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連載アイコン地域愛に火をつけろ [1/1]
公開日: 2026/06/19

地域愛が生んだ佐賀の新名所! 「キングダム読破堤」誕生の裏側

池田 匡孝

池田 匡孝

佐賀県

山田 大輝

山田 大輝

株式会社 電通九州

中原 貴文

中原 貴文

株式会社 電通九州


地域を愛し、地域の魅力を引き出して、地域を元気にしている「人」たちの意欲的な取り組みや、背景にある思いに迫る連載企画「地域愛に火をつけろ」。

第1回は、メディアやSNSでも大きな話題を呼んでいる、「キングダム」(集英社刊)と佐賀県のコラボレーションプロジェクト「キングダム×(駆ける)佐賀県~佐賀の火を絶やすでないぞォ。~」(2026年1月~9月実施)について、佐賀県 政策部 広報広聴課 サガプライズ!の池田匡孝さんと、電通九州のクリエイティブ・プランナーである山田大輝さん、中原貴文さんにお話を伺いました。

 

防波堤で「キングダム」全ページが読める!?佐賀県に全長300m超の新名所が爆誕

――まずは「キングダム×(駆ける)佐賀県」について、概要を教えてください。

池田:「週刊ヤングジャンプ」(集英社刊)で連載中の大人気漫画「キングダム」の作者・原泰久氏が佐賀県出身であり、今年がちょうど連載20周年という記念すべきタイミングであったことから実現した、コラボレーション企画です。主に4つの企画があります。

1つ目は、「佐賀キングダム空港」です。期間限定で空港の愛称を追加し、空港内をキングダム仕様に装飾。「思いの継承」をテーマにした「佐賀キングダム空港特別展」も開催しています。


 

2つ目は、全長300m超の「キングダム読破堤」。有明海を一望できる防波堤にコミックス1~78巻の全ページを掲出し、一気読みできる前代未聞の企画で、SNSでも大きな話題になりました。

3つ目は、秦の始皇帝ゆかりの地とされる古湯温泉街を巡ると、人気キャラクターである王騎将軍のグッズが当たるキャンペーンを実施しています。

4つ目は、佐賀県が誇る「有田焼」とのコラボレーション。コラボ作品の抽選販売は終了していますが、9月末まで「佐賀キングダム空港特別展」でご覧いただくことができます。


――まさに、佐賀県の魅力と作品の魅力とを結び付けたコラボレーションですね。反響はいかがでしょうか?

池田:2026年1月のコラボ開始から3月末までの約2カ月間で、のべ21万人以上の方が、空港や読破堤、古湯温泉を訪れてくださいました。読破堤のある場所は、車がないとアクセスしにくいところなのですが、現在は、「お祭りでもやっているのかな?」というほど(笑)、にぎわっている日もあります。著名人の方のSNS投稿も話題になり、読破堤を目的に県外から来てくださる方も増え、新たな観光地になっています。

古湯温泉のキャンペーンにも、たくさんの方にご参加いただいています。古湯温泉は38度程度の「ぬる湯」が特徴で、夏場にも楽しめるのが魅力の温泉なのですが、逆に冬場は、閑散期にあたります。にもかかわらず、本企画によってこの1~3月は古湯温泉街がにぎわい、地元の方からも「本当にありがたい」という感謝の声、喜びの声が届いています。

佐賀県 池田匡孝さん

 

成功の裏側に、“佐賀愛”あり!

――企画が生まれた背景として、佐賀県にはどのような課題があったのでしょうか?

