日本のことが好きな国は増えている?~“日本ファン”を探る~
外国人観光客が増え続けている日本。今や街中でも、さまざまな言語が飛び交っているのを耳にします。
しかし、この状況をビジネスチャンスにするためには、「観光客は日本の何に惹かれ、訪日しているのか」「Made ㏌ JAPANは海外からどう評価されているのか」を知ることが重要です。
電通では2018年12月に20カ国・地域で「ジャパンブランド調査2019」を実施しました。本連載では、これまでの日本と今の日本をデータで比較しながら、インバウンドビジネスや海外におけるビジネス展開のヒントとなる調査結果を紹介していきます。
第1回は、「日本への好意」について少し深掘りしてみたいと思います。
ジャパンブランド調査の最新記事(2025年度)はこちら:広がる・深まるジャパンブランドの世界
日本のことが好きな国・地域、第1位は「台湾」と「タイ」
「ジャパンブランド調査2019年」では、日本への好意度は「台湾」と「タイ」が98.3%(とても好き+好きの合計スコア)で同率1位。昨年1位だった「ベトナム」が僅差で3位、次に「マレーシア」と「フィリピン」が同率4位、という結果となりました。
1位から9位までの国・地域のスコアが90%台、今回新たに調査対象国となった「トルコ」でも88.0%という好スコアで、今年も非常に良い結果となりました。ランキングで見るとASEANの国・地域が上位にランクインしていますが、これはここ数年変わらない傾向です。
3年前の2016年と比較してみると、もともと好意度が高かった「台湾」が6ポイント以上スコアを上げてトップに。その他、アジアでは全体的にスコアが上っている国が多い印象です。
また順位は低いですが「イギリス」(2016年:63.5%/18位→2019年:71.0%/15位)、「ドイツ」(2016年:58.0%/19位→2019年:64.0%/19位)ではスコアが大きく上がっており、欧州エリアでも日本への好意が高まっていることが感じられます。
日本が好きなのはどんな人?なぜ増えている?
「日本がとても好き」と答えた人の性年代の傾向を見てみると、「男性」「20~30代」が多い傾向にあります。
北米エリアでは特にその傾向が顕著に出ており、北米で「日本がとても好き」と答えた人の64.5%が20~30代、男女比では男性が64.5%を占めています。
では日本を好きな人は、日本の何に惹かれているのでしょうか。「日本がとても好き」という人が最も関心を持っている日本の物事は、全体の傾向と同じく「日本食」で、61.7%と高いスコアになっています(全体+7.6pt)。
その他の項目を見てみると「日本の四季」(全体+11.1pt)、「日本の祭り」(全体+10.4pt)といった旅行関連、「日本のファッション」(全体+13.3pt)、「日本のデザイン」(全体+9.7pt)といった現代文化関連や、「日本の映画」(全体+9.1pt)といったコンテンツ関連の項目が高くなっています。
男性若年層が多いという年代的な傾向もあってか、日本の伝統的な文化だけではなく、食や現代文化に惹かれている人が多いことが特徴的です。
特に3年前から大きく好意が高まったイギリスでは、興味関心のある物事として「日本のファッション」(2016年:20.0%→2019年:27.0%)、「日本のデザイン」(2016年:19.5%→2019年:26.3%)がスコアを伸ばしています。ドイツでも技術関連の他、「日本産の食材」(2016年:11.5%→2019年:19.3%)、「日本のファッション」(2016年:13.0%→2019年:20.0%)がスコアを伸ばしています。
食を含むさまざまな日本文化が海外で知られるようになったことで、特に若年層を中心に日本への好意が高まっているのではないか、ということが推察されます。
日本が好きな人は、日本にどんな影響を与える?
最後に「日本が好き」と回答した、いわば日本ファン(全体の81.9%)が日本にどういう関わり方をしているのかを見ていきましょう。
今回の調査では、プライベートで訪日経験があると答えた人は31.3%でしたが、「日本がとても好き」と答えた人に限定すると43.6%が訪日経験アリでした。また、この「日本がとても好き」な層のうち30%はプライベート訪問経験が複数回ある、リピーターです。
他方で、日本製品を使ったことがある、という人も多く、例えば「日本がとても好き」な人たちの61.6%が日本のブランドの自動車やバイクを使ったことがある、と回答しています(全体では49.5%)。
日本食についても全体的にスコアが高く、特に「果物」(全体+9.9pt)、「緑茶・抹茶」(全体+8.5pt)、「魚介類」(全体+8.3pt)といったカテゴリーで購入・飲食経験が高くなっています。
調査結果からは、日本の食やコンテンツ、現代文化から日本を知り、日本を好きになった人たち(=日本ファン)が、日本へ足を運び、日本のものを購入してくれる優良な顧客になっていることが見てとれました。
こうした「日本ファン」をターゲットにしたマーケティングが非常に有効であると感じます。
特に、まだ「日本」への関心が低い欧州や北米で物やサービスを売る時、日本ファンたちは心強い味方になってくれるのではないでしょうか。
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp
ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/
【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。
【電通ジャパンブランド調査2019 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域(中国本土、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ)
・サンプル数:6,600(内訳:アメリカ 600、中国本土 600、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2018年12月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)
【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR、トルコ/TR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。
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著者

中里 桂
株式会社電通
第4マーケティング局
コミュニケーション・ディレクター
入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。

