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アテンションは広告評価を変えるか――KDDIなど3社が挑む新たな共通指標の可能性

柳田 麻衣子

柳田 麻衣子

Pinterest Japan

後舎 満

後舎 満

KDDI株式会社

畑山 昌

畑山 昌

株式会社 電通

スティーブン・リョウ

スティーブン・リョウ

株式会社 電通ジャパン・インターナショナルブランズ

同じインプレッション数でも、広告効果には大きな差が生まれる――。その差を生み出しているのが、生活者が実際に広告へ向けた「アテンション(注視度)」です。

デジタル広告の評価指標が量から質へと移行する中、電通ジャパン・インターナショナルブランズ(以下、DJIB)は、「Attention Economy」プロジェクトの一環として、KDDIおよびPinterestと共同で「アテンション・エコノミー調査」を実施しました。

本調査では、アイトラッキング※によって取得した実際の視認行動とブランド成果の関係を分析。プラットフォームや広告種類を横断して比較できる共通指標として、アテンションの可能性を検証しました。調査からは、広告の価値を「どれだけ届けたか(量)」ではなく、「どれだけ意味ある形で見られたか(質)」へとシフトしていることが示されました。

本記事では、KDDI、Pinterest(ピンタレストジャパン)、電通、DJIBの4社による座談会をもとに、アテンション活用の可能性と今後の広告評価の在り方について紹介します。

※アイトラッキング=専用のセンサーやカメラを用いて人の目の動きや視線を追跡・分析する技術。

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左から、リョウ・スティーブン氏(DJIB)、柳田 麻衣子氏(ピンタレストジャパン)、後舎 満氏(KDDI)、畑山 昌氏(電通)


デジタルでも問われる「本当に見られたか」という本質

デジタル広告においても、「広告は本当に見られているのか」という問いが、改めて重要になっています。

KDDIではこれまで、テレビ広告において「広告が実際に見られているか」を重視し、広告効果の検証と改善を重ねてきました。2019年からはアテンション指標を導入し、広告認知との相関を確認したうえで、番組やOTTメディア※の選定にも生かしています。

一方、デジタル広告では、リーチ数や完全視聴率といったログベースの指標をもとに評価・改善を進めてきました。しかし、レポート上の数値と実際の「見られ方」には乖離(かいり)があるという可能性に課題意識がありました。広告が画面上に表示されていても、必ずしもユーザーの注意が向いているとは限らず、動画が十分に見られないまま再生完了と判定されるケースも考えられるからです。

そこでKDDIが着目したのが、「どれだけ配信されたか」だけでなく、「どれだけ見られたか」という視点です。デジタル広告においても本質的な広告効果を検証する、新たな評価指標が求められているのです。

※OTTメディア=従来のテレビ放送網などを通さず、インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスの総称。

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左から、畑山 昌氏(電通)、後舎 満氏(KDDI)


「アテンション」という共通指標で、媒体価値を問い直す

こうした課題に対し、DJIBを中心とした電通チームがKDDIおよびPinterestとともに取り組んだのが、「アテンション」を共通指標としてデジタル広告を評価するアプローチです。

従来のインプレッションやリーチでは捉えにくかった「実際にどれだけ見られたか」を可視化し、プラットフォームや広告フォーマットの価値を、より実態に即して比較・検証しようという試みです。

調査では、第三者計測会社Lumen Researchによるアイトラッキングを活用。日本在住の1050人を対象に、自然なモバイル閲覧環境を再現し、ユーザーが「どこを」「どのくらい見たか」を計測。4つの主要ソーシャルプラットフォームと7種類の広告フォーマットを対象に、広告接触時のアテンション(注視度)とブランド成果(想起や好意度)の関係を分析しました。

ここで重要な役割を果たしたのが、視認率と平均視認時間を組み合わせたAPM(Attention per Mille)という指標です。これにより、プラットフォームや広告フォーマットを横断してアテンションを比較できるようになり、「どれだけ注目を集めたか」という観点からメディア価値を評価する基盤が整いました。
 

Pinterestで浮かび上がる、「質の高いアテンション」の正体

今回の検証により、アテンションを可視化することで、広告効果の違いをより深く読み解けることが明らかになりました。中でもわれわれが着目したのがPinterestです。

調査では、Pinterestのプレミアスポットライト(予約型)やワイド動画(運用型)が高い視認率とAPMを記録しました。投稿と同じように表示される「インフィード型」の広告でありながら、十分な注視を獲得しており、画面占有率の高さだけがアテンションを生むわけではないことが分かりました。

また、Pinterestでは他プラットフォームと比較してスクロール速度が最大13倍の時間をかけて、ユーザーがコンテンツを丁寧に見ながら情報探索している傾向も確認されました。

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背景にあるのは、Pinterestが「次にやりたいこと」「次に買いたいもの」のアイデアを探す探索型プラットフォームであるということです。ユーザーが能動的に情報と向き合う中で広告に接触するため、単なる接触にとどまらず、理解や記憶につながりやすい環境が形成されていると考えられます。

