カンクリ通信No.2
しりあがり寿×古川雅之【後編】
2014/08/21
こんにちは、関西支社クリエーティブ・プランニング局(以下、関クリ)の日下慶太です。カンクリ通信#2は、前回に続き、しりあがり寿さんと関クリの古川雅之クリエーティブディレクターの対談をお届けします。古川作品も一挙公開。それではどうぞ。
世の中とのつながり
古川:僕、若い頃、遊びで陶芸をかじったことがあるんです。で、陶芸家にはなれないなと思った。一人山奥にこもって作って、違う、がしゃーん、違う、がしゃーん、って10年でも20年でも自分の思い描いたカタチをストイックに追求するっていうのがね、もう無理。寂しくって。これだーっ! て、勘違いでもいいものができたと思ったら、すぐ山を下りて「いいのできたけど、どう?」ってすぐ人に言いたくなる。
しりあがり寿:言っちゃうよね(笑)。
古川:で、「こんなん前見たことあるよ~」とか「うーん、イマイチ!」とか言われたら「くそーーー」ってまた山に走って戻ってすぐ作って、いいのできたらまた山おりて「これなら、どうだ?」ってすぐ人に見せたいんです。
しりあがり寿:ものを作る喜びの原点は、ウケたいってことだよね。
古川:10年間、ストイックに自分の形だけを追い求めるなんか絶対できないです。反応が欲しい。その点、広告はいいも悪いもすぐ反応が分かる。
しりあがり寿:最近、ウケるにはウケたいんだけど、神様にウケたいなーって思うんです。
古川:ほー、神様??
しりあがり寿:見せて喜んでもらうためには新しさが必要じゃないですか。「これ前に見たことある」って言われたらもうだめ。でも、新しいものは誰も見たことがないから評価しようがない。
古川:コンテにも描けない。
しりあがり寿:調査でいい点数が出るはずもない。だから、新しいものを作って人に評価してもらうということには矛盾がある。ものさしがないところに作るわけだから、神様を相手にするしかないなあって。
古川:なるほど~。
しりあがり寿:でも、クライアントも神様に近いかもしれない。大衆の評価よりもクライアントの評価が絶対だから。ちょっとトイレ行っていいですか。面白いとついトイレに行きたくなっちゃうんですよ。
(トイレから帰ってきたしりあがりさん)
しりあがり寿:今日はあんまり面白くて。
古川:トイレに行きたくなくなったら、面白くないってことですね(笑)。
古川雅之作品
日下:それではここで古川さんの仕事を、しりあがりさんに見てもらいましょう。
古川:トイレ行かんかったらどないしよ~?
しりあがり寿:いやー、行きまくっちゃうと思うなあ。
「NISSHINBO」CM動画 http://www.dog-theater.jp/main.html |
しりあがり寿:これ見たことある。好きだなあ。動物使ってるのに全くかわいくないのがいいですねー。
「赤城乳業 ドルチェTime」CM動画 http://youtu.be/94bmWDdVnco |
しりあがり寿:これはどうやって撮ってるんですか?
古川:全部実写です。これは90年代のCMみたいな、子どもでも分かるような単純なことをしたかったんです。
「宣伝会議 コピーライター養成講座」CM動画 http://youtu.be/7leSen1cKOk |
しりあがり寿:これ 東京じゃ厳しいだろうなあ(笑)。子どもが泣くってクレーム入っただろうなあ。
古川:大阪でも厳しかったかも(笑)。
しりあがり寿:絵を描いたのは?
古川:よく一緒にやってる、電通の藤井亮くんという奇才ADです。
しりあがり寿:CGを愚弄しているようだね。
「梅の花」CM動画 http://www.umenohana.co.jp/n_top/tvcm.html |
しりあがり寿:昭和歌謡好きでしょ?
古川:ええ。
しりあがり寿:すぐ分かるなあ。
古川:自分でもびっくりしましたけど、まさかのACCのグランプリを頂きました…。
しりあがり寿:すごいねえー!
「KINCHO サンポール」http://www.kincho.co.jp/cm/html/sanpoll_sayonara/index.html#/movie1/ |
古川:最後はこれだけ見てもらおうかなー。長いんですけど。
しりあがり寿:絵はさっきの?
