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カンクリ通信No.3

商店街ポスター座談会【前編】

2015/01/07

久しぶりのカンクリ通信。今回は「商店街ポスター展」をテーマにお送りします。このプロジェクトは、関西支社の若手クリエーターたちが商店街で取材を重ねて各店舗のポスターを作り、まちおこしを図るというものです。第1回は新世界市場(大阪市浪速区)、第2回は文の里商店街(大阪市阿倍野区)、第3回は伊丹西台地区(兵庫県伊丹市)でまさに今開催中です。関西だけでなく全国のテレビ局で放送されたり、様々なメディアに取り上げられ、注目を浴びています。

伊丹西台ポスター展2014

きっかけ

そもそもこのプロジェクトのはじまりは、ぼくがプライベートで商店街のまちおこしに携わっていたことがきっかけでした。商店街全体をアホで奇妙な作品やパフォーマンスで埋め尽くす「セルフ祭」というのを友達とやっていていました。そのとき「それぞれのお店のポスター作ったらお店のためになるんちゃうの!」「若手がポスター作ったら勉強になるんちゃうの!」と思ったのがきっかけです。そこからコピーライター(C)とアートディレクター(AD)が2人1組になって商店街各店舗のポスターを制作する、「商店街ポスター展」という電通関西支社独自の研修プログラムができあがりました。ぼくは様々な場所でこの試みについて書いたり、講演したりしてきましたが、参加者の声を聞く場はありませんでした。で、今回は参加者に集まってもらい、座談会をしてみました。当の本人たちはどう思っていたのか?制作者たちの声と作品をぜひご覧ください。(日下慶太)

最初に声をかけられて

日下:はじめに声をかけられた時にどう思った?

松下:うわぁ、なんかメンドくさそうって思いました。とはいえ、日常の業務のグラフィック作業が減ってたから、ポスター作れるのはちょっと魅力的でもありましたね。自分のやりたいことができる場なら楽しいかなって。

瀧上:ぼくも最初は、めんどそうなモンに声かけられてもうた、って思いました。でもぼくはまだ入社して間もないADなので、B2サイズのポスターを作ったこともなかったので、やってみたいなって気持ちの方が強かったですね。実際にやってみたら自分で手を動かせたのが新鮮で。楽しかったし、参加してよかったです。まぁ、後から振り返ればこそ言えることですけど。

お茶の大北軒ポスター「しばくぞ。」 お茶の大北軒ポスター「おっ茶ん。」
C:松下康祐 AD:瀧上陽一 P:瀧上陽一

 

松下:瀧上、俺とペアでつくってる時、ぜんぜん楽しそうちゃうかったもんな(笑)。

中尾:私は、この作業ってADばっかり時間とられるイメージがあって。コピーライターのやりたいコピーのためにADが手を動かさなきゃいけないんじゃないの?って。だから、トコトン自分がやりたいことしかやらない!って最初に決めてました。

小堀:僕は面白いポスター作って、必ずかたちに残せるものができるのはいいなぁと思いました。自由に考えていいよっていうのは公募の賞と同じですけど、公募の賞だとどんなにおもしろいもんつくっても、入賞しないと世間の目に触れることはない。

普段の仕事との違い

日下:普段の仕事との違いってどんなところで感じた?

 

松下:何から何まで、全部自由です。ってめっちゃ大変なんですよ。何もないトコから、ゼロから企画せんとあかんでしょ。そもそも、普段はプロダクションにお願いしているような作業を、社内のコピーライターとADとで完結させなあかんのがポスター展。だから、ADの技術だけに頼るとなると、実際につくれる表現に制限があるんですよ。ADによって、合成ができる、できないとか、技術にバラつきがあるんで。組んだADが、これができない、あれもできない、となるとできる技術の中でおもしろく成立する企画を考えなあかん。だから、けっこう誰と組むかでも運命変わってきますよ。

中尾:普段はプレゼンのために、いったんカンプ(仕上がりイメージの見本)を作って、それで案を通さないといけないじゃないですか。だから、カンプが作れないような企画はそもそも提案できなくて、これができたらいいのになぁ、と思いながらも提案を諦めることもあるんです。でも、これは店主に納品するまでプレゼンもなしだから、実際作ってみないとどんなふうに仕上がるのか、やってみないと分からないような企画にも挑戦できるのがいいです。

C:山口有紀 AD:中尾香那 P:西谷圭介
C:山口有紀 AD:中尾香那

 

 

小堀:自分たちで声をかけあって組んでいるペアなので、仲のいい2人だけで企画考えてると、だんだんノリがおかしくなってきて、暴走したりするんですよ。普段の作業みたいに、それはアカンぞ、やりすぎやぞ、って止めてくれる人が誰もいないんですよね。

良くも悪くも2人で考えて、決定もしていかないとあかん責任感って、重たいですよね。だからこそ、完成したものを店主に渡しに行く瞬間はめっちゃ緊張します。怒られへんかな…気に入ってもらえるかな…やりすぎてもうたかな…って。公募の賞は、入賞したモンだけが世の中に発表されるけど、これは滑ってもそのまま公開されて、他のおもしろい作品と一緒にさらされてしまうから怖いです。

 
魚心ポスター「店主がイチバン、大物や。」 魚心ポスター「店主がイチバン、ぴっちぴち。」

C:小堀友樹 AD:茗荷恭平 字:嶋坂めぃみ

 

中尾:分かる!私もポスター見た人に「なんや、中尾の技術ってしょせんこんなモンか」ってガッカリされるんじゃないかなって怖いです。自分はコレでいい!と思ってても、世の中の反応って全然違う時もあるから、本当に緊張しますよね。

瀧上:ポスター展の反応見てると、一般の生活者と、この業界の人とで、同じポスター見ても反応って全く違うんやなぁってのも気付きますよね。意外なところが話題になってたり。あ、そこ?みたいなところで反応があったり。広告賞でウケそうなものだと、案外世間の反応は悪かったり。

日下:一般の人って、タグライン読んでへんよな。

松下:タグラインを読んでないというかね、ポスター展のターゲットは高齢者が多いじゃないですか。タグラインを読まないんじゃなくて、読めない文字は読まない。小さい文字は読まない。だから、文字はすべて大きくするように気をつけてました。あと、見た目が分かりやすくて面白いってのは大事ですよ。頭使わずに、ひと目でオモロイもん。となると、ひねりすぎずに、ある意味浅いポスターがいいんちゃうかなぁ。俺らとか、広告業界の人みたいに、「見るぞ!」と意気込んで見てくれる人ばかりじゃないからね。

いいムネあります。
C:藤原乙女 AD:烏野亮一 P:島根昌道 モデル:新良エツ子

 

元祖漬もんやポスター「切り口に、大量の塩を塗り込んでやった。」
C:上野由加里 AD:西尾咲奈 P:西尾咲奈

後編へ続く