さらに、ポジティブな気持ちで利用しているユーザーほどブランド想起が高まる傾向も見られました。今回の結果は、プラットフォームの違いというだけでなく、接触時の気分や文脈がアテンションの質に影響することを示唆しています。

柳田 麻衣子氏(ピンタレストジャパン)


「見られる」から「どう受け止められるか」へ――成果を分ける分岐点

ブランド成果との関係を見ると、アテンションが高い広告フォーマットほどブランド想起が高まる傾向が確認されました。また、好意度リフトではKDDIのPinterest広告が、調査対象プラットフォームの中で最も高い結果となりました。

これは、広告が「見られる」ことに加え、「どう受け止められるか」がブランド成果を左右することを示しています。

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今回の検証では、アテンションを高めるためにクリエイティブ設計も重視されました。auの広告では、長年蓄積してきたキャラクター資産を生かしながら、ブランドカラーや短く明快なコピー、視線を引きつける要素を組み合わせ、短時間でもブランド認知につながりやすい構成を採用。静止画と動画を組み合わせることで、初期アテンションの獲得と情報補完の両立を図りました。

そのクリエイティブ分析からも、具体的な示唆が得られました。ヒートマップでは、上部の静止画バナーが多くの初期視線を集めており、冒頭でブランド名やメッセージを明確に伝える設計がブランド想起に寄与した可能性があります。そのうえで動画が情報を補完する構成が、理解促進やエンゲージメントの向上につながったと考えられます。

このように、Pinterestでは、ユーザーの利用文脈と広告フォーマット、クリエイティブ設計がかみ合うことで、質の高いアテンションにつながることが示されました。

可視化を超えて――アテンションを「成長の指標」へ

今回の検証によって、KDDIにとっては、既存の指標にアテンションという視点を加えることで、より実態に即したメディアプランニングや運用改善が期待されます。

また、Pinterestについても、単なる接触の多さではなく、ユーザーが丁寧に情報探索を行うプラットフォームという特性から、ブランドのメッセージや世界観を届けやすい場であるという可能性が見えてきました。

今回の検証は、アテンションを起点にデジタル広告の価値を再評価し、媒体選定、フォーマット設計、クリエイティブ開発を一体で捉える重要性を示すものとなりました。電通グループは今後、アテンションをメディア選定やクリエイティブ開発、配信最適化の中核指標として活用し、ブランド成果や事業成果との接続をさらに進めていく考えです。

広告価値を「接触量」だけでなく「質」から捉える――。今回の取り組みは、その実践に向けた重要な一歩といえるでしょう。

【調査概要】
・対象エリア:日本  (全国)
・対象者条件: 18~65歳のソーシャルメディア利用者(性別、年齢均等割付)
・サンプル数:1050人
・調査手法:インターネット調査  
・調査期間:2025年12月
・調査機関:Lumen Research(Pinterestによる委託)

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著者

柳田 麻衣子

柳田 麻衣子

Pinterest Japan

メジャメントソリューション部

メジャメントリード

Pinterest Japanのメジャメントソリューション部でメジャメントリードとして、広告主・代理店の効果検証設計やブランド・売上への貢献度の可視化を通じて、データドリブンな意思決定を支援。

後舎 満

後舎 満

KDDI株式会社

コミュニケーションデザイン部 メディア企画グループ

グループリーダー

1998年 現KDDI入社 モバイルや固定回線の代理店向け営業 、2012年 宣伝部にてデジタル広告のメディアプランニングやクリエイティブ制作、SNS運用に従事、2018年 グループ会社のSupershipへ出向、2021年 KDDI帰任、5GやAR/VRを活用した新規事業に従事、2023年 コミュニケーションデザイン部(旧宣伝部)へ復帰、広告メディア全般のプランニングを統括。

畑山 昌

畑山 昌

株式会社 電通

第6ビジネスプロデュース局エクスペリエンスデザイン・プロデュース部

アソシエイト・エクスペリエンスデザイン・プロデューサー

電通デジタル新卒入社。AP部門にて広告運用とアカウントプランニングを一気通貫で担当。主に通信キャリアのデジタルメディア戦略立案に従事し、2025年より電通BP局へ出向中 

スティーブン・リョウ

スティーブン・リョウ

株式会社 電通ジャパン・インターナショナルブランズ

Associate Director

dentsu香港およびGoogle香港にてオペレーションとビジネス開発に従事。現在は電通ジャパン・インターナショナルブランズの統合ソリューション室に所属し、国内外メディアとのパートナーシップ業務を担当。電通グループやクライアントに対して、最適かつ革新的なメディアソリューションを提供することをミッションとしている。また、クライアントのビジネス課題に独自の価値をもたらすプロプライエタリ・ソリューションの開発にも取り組んでいる。

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