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公開日: 2026/07/23

LGBTQ+2026年調査~「わかったつもり」を超える鍵は、リアルな想像力

電通では2012年に国内初となるLGBTQ+についての大規模調査を実施して以来、10年以上にわたり調査を重ねてきました。6回目となる「LGBTQ+調査2026」(※)では、前回と同様に、LGBTQ+当事者層の意識や経験に加え、非当事者層の意識や知識、行動についても分析しました。

本連載では、最新の調査結果をさまざまな切り口から分析していきます。初回は「LGBTQ+調査2026」の主なトピックスを紹介します。

※ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン課題に対する研究やソリューション提供を行うdentsu DEI innovations協力のもと、電通グループのdentsu Japan内の組織であるdentsu Japan DEIオフィスが主体となり、調査を実施。


LGBTQ+当事者層の割合は10.6%

「LGBTQ+調査2026」では、性のあり方を下記の3つの要素の組み合わせで分類しました。
・性自認
・生まれた時に割り当てられた性
・性的指向(恋愛感情または性的な関心がどこに向かうか)

調査実施時点での回答に基づき、異性愛者であり(ヘテロセクシュアル)、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する(シスジェンダー)回答者以外を「LGBTQ+当事者層」と定義しています。

日本在住の20〜59歳、4万6658人を対象にスクリーニング調査した結果、全回答者に占めるLGBTQ+層の割合は2023年調査の9.7%から微増の10.6%となりました。その要因として、LGBTQ+に関する情報の増加により、自分自身の性自認や性的指向への気づきが進展し、実態がより可視化されたと分析しています。匿名のアンケートであっても性自認や性的指向を表明することが難しい回答者もいることや、ジェンダーやセクシュアリティの認識は個々人の中でも流動的なことに鑑みつつ、今後もスコアの動向を注視していく必要があると考えています。

また、「性自認×生まれた時に割り当てられた性」と「性自認×性的指向」のそれぞれの組み合わせによって分類した内訳も算出しました。その結果、前回調査同様、L(レズビアン)・G(ゲイ)・B(バイセクシュアル)・T(トランスジェンダー)以外にも、Q+に含まれる多様な性のあり方が確認されています。

LGBTQ+調査


「性自認×生まれた時に割り当てられた性」では、性自認と生まれた時に割り当てられた性が異なる「トランスジェンダー」が1.38%、性自認が「男性か女性か変わることがある、一定ではない」「男性・女性のどちらでもある/ない」と感じる「ノンバイナリー/Xジェンダー」が1.27%。性自認が「わからない」と回答した「クエスチョニング」が0.30%でした。

また、「性自認×性的指向」では、「ゲイ」(1.60%)、「レズビアン」(0.93%)のほか、もっとも多い割合を占めたのは、「性的指向が『男性か女性か変わることがある、一定ではない』」「男性・女性どちらも好きになる」「相手の性別は問わない」と回答した「バイ/パンセクシュアル」で1.93%となりました。

加えて、性別に関係なく、他者に恋愛感情を抱かない「アロマンティック」が1.58%、性別に関係なく、他者に性的に惹かれない「アセクシュアル」が1.52%、性的指向がわからない「クエスチョニング」が0.39%となりました。

なお、すべてのスコアを足すと10.6%を超えるのは、回答者の中には「ノンバイナリー」で「アセクシュアル」など、複数の性のあり方に該当する人も含まれているからです。

そして、LGBTQ+という言葉の認知については76.7%と高い水準になっているものの、各属性に対する言葉の認知には、G(ゲイ):90.6%、Q+の中のアセクシュアル・アロマンティック:10.7%と大きく差があることが分かりました。

LGBTQ+調査

 

LGBTQ+調査

 

同性婚の法制化に全体の67.0%が賛成

同性婚の法制化(婚姻平等の実現)に賛成する人(「賛成」「どちらかというと賛成」の合計)は、67.0%となりました。また、日本で同性婚が認められても自分の生活に影響はないと思う非当事者(「そう思わない」「あまりそう思わない」の合計)は、82.6%となりました。

LGBTQ+調査
LGBTQ+調査


「同性婚の必要性がわからない、パートナーシップ制度で十分なのでは?」という声もあります。しかし実際には、パートナーとの関係性が法的に認められないことによる不安・不利益など、困難を感じている人が確かに存在しています。こうした状況を踏まえると、制度の是非だけでなく、「どんな場面でどのような困りごとが起きているのか」という点に目を向け、理解を深めていくことが重要です。そのためには、当事者の具体的な経験や声を通じて、見えにくい困難を可視化していくことが、今後の社会的理解の広がりにつながると考えられます。


