、林田氏は「動画×Amazonの相乗効果が、ファネルを飛び越えて、瞬間的に購入までのリレーションを作り出せた」と解釈した。
最後の仮説3は「SeenThis動画はブランドリフトに貢献できるのか」。飯嶋氏はブランドリフトサーベイにおいて、5段階評価の2~4を選びがちな日本人の傾向にも触れながら、最高評価の「5」に焦点を絞ったという調査結果を紹介。
岡氏はこれを受け、「ブランディングとパフォーマンスの両立が証明されている」と述べ、SeenThisによる動画広告の価値を再確認できる結果だとまとめた。
リテールメディア×動画広告の価値は「良質なアテンション」
終盤では「リテールメディア×動画広告」の可能性が俯瞰的に議論された。林田氏は、コネクテッドTVやSNSなど動画接触が増える一方、コンテンツ過多により「広告のアテンションが取りにくい」点を課題として指摘。「重要なのはインプレッション数ではなく、どれだけアテンションを獲得できるかだ」と述べた。
その点でリテールメディアは、購買意欲の高い状態で画面が見られていることに強みがあり、検索や閲覧履歴が中長期的に効いてくると説明。岡氏も「リテールメディアは最後にたどり着くメディア」と応じ、「購買に近いところへカスタマージャーニーがぎゅっと近づいているイメージを持った」と印象を述べた。
ブランディングとパフォーマンスを両立できる時代へ
まとめとして飯嶋氏は、広告は条件がかみ合えば「邪魔なもの」ではなく有益な情報になり得ると指摘した。そのためには、「誰に・いつ・どこで・どう届けるか」が重要であり、SeenThisは広告価値を高める一つのパーツになれると説明。ブランディングとパフォーマンスを両立するクリエイティブを、適切な場所へスピーディに届けられる点を強みとし、Amazonにおいて動画配信が難しかった広告主にも新たな選択肢を提供できることを強調した。
林田氏も最後に、デジタル環境が大きく変化する中で「Amazonという大きなメディアの中で、アテンションが高く、高画質な動画をすごいスピードで配信できる」という3要素がそろう意義を述べ、「ブランディングとパフォーマンスを分けて語る時代から、ワンソリューションで賄える世界観へ近づいている」と展望を語った。
岡氏は「ブランディングと購買促進が両立できてこそ広告の役割が発揮される」とまとめ、「広告に携わり続けたいと思える、勇気づけられるセッションだった」と述べ、セッションを締めくくった。