池田:今回の「キングダム×(駆ける)佐賀県」は、情報発信プロジェクト「サガプライズ!」の第43弾となります。これまでは「話題の最大化」を目的にプロジェクトを実施してきましたが、「話題の最大化」にとどまらず「交流人口のきっかけ創出」も目指したいと考えていました。「話題化」と「人が来る」こととはやはり手法が違うので、その両立が課題でした。

――読破堤はまさに、「話題化」と「人が来る」を両立した企画となったんですね。電通九州の皆さんは、両立のためにどのような工夫をされたのでしょうか。

中原:人が訪れたくなる企画にするために、「見たことがないもの」を追求したいと思いました。SNSで切り取られたものじゃなくて、本当に見に行きたくなるものを作りたい、と。

「キングダム」が全巻掲出できる場所をつくるというアイデアは、チームのディスカッションの中で出たときに「面白いけど実現が難しいかもね」と話していたんですが、そんなときに山田が防波堤はどうかとアイデアを出してくれたんです。

電通九州 中原貴文さん

 

山田:実は私の息子が、同じ公園ばかり行っていると文句を言ってくるので(笑)。どこか良い公園がないか探していたときに、この防波堤がある「干潟よか公園」を見つけたのが、きっかけでした。

私は、今は福岡に住んでいるのですが、佐賀県出身で。有明海が一望できる長い防波堤が「すごく佐賀らしいな~」と、記憶に残っていました。

電通九州 山田大輝さん

 

中原:都心だと、人が滞留してしまう施策は難しいですよね。この防波堤は、普段はあまり人がいない場所なのですが、逆にそういったロケーションの特性を活用することが、「佐賀だからこそできること」「佐賀でしかできないこと」になったのだと強く思います。

山田:とはいえ、私たちも提案時は、まさか本当に実現できるとは思っていなくて……(笑)。恐る恐る企画を出したのですが、こんな突拍子もないアイデアを「ぜひやりましょう!」と言ってくださった、佐賀県庁の皆さん、作者の原さんや集英社の皆さんに、心から感謝しています。

出来上がった読破堤を見たときは、本当に圧巻で、チーム全員で感動したのを覚えています。

池田:感慨深かったですよね!たくさんの方のご理解とご協力に、感謝です。

ちなみに、読破堤のある公園内には「ひがさす」という施設があり、干潟にしかいない生き物や渡り鳥を紹介しているのですが、読破堤をきっかけにこの施設を訪れてくださる家族連れの方も増え、そういった部分でも、佐賀県の魅力を知っていただくことにつながりました。

東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」。キングダムの読者は親世代が多く、家族で読破堤に訪れる人も多いという。


――佐賀に縁があるプランナーだからこそ、実現できた企画なんですね。

山田:はい。実は防波堤以外にも、有田焼のコラボレーションに参加してくださった陶芸作家の井上祐希さんが私の高校時代の先輩だったり、その化粧箱を作ってくれたのも、同級生だったりしました(笑)。佐賀に住み、地域を愛するメンバーだったからこそ意欲的に参加してくれて、そういう「人の縁」で、良いコラボレーションができたんじゃないかと感じています。

池田:今回の「キングダム×(駆ける)佐賀県」では、「キングダム」の名セリフに掛けて、「佐賀の火を絶やすでないぞォ」というコピーを掲げています。「キングダム」で描かれている、「思いの火」というテーマは、佐賀が誇る工芸品や文化、自然といった世代を超えて人々が受け継いできた価値そのものと重なります。

井上祐希さんは人間国宝の故・井上萬二さんのお孫さんで、まさに偉大な祖父から井上萬二窯を受け継がれた節目にあり、今回のコンセプトを体現する存在でした。そんな方に、ご協力いただけたことにとても感謝しています。

 

熱量が発想を変え、発想が行動を変える。地域の人が誇りを持てる未来へ

――本企画を通して、佐賀県における変化などはありますか?

