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「結果」の消費から、「プロセス」の共創へ。Z世代が導く“クラフト型”スポーツのかたち

電通若者研究部(以下、電通ワカモン)は、Z世代の学生と「ツギクル」ワークショップを実施。「次に来る○○のかたち」というテーマで大学生のリポートをもとに仮説の構築をしています(「ツギクル」ワークショップの記事は、こちら)。

今回のテーマは、Z世代の学生が考える「次に来る“スポーツ”のかたち」です。AIをはじめとするテクノロジーによってスポーツの進化が進む中、若者たちのスポーツとの向き合い方がどう変化しているのかを探ります。

電通若者研究部「ワカモン」
若者の意識・価値観・行動を継続的に研究し、マーケティング、事業開発、組織・人財領域までをカバーする電通内の専門組織。若者を世代論としてだけではなく、「若者=新しい価値観で行動する人たち」と再定義し、その価値観を「未来の兆し」として読み解くことで、企業や社会の次の方向性を導くサポートをしています。

結果と同じくらい「プロセスと揺らぎ」も求めるZ世代

これまでのスポーツビジネスは、たとえば昔のプロ野球のような試合観戦に代表される、主催者によって観戦体験がパッケージ化された「一面的な試合」や、その「勝敗(結果)」をファンに一方的に提供する「マス・プロダクト型」が主流でした。しかし、情報に能動的にアクセスし、結果だけでなくプロセスや背景に意味を見いだすZ世代のスポーツ観は、少し異なる様相を呈しています。

現状の若者のスポーツ実態を把握するために、「サークルアップ(CircleApp)」という大学サークル専用のコミュニケーションアプリを使い、全国の大学生に向けてアンケートを実施したところ、興味深い傾向が見えてきました。


魅力に感じる点として最も票を集めたのは依然として「結果そのもの」(42.5%)ではあるものの、注目すべきは、ほぼ同程度の若者が「プレーの解像度(細かな戦術や瞬時の判断)」(41.0%)にも魅力を感じている点です。また、約3割が「背景のストーリー」を支持しています。スポーツ観戦が単なる「勝敗の確認」から、戦術や選手・試合の背景にある物語といった「多様なプロセスに自らフォーカスして楽しむ体験」へと広がっていることがわかります。


「100%正確であるべきだ」「どちらかというと正確であるべきだ」とAI判定を支持する合理的な声が6割弱を占めました。しかし一方で、約3割強の若者が「人間の審判による揺らぎやドラマも醍醐味」と回答しています。効率や正確性が当たり前とされるデジタルネイティブ世代において、あえてスポーツに「予測不能な不確実性」や「人間らしい余白」を求める層がこれだけの規模で存在することは、非常に興味深い兆しと言えます。

これらの調査結果から浮かび上がるのは、Z世代にとってのスポーツが、与えられた結果を受動的に消費するものから、見る人自身が「どこに価値を置くか」を選択し、再解釈するものへと変わりつつある過渡期の姿です。

私たちは、このように生活者自身が独自の視点で意味を見いだし、時にはコミュニティに合わせて形さえも作り替えていく新しいスポーツの潮流を、「クラフト型」へのシフトと名付けました。

調査機関:電通ワカモン、調査対象:全国の大学生/大学院生200人、調査時期:2026年5月 ※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。
 

学生レポートから見えた「クラフト型」への3つの変化

ワークショップで学生たちが提出した、「ツギクルスポーツのかたち」のレポートをひもとくと、この「クラフト型」へのシフトが、大きく3つの事象として表れていることがわかります。

①「没入ポイント」のクラフト:発掘型応援と物語の共有
AIやトラッキングデータの発展により、現代のスポーツはプレーの細部まで可視化されるようになりました。学生のレポートの中には、これを「発掘型応援」と呼ぶものがありました。ファンは与えられたハイライトを見るだけでなく、データを活用して選手の隠れた魅力を自ら発見し、深く没入するようになっています。

また、別のレポートで指摘された「スター育成計画」のように、オーディション番組のような感覚で、選手の努力や葛藤といった「裏側」の物語に共感し、その成長プロセスを生で目撃することに価値を見いだす傾向も強まっています。さらに、テレビの大画面で試合を流しながら、スマホの縦型配信で「推し」のリアクションを同時に楽しむ視聴スタイルも定着しつつあります。試合そのものだけでなく、没入できるポイントを自分で探しているのです。


②「不確実性(ゆらぎ)」のクラフト:AIの笛に対するカウンター

スポーツのデータ化やAI判定が進み、「正しすぎるスポーツ」になったことへの反動も起きています。「AIの笛が鳴るほど、人の声が響く」と題されたレポートでは、AIによって公平性が担保された一方で、誤差や揺らぎといった「人間らしい余白」の価値が高まっていると指摘されていました。

SNS上では、審判のストライク正確率がデータとして比較され、「主役は審判!?」と言われるほど裏方のジャッジが議論の対象になっています。これは単なる批判ではなく、人間の迷いや運によって結果が揺らぐ「予測不能なドラマ(不確実性)」を、スポーツの醍醐味(だいごみ)として味わおうとするクラフト行動の現れと言えます。


③「ルールと社会」のクラフト:スポーツという国の乱立期

与えられたルールをそのまま受け入れるのではなく、自分たちでルールを再編集する動きも顕著です。現代スポーツがデータによって「予測できるもの」になりすぎた限界を指摘し、新たな秩序を設ける「スポーツという国の乱立期」が来ていると考察するレポートもありました。

その象徴が、元プロサッカー選手のジェラール・ピケが創設した「Kings League」です。サイコロを振って人数を減らしたり、特殊カードで得点が倍になったりと、あえて可変性や偶然性をルールに組み込むことで、これまでの枠組みに飽きた人々に新たな熱狂を生み出しています。自分たちのコミュニティや価値観に合わせて、スポーツの形そのものを再編集(リ・クラフト)する。これこそが、次世代のスポーツのあり方なのです。


「完成品」から「共創プラットフォーム」へ

これからの時代、企業やブランドがスポーツと関わる際、「一面的な熱狂(マス・プロダクト)」に単にスポンサードするだけでは、若者の心は動きません。スポーツを、生活者自身がプロセスを発掘し、不確実性を楽しみ、ルールを自分たちなりに再解釈できる「余白のある共創プラットフォーム」として提供・支援していく視点が求められます。

例えば、試合の裏側にあるデータをオープンソース化してファンに独自の分析(クラフト)を促したり、テクノロジーであえて「偶然性」を演出する新しい観戦体験を創出したりすることが考えられます。スポーツの「クラフト型」へのシフトは、ロジックと効率化が支配する現代社会において、若者が手触り感のある「熱狂や遊び」を取り戻すための、本能的なムーブメントなのかもしれません。

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著者

大桐 拓海

大桐 拓海

株式会社 電通

第2マーケティング局

マーケティングコンサルタント

入社後は、飲料・インフラ企業のマーケティングやコミュニケーションプランニングに従事。大学生時代から電通ワカモンの学生チームに参加し、Z世代向けのリサーチアプリの開発やForesightのナレッジ収集を担当。

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