広告界に新たな潮流をもたらす
バーチャルリアリティー
2014/08/21
広告界に次の潮流をもたらすと期待されているのが、バーチャルリアリティー(仮想現実・VR)だ。
アドエージ誌によると、コカ・コーラは6月の2014FIFAワールドカップブラジル大会期間中、決勝戦が行われたマラカナンスタジアムを疑似体験できるVRコーナーを提供。選手のロッカールームを模したブースに入りゴーグルを装着すると、ピッチへ出てフィールドに立つ仮想現実を味わえた。
米ケーブル大手のHBOは、テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のプロモーションで、90秒のVR体験を用意。格子に囲われた箱のような空間にゴーグルを装着して入ると、700フィートの氷壁をエレベーターで昇るスリルを体感できる(写真はドラマのシーン)。オスロやベルファストなど世界を巡業中だ。
日産自動車は昨年11月の東京モーターショーと1月の北米国際オートショーで、コンセプトカー「IDx」を自分好みにカスタマイズできるVRコーナーを設置した。
3Dゴーグル端末などVR技術開発の先頭に立つのは、コカ・コーラや日産にも採用された米オキュラスリフト。3月にフェイスブックによる20億ドルの高額買収で話題になった。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはVR分野に関する具体的な計画を明らかにしていないが、「オキュラスの技術をソーシャル分野で活用したい」と語っており、「可能な限り低価格」の市販モデルの開発を希望しているという。
一方、ソニーやサムスンもVRゴーグルの市販モデルを計画している。市場調査会社マーケッツ・アンド・マーケッツは、VRおよび関連端末市場は18年までに10億6000万ドル規模に成長すると予測している。
「VR応用部門」を新設した市場調査会社リーバーマン・リサーチ・ワールドワイドのデービッド・サックマンCEOは「VRは無意識や感覚に働き掛ける技術」と期待を見せる。フォードの高級車リンカーンのブランド強化のためにVR素材を制作したビデオ監督クリス・ミルク氏は「新しい媒体の創生期にありがちな過ちは、従来の媒体の使い方を引きずること。VRは心身の感覚に直接作用する全く新しいプラットフォームだ」と語った。