池田:1つは、佐賀空港の魅力を認識していただけたことです。佐賀空港はアクセスの良さや駐車場を無料で利用できる強みがありますが、地元の方にその利便性が十分伝わっておらず、福岡空港が利用されるケースもありました。今回の企画をきっかけに、佐賀空港の魅力について、県民の方をはじめ近隣圏の皆さんにも気づいてもらえたことは、とても大きな、意味のある変化だと考えています。

また、これまで東京の広告会社の方と仕事をすることが多かったのですが、やはり、佐賀県のことをよく知ってくださっている方々と仕事をすると、ただ「おもしろい」だけじゃない企画になるな、と手ごたえを感じました。

一番、実感したのは「キングダム」には少し過激な表現もあるため、子どもも訪れるキングダム読破堤の企画においてはマスキングが必要でした。それを、「佐賀海苔でやりましょう」と提案されたことです(笑)。作品をマスキングするということは、ある意味、ファンを白けさせてしまいますが、佐賀海苔を使うことで、逆に大変おもしろがっていただけました。マイナスをプラスに変える、しかも、佐賀らしい方法で。そういった発想は、やはり地域愛の深い皆さんだからこそのご提案だったと思います。

読破堤の先に広がる有明海。その有明海でとれる佐賀名産の海苔でマスキングしたアイデアがSNSでも話題になった。


――これから、佐賀でやってみたいこと、挑戦したいことはありますか?

池田:はい。佐賀の人は、「佐賀って何があるの?」と聞かれると、「なんもなか(何もない)」と答える方が多いんです。当たり前すぎて、価値があるのかどうかも分からない。でも、県外の人からしたらすごく珍しくて喜ばれる。そういった地域資源をもっともっとPRしていくことで、シビックプライドと言いますか、佐賀の人たちの郷土愛を高めていけたらいいなと考えています。実際に、来ていただいた方の満足度が非常に高いのが、佐賀の強みです。

山田:池田さんと同じ思いです。実は、佐賀県は全人口に対する15歳未満の子どもの割合が全国トップ3に入るくらい、子育てがしやすい場所なんです。なので、自分の生まれた県に誇りや愛着を持ってもらえるような企画は意識していきたいです。私も、佐賀から離れたからこそ分かる価値をたくさん感じているので、コミュニケーションに携わる者として、まだまだできることがあるはずだと思っています。

中原:「単発で終わらない」ことをこれからもやっていきたいですね。佐賀空港のお話にもありましたが、一度「行動」が変わると、それが「習慣」になり、定着し、長期的に地域の活力や成長につながっていくと思います。そのきっかけになる施策を、これからも生み出していきたいです。

今回の企画は、佐賀を愛する人たちの「熱量」の掛け合わせに、さまざまな「佐賀らしさ」「佐賀だからできること」がさらに掛け合わさって、大きくなった。一人一人の地域愛こそが、日本の各地域を変えていく力を持っているんだと、心から思いました。

 

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

池田 匡孝

池田 匡孝

佐賀県

政策部 広報広聴課 サガプライズ!

プランナー

2019年佐賀県庁に入庁。土木事務所にて用地買収業務を経験後、県の外郭団体であるさが県産品流通デザイン公社にて国内での県産品の販路拡大・情報発信業務に従事。2023年からサガプライズ!に配属となり、『島耕作シリーズ』とコラボした「佐賀県副知事 島耕作」など企業やコンテンツ等とのコラボを通じた情報発信業務を担当している。

山田 大輝

山田 大輝

株式会社 電通九州

インテグレーテッド・グロースプランニング局 クリエイティブ1部

クリエイティブディレクター

佐賀県出身。生活者の気持ちをちゃんと考えて企画しています。なんでもやります。TCC新人賞、JAA賞グランプリ、広告電通賞、FCC賞、ACC賞など。去年の趣味がランニングで、今年の趣味は読書です。

中原 貴文

中原 貴文

株式会社 電通九州

インテグレーテッド・グロースプランニング局 クリエイティブ2部

コピーライター・プランナー

IPコンテンツ領域の話題化施策やデジタルテクノロジーを活用した企画などを中心に、コピーライティング・プランニング・CMなどを担当。漫画を年間1000冊読む。趣味でゲーム開発を行いTOKYOGAMESHOW2025にて作品を出展。

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