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データから読み解く訪日中国人旅行者のリアル2025No.1

中国人海外旅行の現在地 回復する市場と旅行ニーズの変化

2025/06/27

データから読み解く訪日中国人旅行者のリアル

訪日中国人旅行者に対するインバウンドマーケティングでの成功をつかむには、彼らが日常的に接するメディアやプラットフォームを深く理解し、的確に活用することが不可欠です。

本連載では、電通が提携関係にある中国最大手のオンライン旅行代理店「Ctrip(シートリップ)」や大手SNS「小紅書(シャオホンシュー、英語名“rednote”)」など、中国人が旅行時に利用する主要オンラインプラットフォームからの提供データ、さらには、電通が独自に実施したオンライン調査データや電通中国が保有する独自のデータをフル活用して、インサイトを深堀りし、訪日中国人旅行者の実像に迫ります。

第1回は、2024年の中国人の海外旅行に関する動向を中国政府などの公開データなどから振り返ります。中国における海外旅行者の規模や主な旅行先、デモグラフィック特性を中心に据えて、中国の旅行者は、どのようなことを求めて、どのような時期に海外旅行に行くのか、などといった、日本が旅行先として選ばれるにあたっての基礎的な情報を整理します。

 

コロナ禍後の中国人海外旅行市場は急速に回復

2023年の中国人海外旅行者数は8700万人を超え、コロナ前の19年と比べて60%まで回復しました。

中国観光研究院「中国アウトバウンド観光発展報告書(2023-2024年)」
中国観光研究院「中国アウトバウンド観光発展報告書(2023-2024年)」

さらに、24年上期には6071万人に達し、前年同期比50.4%増加し、19年の74.7%まで回復しています。また、その旅行消費額は1240億ドル(約19兆円)と、中国経済の懸念に関する報道がある一方で、中国人の海外旅行熱には再び力強い勢いが見られます。

Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、24年上期の中国からの訪日客数は約307.2万人となっていますので、中国人海外旅行者のうち約5%が日本を訪問していると推定されます。また、24年の訪日旅行消費額が約8兆円でしたが、中国人海外旅行者の消費金額は上期だけで19兆円でしたので、その潜在的な消費力を感じ取っていただけると思います。


コロナ禍後の中国人の海外旅行ニーズの変化:旅行の質をより重視

23年以降、海外旅行の需要は継続して拡大しており、国際定期便の回復、中国政府の政策や利便性の向上によって、海外旅行の回復ペースが加速しています。

訪問先の上位10カ国・地域は、香港・日本・マカオ・韓国・台湾・イギリス・フランス・ドイツの順となっており、コロナ禍前と同じように、中国から近い東アジア地域への旅行は人気が高い状態です。

新しい傾向としては、中国政府が主導する「一帯一路」構想による国際交流と協力もあり、トルコ・アラブ首長国連邦(UAE)・エジプトなどの国々への旅行も増加してきており、中国人の海外旅行の旅行先の選択肢は多様化してきています。

出典:中国観光研究院「中国海外旅行観光発展報告書(2023-2024年)」
出典:中国観光研究院「中国海外旅行観光発展報告書(2023-2024年)」

また、中国人海外旅行者の旅行に対するニーズは常に変化しており、その消費習慣も変化しています。中国人海外旅行者は今、「旅行の質をより重視」し、「体験重視のオリジナルでカスタマイズされた旅行」を望み、「個性的で質が高く、体験に重きを置いたサービス」に出費を惜しまなくなってきています。

旅行ニーズの変化の例

海外旅行をする世代のボリュームゾーンの変化:中国人海外旅行者の半数以上が若い世代に

中国人海外旅行者は若い世代が中心層になりつつあります。1990年代と2000年代以降生まれ(20代から30代)が中国人海外旅行者全体の半数以上を占めるようになってきており、若者の海外旅行意欲は他の年齢層よりかなり高くなってきています。

出典:Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」
出典:Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」

中高年の親は、自分たちの子どもに海外旅行の計画を委ねるようにもなってきています。24年上期の調査では、その割合は42.8%に達し、1年前の27.3%から急激に増加しています。若年層が海外旅行先や、訪問先での行動の意思決定に与える影響はますます大きくなっているといえます。

出典:Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」
出典:Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」


重要な意思決定のデジタルチャネル:「SNS」「オンライン旅行サイト」「検索サイト」

海外旅行のインスピレーションを得るデジタルチャネルとして最も影響力のあるものは「SNS」です。続いて、Ctripなどの「オンライン旅行代理店プラットフォーム(OTA)」、「検索サイト」となります。

「SNS」で利用される主要プラットフォームは「抖音(Douyin、中国版TikTok)」、「小紅書(rednote)」と「微信(WeChat)」であり、これら3つのプラットフォームの利用率が5割を超えています。

こうしたSNSチャネルでの公式アカウントやKOL(Key Opinion Leader、インフルエンサーのこと)を通した情報発信と広告プロモーションの連携は重要な施策となっています。

出典:Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」
出典:Fastdata「2024年中国アウトバウンド観光産業発展動向報告書」

中国人海外旅行のタイミング:「夏休み」が最もピークとなる時期

中国国家移民管理局の統計によると、「夏休み期間(7月〜8月)」が出入国の一番大きなピークシーズンとなっています。「国慶節(10月)」「春節(1〜2月)」「労働節(5月)」の連休がそれに続きます。春節や国慶節という大型連休が、訪日中国人旅行者のプロモーションのタイミングとして注目されがちですが、家族での海外旅行を考えると夏休みが最も適切なタイミングであり、この夏休みの期間前・期間中のプロモーション活動は無視できないといえます。そういった意味では、連休に向けた短期的な施策だけではなく、中長期的な施策を織り交ぜたプロモーション設計が重要になっています。

出典:中国出入国管理局「统计数据」
出典:中国国家移民管理局「统计数据」
 
参照データ:
・    《中国出境旅游发展报告(2023-2024)》在线发布 - www.cottm.cn
・    2024年中国出境游行业发展趋势报告_澎湃号·湃客_澎湃新闻-The Paper
・    统计数据_国家移民管理局
 

次回は、Ctripからの提供データや電通が独自に実施した訪日中国人オンライン調査を踏まえた、訪日中国人旅行者の旅行目的や購買傾向、消費パターンなど、ビジネスに活用できる重要なポイントを明らかにします。


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