古川:そうです藤井亮くんです。
日下:これは今年のTCC賞ですね。惜しくも2位。
古川:意外でした、こういうのも拾ってくれるんやな~って。ほんとうれしかったです。
しりあがり寿:なんだ、これサンポールのCMなんだ(笑)。
日下:あとプライベートでマンガ描いてましたよね?
古川:嫁さんと一緒にネタを考えて『すかしっぺ夫婦のかきなぐり漫画』というのを。絵を描いてるのは嫁さんの方です。
日下:文化庁メディア芸術祭(平成20年度)でも賞を取ってますよね。
古川:マンガ部門で審査員選考作品みたいな…? その時、審査員にしりあがりさんもいてはりました。
しりあがり寿:えー、どんなんだっけ?
古川:A4の紙に鉛筆で漫画かきなぐった四コマを、どばーっと300枚くらい重ねてでっかいクリップでとじてあるだけの…。
しりあがり寿:あれか!あれは珍しかった!
日下:CMを何本か見ましたが、しりあがりさんはトイレに行ってないですね。
古川:…全くね。
しりあがり寿:いやいやずっと行きたかったんだよ(笑)。いいもの見ちゃったなあ。ちょっと行ってくるよ。
(トイレから帰ってきたしりあがりさん)
しりあがり寿:こう言っちゃあなんだけどね 僕と似てるかもしれない。
古川:えーーーーうれしいです…!
しりあがり寿:CMとして売れる売れないというのは分からないけど、純粋に作品として面白い。
日下:でも宣伝部の担当だったとしたら。
しりあがり寿:そうだねえ。ちょっとねえ(笑)。
古川:そこいちばん大事なとこじゃないですか!
日下:似てるというところは、どういうところですか?
しりあがり寿:珍しいところ。ズラしてるところ。ただ欲を言うと、仕掛けがシンプルなんだけど、そのうちそれに飽きると思う。その時どうするか? みたいな。僕は迷子になりました(笑)。
古川:今は、ちょっと何かをズラすのが精いっぱいかもしれません。
しりあがり寿:ただそれを越えなければならない時もある。でも古川さんは、もっともっと先に行きますよ。仕事とか関係なく遊びでなんか一緒にできたらいいねー。
古川:そうですね!ぜひお願いします! なんかおもろいことをしたい。原動力はこれですよね。
しりあがり寿:そうそう、マンガもそう。描いてる時にこれ絶対みんな笑うよねって思って描いてる時が一番楽しい。どうすんのこれ、みたいなの作りたいね。
古川:誰も対処の仕方が分からないもの、作ってみたいですねー。
しりあがり寿:なんか見たことのないイスの広告とか作りたいよ。
日下:なんすか、それ。
しりあがり寿:逆さまに置いてみたり。
古川:ラッシャー木村がそのイスを振り上げて下ろすだけのCM。
しりあがり寿:それと振り上げなかったイスもついてきて、合わせて3000円とか。
古川:ちょっとトイレ行ってきます。
いかがでしたでしょうか、今回の対談。現場は終始なごやかな雰囲気であっという間の4時間でした。まだまだ話したいことはたくさんあって、店員さんに追い出されなければ、あと2時間は話していたことでしょう。終わってしまうのがちょっと悲しかったですね。しりあがりさんも超ご機嫌で帰っていきました。次もまた面白い記事をお送りできるようがんばります。でも4時間も対談はしないぞ! ではまた、今後ともカンクリ通信をごひいきに。あ、関クリのお仕事もお待ちしております!(日下慶太)
カンクリ通信スタッフ
アドバイザー:山本良二(電通関西支社 クリエーティブプランニング局 エグゼクティブクリエーティブディレクター)
リーダー:日下慶太(電通関西支社 クリエーティブプランニング局 コピーライター)
スタッフ:大槻祐里(電通関西支社 クリエーティブプランニング局 コピーライター)
河野愛(電通関西支社 クリエーティブプランニング局 アートディレクター)
小堀友樹(電通関西支社 マーケティングデザイン局 コピーライター)
協力:津秋武稔(アットアームズ)、黒田恭修(さるやまハゲの助)