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【セミナーレポート】新たな生活者セグメント分析をビデオリサーチが提唱

2014/12/10

      11月26日にビデオリサーチが都内で開催した「VR SOLUTION SEMINAR コミュニケーション・カオス ~氾濫する情報から生活者は何を選ぶのか?~」では、大量の情報があふれる現代における生活者の行動について、研究発表やパネルディスカッションが行われた。

      誰にも考え方のクセがある。カオス化する世界を読み解くための新しい生活者分類

      同社の生活者インテリジェンス部の緒方直美氏は「コミュニケーション・カオスを読み解く ~シンプル・シンキング、ロジカル・アプローチ~」と題する講演で、独自の研究成果から分析した生活者の情報取得、購買など選択志向のパターン分類について紹介した。

      ビデオリサーチ 緒方氏
      ビデオリサーチ・緒方氏

      ライフスタイルが多様化する生活者、情報量が爆発するメディア、そして細分化し多様化している商品。緒方氏はこうした現代社会を「カオス化している」と表現。

      カオス化した世界では、生活者は無意識に情報の取捨選択をしているという。生活者は溢れる情報に対して「マインド・バリア」を張って情報をシャットアウトする一方で、特定の情報はバリアを通過させメッセージを受け取っている。ビデオリサーチでは、バリアを通過する穴を「マインド・ホール」と名づけた。このマインド・ホールは生活者によって異なるが、生活者にはそれぞれ「考え方のクセ」があり、それに基づいて行動する傾向があるという。

      ビデオリサーチでは、生活者の情報入手(=刺激)、購買などの選択(=反応)の傾向に着目し定量的に分析、さらにグループインタビューを行い、考え方のクセによる6つのタイプ分類を行った。この分類はカテゴリによらず適用でき、「カオス化した現代をシンプルに考えるための手法」と緒方氏は語る。

      調査結果によると、情報はまず自発的な発信者から他発的な層に流通する。そして選択も同様に、自発から他発に向かうという流れが短期間の中で発生するという。それに基づき、生活者の情報発信の傾向(「自発的」/「他発的」)、購買選択時に重視するポイント(「イメージ」/「機能」)という2つの軸で、生活者の考え方のクセを「情報×選択セグメント」として分類。すると生活者は以下の6つにカテゴライズされる。

      ●トレンドフリーク:自発的な情報発信、イメージを重視。
      ●雑学ロジカル:自発的な情報発信、機能や情報を重視。
      ●スマート目利き:情報収集、発信に積極的だが、購買へのハードルが高い。
      ●コミュニティ同調:世の中の評判が選択基準 ・堅実ストイック:失敗をしたくない慎重派
      ●ナチュラル低関与:情報感度が低く、えり好みはしない。

      ひとセグ分析チャート

      緒方氏は、生活者を「情報×選択セグメント」で分類できれば、生活者のマインド・バリアを通過しやすいメディアやメッセージが分かるという。例えば、情報のインプットとしてトレンドフリークには雑誌、ナチュラル低関与には店頭がマッチする、伝え方のキーワードとして、トレンドフリークには「新発売」、コミュニティ同調、堅実ストイックには「売上No.1」といった具合だ。

      例として、昨年流行した「ノンフライヤー」のコミュニケーションが紹介された。発売に合わせて日本上陸のテレビCMを放送、ウェブでは詳細な機能説明、店舗での特別展示での訴求、発売後のテレビCMでは大ヒットを伝え、また屋台で実演試食をするというように、時系列でさまざまな手法のプロモーションによって、全ての「情報×選択セグメント」に対して訴えるロジカル・アプローチを実現したことが大ヒットにつながったと緒方氏は分析する。

      「情報×選択セグメント」による分類は、18問の設問で可能だという。当日は、ブースでセミナー参加者が自分のタイプを判定できるようになっていた。今後ビデオリサーチ社では、顧客をシンプルに分類し、結果を踏まえたロジカル・アプローチによるマーケティングソリューションを提供していく予定だ。

      この講演の後に、「コミュニケーション・カオスを切り拓く ~生活者とのよりよい絆づくりのために~」と題したセッションが行われた。メーカーとしてパナソニックの楳谷秀喜氏、雑誌メディアとして集英社の田中恵氏、テレビメディアとして日本テレビ放送網の福士睦氏、研究者として慶応義塾大大学院の山本晶氏、モデレーターとしてビデオリサーチの加治佐康代氏が登壇した。それぞれの立場から、コミュニケーション・カオス時代での新しい取り組みを発表した。

      日本テレビの福士氏は、テレビ視聴の「習慣化」を目指して視聴者が自分の嗜好に合った番組がいつ放送されているのか把握することを助ける取り組み、コンテンツの多様化を目指しながら番組それぞれ1行でコンセプトが言えるような分かりやすい番組作りを紹介した。

      集英社の田中氏は、雑誌が付録メーンの時代から変わりつつあることを述べ、新しい取り組みとして、付録のあり・なし、雑誌のサイズなど、1雑誌のバリエーションを豊富にして生活者に選択する楽しみを感じてもらう取り組みを紹介した。さらに同社では、雑誌、ウェブ、ソーシャルメディア一括で編集部がコンテンツ作成をして、クオリティーの高いコンテンツ提供を目指す戦略を実験しているという。

      パナソニックの楳谷氏は、生活者を徹底的に調査し要望をくみ取って開発した商品シリーズである「Jコンセプト」を紹介した。商品開発では、特に50~60代の生活経験豊かでこだわりのある層を「目利き世代」としてターゲットにしたことを明かす。加えて、美容家電では、20代の女性をターゲットにSNSを使ったキャンペーンやインフルエンサーを活用したマーケティングを実施していることに言及した。

      これらを受けて、慶応大学院の山本氏は、これまでの研究成果として情報伝達の肝になるキーパーソンの存在、分類などを発表。さらにマーケティングでは身近な存在からの発信は受け手の共感フィルターを通るため、メッセージが伝わりやすくなることを述べ、事例を踏まえて紹介した。

      ディスカッションの中では、ビデオリサーチが提唱する新しい生活者分類のマーケティング活用や、それらを意識した上での真摯なコンテンツ作りの重要性などが議論された。

      会場に用意されたセグメント分析の体験コーナー(左)とパネルディスカッションの様子
      会場に用意されたセグメント分析の体験コーナー(左)とパネルディスカッションの様子