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ツギクル「学び」のかたちは、「用意された正解のなぞり」から「しなやかな社会適応」へ

電通若者研究部(以下、電通ワカモン)は、現役大学生と未来の兆し発見プログラム「ツギクル」ワークショップを実施。「次に来る○○のかたち」というテーマで大学生のレポートをもとに仮説の構築をしています(未来の兆し発見プログラム「ツギクル」の記事はこちら)。

今回のテーマは、現役大学生が考える「次に来る“学び”のかたち」です。変化が激しく、AIが日常生活に浸透してきた時代。そんな中で、学生がどう「学び」を捉え、向き合っているのか、その兆しを探ります。

電通若者研究部「ワカモン」
若者の意識・価値観・行動を継続的に研究し、 マーケティング、事業開発、組織・人財領域までをカバーする電通内の専門組織。若者を世代論としてだけではなく、「若者=新しい価値観で行動する人たち」と再定義し、その価値観を「未来の兆し」として読み解くことで、企業や社会の次の方向性を導くサポートをしています。


納得感がなければ動かない。若者たちの学びスタイル

これまでの「学び」の主流は、学校教育をベースとした「義務感の強い学び」や「目的が見えない中でも根性で勉強することを善とするスタイル」でした。

今の学生たちの「学び」に対する意識・モチベーションはどうなっているのでしょうか?現状を把握するために、「サークルアップ(CircleApp)」という大学サークル専用のコミュニケーションアプリを使い、全国の大学生に向けて調査を実施したところ、以下の興味深い傾向が見えてきました。


まず注目すべき点としては、「自分の興味があることを学ぶのは好きだ」という能動的な好奇心が93.0%に上ったことです。若者たちは、決して「学ぶこと」そのものに忌避感があるわけではありません。むしろ、自分の「好き」や「興味」を起点にした学びに対しては非常に前向きです。

一方、「明確な目的や夢がないと、将来のためであっても勉強する気にならない」については、「とてもそう思う」が31.4%と、今回の項目の中でも比較的高いスコアとなりました。「いつか役に立つから、とにかくやりなさい」という考えだけでは若者には響きにくく、「なぜこれを学ぶのか」という理由が自分の中で腑に落ちて初めて、ようやくスイッチが入るのが、今の若者のリアルな感覚なのかもしれません。

そして、「世の中の変化に合わせて、自分の知識や考え方はその都度アップデートしていきたい」は92.6%。「社会で外さない(やらかさない)ための振る舞い」をSNSから学ぶ人も72.8%に上ります。決められた正解を覚えるのではなく、日々変わる社会の空気を読みながら、自分自身も柔軟に書き換えていく。そんな「生きるための学び」が、若者の日常に広がっているのかもしれません。

「好き」や「納得感」を大切にしながら、社会の変化にも適応しようとする若者たち。その意識は、今学んでいることと、これから学びたいことの“ギャップ”にも表れています。


「今、自主的に学んでいること」のトップは、「目先の『単位』や『GPA(大学の成績)』を落とさないための勉強(57.6%)」です。

しかし、「これから(も)学びたいこと」へと目を向けると、一気に「生き抜くための備え」へと意識が切り替わっているようです。「英語」や「ビジネスマナー」といった定番スキルだけでなく、「思考力・問題解決力」「メンタルケア」「金融知識」が急上昇します。激しい変化が続くこれからの社会を「病まずに、お金に困らずに、自分の力で考えて生き抜く」ためのスキルを本気で求めているのかもしれません。

ちなみに、近年急速に普及した「AI」については、今(28.4%)、これから(28.4%)と、スコアが完全にフラットでした。過度に恐れたり依存しすぎたりするのではなく、「日常を便利にする、あって当たり前のインフラ」として冷静に付き合おうとするスタンスが見て取れます。

自らの納得感を重視し、変化の激しい社会を賢く生き抜こうとする若者たち。一方で、忙しい日々に追われ、自らの「純粋な好奇心」や「自分らしさ」をどう見つければいいのか模索している等身大の葛藤も見えてきました。周りに合わせてうまく生き抜くことと、自分だけの「好き」を大事にすること。一見別物に見えるこの2つを、彼らは日々の暮らしの中でどうやってつなぎ合わせているのでしょうか?