学校教育で「性の多様性」について教えるべきだと感じている人は81.7%

学校教育でLGBTQ+をはじめとする「性の多様性」について教えるべきだと感じている人は当事者・非当事者を合わせた全体の81.7%にのぼりました。一方、学校教育でLGBTQ+について教わった経験があると回答した人は9.8%にとどまりました。8割以上の方が「学校教育でLGBTQ+について教えるべき」と感じているにもかかわらず、性の多様性についての学校教育はまだまだ限定的なことがうかがえます。

LGBTQ+調査
LGBTQ+調査

 

LGBTQ+に関する研修有無がインクルーシブな意識・行動に影響

LGBTQ+に関する研修の受講有無で大きく意識・行動に違いがあることが明らかになりました。企業においてLGBTQ+に関する研修を受けたことのある層では、日常の行動において「LGBTQ+について、正しく分かりたい・理解したいと思う」人(「そう思う」「まあそう思う」の合計)は56.7%で、研修未受講層(43.9%)より12.8ポイント高いという結果になりました。また、「目の前で誰かが差別的な言動をとった時は、話題を変えたり注意をする」人(「そう思う」「まあそう思う」の合計)は44.2%で、研修未受講層(33.6%)より10.6ポイント高い結果となりました。

LGBTQ+調査


また、「店員がLGBTQ+研修を受け、言葉づかいやサービス提供に配慮がある店を利用したい」人(「利用したい」「まあ利用したい」の合計)は63.5%でした。当事者58.6%、非当事者64.1%と、非当事者のスコアが当事者よりも高い結果となり、LGBTQ+に関する配慮や取り組みは、当事者だけでなく非当事者にも価値ある要素として認識されていることがうかがえます。

さらに、こうした取り組みは単なる対応の一環にとどまらず、「社会の変化に対応できる」「社員が働きやすい」といったポジティブな印象につながる副次的な効果を持つことも過去調査から分かっています。企業やブランドのイメージ向上にも寄与し、結果として来店客全体の安心感や満足度の向上につながる重要な要素であると考えられます。

LGBTQ+調査

 

当事者を想像することで非当事者の意識・行動に変化が

今回の調査では、「LGBTQ+に関する設問に回答する際、実際の当事者の知人を想像したか」を尋ねました。その結果、「想像しながら回答した」が17.2%、「部分的に想像しながら回答した」が36.8%となり、合計で54.0%と、過半数が当事者を思い浮かべながら回答していることが明らかになりました。一方で、「想像していない」と回答した人は46.0%でした。

LGBTQ+調査


では、実際に「当事者を想像して回答したかどうか」は、スコアにどのような違いをもたらしているのでしょうか。

まず、「当事者に不快な思いをさせないために、LGBTQ+について正しく理解したいと思う」という意識について見ると、アンケート回答時に当事者の存在を想像した層(57.6%)と想像しなかった層(41.5%)で16.1ポイントの差がありました。

さらに、「LGBTQ+当事者は非当事者に比べると、できないことやハードルを感じることが多いと思う」という認識についても、当事者の存在を想像した層(69.2%)と想像しなかった層(48.8%)で20.4ポイントの差がありました。

具体的な誰かの存在を思い浮かべることが、「正しく理解したい」という主体的な姿勢を後押しし、日常の中にある見えにくい不便さや障壁への理解を深めていることが分かります。

LGBTQ+調査
LGBTQ+調査


つまり、「誰かを思い浮かべながら想像する」という行為は、単なる知識の有無にとどまらず、課題の理解や共感の深さ、さらには社会に対するアクションの必要性への認識にも影響を及ぼしている可能性があります。本調査からは、LGBTQ+に関する意識の差の背景には、「知っているかどうか」だけでなく、「具体的な誰かを想像できるかどうか」、さらに、「自分と違う誰かの立場で物事を考え、相手の気持ちを想像できるか?」という視点が重要な鍵となっていることが見えてきます。


当事者の困難な経験のトップ3。人生の終盤・将来への不安も上位に

当事者が困難に感じたことや、もやもやした気持ちになった経験で寄せられたコメント数の1位は「家族・親族との関係」、2位「学校・教育」、3位「人生の終盤・将来への不安(終活)」となりました。