そこには、これまでの「決められた学び」とは異なる、彼らならではのしなやかなアプローチがありました。次項からは、これからの「学び」のあり方について、その未来の兆しを学生のレポートからひもといていきたいと思います。

「決められた学び」から「生きる知恵」へ

大学生たちは、教科書やあらかじめ決められた時間割を飛び出し、日常のあらゆる瞬間を学びのきっかけに変えています。

例えば、学生レポートを見ると、「コラショ」や「Duolingoのフクロウ」などの学びの象徴が、ミームやSNS文化を取り込み、「懐かしさ」「親しみやすさ」を生み出しながら学びの枠を超えて日常に溶け込み始めています。

また、別のレポートでは、若者は、SNS上の炎上事例などを日々目にすることで、「自分はさらされたくない」という恐怖心から行動・言動を律しています。大学生たちは、今この瞬間の「社会の空気」や「世間の反応」をタイムリーにキャッチし、昨日までの正解に固執せず、周囲の空気に合わせて自分の心の持ちようや行動を、その都度柔軟に書き換え続けています。


この絶え間ない微修正の繰り返しこそが彼らの日常であり、常に変化する社会とズレずに生きていくための新しい学びの姿と言えます。

「AIの存在」と「原点回帰」

世間の目まぐるしい変化を、自分の力だけで24時間追いかけ続けるのは不可能です。そこで彼らの日常にあるのは「AI」の存在です。自分の考えを一度AIに投げかけ、返ってくる「平均的な正解」から、世間の受け止め方を先回りして確認しています。AIは、社会から足を踏み外さないための心強い防波堤の役割を果たしています。

しかし、彼らのAIとの関わり方はそれだけではありません。AIが最短距離で「平均的な正解」を導き出してくれるからこそ、若者たちは「正解ばかりじゃ生きる意味がない」と、効率を捨てた「あえての遠回り」に引かれ始めています。

下記のレポートにもあるように、効率的にゴールにたどり着くことよりも、途中の「迷い」や「試行錯誤」の手触り感(=非効率だと思われること)から、自分の興味を見つけることに注目しています。


つまり、大学生たちは、自分がただ面白いと思うからやるという、純粋な遊びの感覚を取り戻そうとしたり、あえて手間を増やして根本から理解したり、手触り感のある学びにも注目しているのです。すべてが最適化された時代だからこそ、あえて取りこぼしがちな「自分の好き」を丁寧に探していく。この原点回帰の姿こそが、AIには決して乗っ取られない、彼らの新しい学び方なのです。

これからの「学び」に求められること

日々自らの常識を書き換え、時にあえて遠回りをしながら「自分らしさ」を手探りする若者たち。その一見面倒なプロセスにこそ、彼らの本当の「好き」や「らしさ」が隠れています。だからこそ、これからの企業や教育機関、そして家庭に求められるのは、正解を詰め込むことではありません。

彼らが安心して迷い、試行錯誤しながら、自分だけの「好き」や「らしさ」を見つけられる「余白」を共につくること。これからの学びの場は、「正解を教える場」から「自分らしさをつくる場」へと、しなやかに変わっていく必要があるかもしれません。

〈調査概要〉
調査機関:電通若者研究部
調査対象:全国の大学生・大学院生500人
調査時期:2026年7月
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。

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著者

上運天 来海

上運天 来海

株式会社 電通マクロミルインサイト

マーケティング事業本部 ディシジョンリサーチ2部 リサーチ&コンサルティング4グループ

リサーチャー/プランナー

関西オフィス所属。入社後は、化粧品・住宅・食品などさまざまなカテゴリのリサーチやプランニング業務に従事。現在は若年層のインサイト研究を軸に、関西圏のクライアントを中心としたリサーチやワークセッションのファシリテーターを担当。特に若年層をターゲットとしたリサーチに強みを持ち、調査結果からの本質的なインサイト発掘から、具体的なアイデア創出まで、事業やブランドの成長を共に描く伴走型の支援を得意とする。

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