LGBTQ+調査


また、「高齢者にはLGBTQ+当事者は他の世代と比べて少ない」と考えている非当事者(「そう思う」「ややそう思う」の合計)は50.1%となりました。高齢層の当事者が可視化されにくい状況がある一方で、介護や医療、終活など、直面する問題は多岐にわたることがうかがえます。また、自由回答では「パートナーの看取りをできないのではないかという不安」「同性パートナーが医療の同意をできない」「老後の同性介助がどちらになるか」「戒名をつける場合、性別によって分けられる部分をつけたくない」といった回答がありました。

高齢の当事者も同様に存在しているのにもかかわらず、時代背景などを理由に可視化されにくいことから「高齢者には当事者は少ない」という固定観念が生まれてしまっている可能性があります。

また、当事者の困難としては、恋愛・結婚といった、非当事者にとって比較的イメージしやすい領域に目が向きやすい傾向があります。実際には、人生の始まりから終盤まで困難は存在し、特に医療や介護、終活といった領域での課題はまだ十分に認識されていない状況があります。

LGBTQ+調査

 

当事者と非当事者で日常生活の障壁への認識にギャップがあることが判明

LGBTQ+当事者は日常生活の中でさまざまなハードルを感じている一方で、非当事者は当事者も自分たちと同様に不自由なく生活できていると捉える傾向があり、両者の間には認識のギャップが見られます。

実際に、「非当事者に比べ、できないことやハードルを感じることが多い」と回答したLGBTQ+当事者は60.4%にのぼりました。一方で、非当事者の53.8%は「自分にできることで、LGBTQ+当事者にできないことはほとんどない」と回答しています。

この結果から、当事者が感じている現実の障壁と、非当事者の認識との間に乖離(かいり)が存在していることが明らかになりました。

LGBTQ+調査


また、当事者と非当事者の認識のギャップは、ライフステージのさまざまな場面で存在することが明らかになりました。

そのひとつに、非当事者は「同性パートナーとも結婚指輪を買えばいい」と思っているが、当事者は「指輪の購入や着用による周囲からの視線に不安を感じる」という認識のギャップがあります。非当事者にとっては「気にせず結婚指輪を作ればいいのに」「作って幸せになってほしい」といった善意から発せられている言葉でもあります。一方で、当事者が置かれている状況や日常的に感じている不安に寄り添えておらず、こうした発言が無意識のうちに傷つけてしまうこともあります。

今回の調査を通して、このようなギャップの背景には、非当事者が当事者のリアルな声を知る機会が限られていることがあるのではないかと感じました。そうした気づきから、デジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」を作成しました。「恋愛・結婚」「働き方」「住まい」「子ども・教育」「医療・防災」「老後」といったテーマにおいて非当事者の「わかったつもり」と当事者の「ほんとのところ」を可視化し、その違いに気づくきっかけとなることを目指しました。こうした気づきが、一人一人の理解を深め、より生きやすい社会へとつながっていくことを願っています。

次回は、調査結果をもとに作成したデジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」の内容や制作背景・意図を詳しくご紹介します。
(LGBTQ+調査2026「わかったつもりとほんとのところ」デジタルブックダウンロードはこちら

【調査概要】
〈スクリーニング調査〉
・対象エリア:全国
・対象者条件:20~59歳
・サンプル数:4万6658人
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2026年1月19日~1月27日

〈本調査〉
・対象エリア:全国
・対象者条件:20~59歳
・サンプル数:6240人(LGBTQ+層該当者600人/非LGBTQ+層該当者5640人)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2026年1月19日~1月27日

注:LGBTQ+当事者層割合、人口構成比に併せて、都道府県、性別、年代(20〜30代/40〜50代区切り)でウェイトバックをかけています。
注:本調査における構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

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著者

森田 亮

森田 亮

株式会社 電通

中部ビジネスプロデュース局 アカウントリード3部

アカウントリード

兵庫県生まれ、野球育ち。学生時代は野球に打ち込みながら、「障害者への理解を広げたい」という思いからパラスポーツゼミに所属。 電通入社後は、メディアプランニング領域・マーケティングコンサルティング領域を担当。その後、ビジネスプロデューサーとして中部エリアを中心に、企業のビジネス課題解決を支援。

岸本 かほり

岸本 かほり

株式会社 電通

第3マーケティング局

ストラテジスト

徳島県生まれ、阿波踊り育ち。dentsu DEI innovations所属。飲料・食品・金融・映画・情報サービスなど、あらゆるブランドや商品・サービスの戦略立案やプランニングに従事。「第15回日本マーケティング大賞グランプリ」「PRアワードグランプリ2022 シルバー」「交通広告グランプリ 2020 駅メディア部門優秀作品賞」など受賞。 

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