訪日中国人旅行者の実像② プロファイリングから読み解く
2025/07/11

データをフル活用して、インサイトを深堀りし、訪日中国人旅行者の実像に迫る本連載。前回は、電通が中国最大手のオンライン旅行代理店「Ctrip(シートリップ)」の協力を得て独自に実施した訪日中国人旅行者オンライン調査から得られた変化も踏まえ、旅行目的や購買傾向、消費パターンなど、ビジネスに活用できる重要なポイントを明らかにしました。
今回は、電通中国のデジタル・オーディエンス・データ・プラットフォーム「Merkury」による、訪日中国人旅行者の日常のデジタル行動の情報に基づいた0次分析を通じて、その特徴を深掘りしていきます。日頃からお問い合わせの多い、「旅行客のプロファイル」「旅行時期」「関心の高い人気の旅行先・検索キーワード」、そして「日常的に利用しているアプリの傾向」などについて分析しました。
◼️Merkuryについて
電通中国が運用する12億を超えるデバイスIDを保有するデジタル・オーディエンス・データ・プラットフォーム。そのデータを活用して、中国人旅行者の旅行前・旅行中・旅行後のインサイトや行動を分析し、効果的なカスタマージャーニーの策定、マーケティング戦略の立案、コミュニケーションの実行・実施をサポートしている。
訪日中国人旅行者のプロファイルのポイント
・ 訪日中国人旅行者セグメントに占める女性の割合が高い
・ 年齢層は31~50歳が中心で、居住地は大都市(中国の都市区分でいう、1級・新1級・2級都市)に集中しており、高所得・高学歴
・ その中でも、新1級都市の割合とTGI(Target Group Index)※は1級都市をはるかに上回っており、新1級都市の住民は日本旅行の潜在的なターゲット
※TGI(Target Group Index)とは:
Merkuryの全デバイスIDの平均を100とし、ターゲット層の含有率が平均に対してどれだけ上回っているか、下回っているかを示す指標。100より大きいほど、ターゲット含有率が高いことを示す。

※中国の都市区分:
中国では、都市を人口や経済レベルなどさまざまな観点から1級(北京・上海など)・新1級(青島・成都など)〜5級までの6つに分けられている。習慣的なものであり法律などで定められた正式な行政区分ではないが、一般的には中国の大手経済誌「第一財経」とその傘下のシンクタンクが発表する「都市魅力ランキング」が基準とされ、毎年少しずつ顔ぶれが変わる。
参考サイト;中国広播電視台「第一财经发布《2025新一线城市魅力排行榜》 ,刷新过往重新发现」
https://www.smg.cn/review/202505/0166469.html
旅行時期:夏休み(7〜8月)・国慶節(11月)・労働節(5月)が多くの人が旅行をする時期
2024年の主要な連休の海外旅行のタイミングの傾向を集計したところ、「夏休み」が最も多く、「11月の国慶節」「5月の労働節前後の連休」「春節」「クリスマス・新年」と続きます。
人気の旅行先
日本旅行に関連した検索キーワードの傾向をみると、東京を中心とした関東地方(横浜、川崎、鎌倉、千葉、日光)、大阪、京都、奈良に代表される関西地方、名古屋、北海道が日本旅行の主要人気旅行先となっています。
主要旅行時期ごとの傾向をみると、上位の旅行検索先として「東京・大阪・京都・北海道・高山」といった地域の関心が高くなっています。
主要旅行時期における旅行先検索ワード(地域名)
季節や時期によって、関心が高まる旅行先にも変化がみられます(例えば、松本や石川の関心がクリスマス・新年の期間に高まるといったことなど)。同じ場所を訪れる場合でも、その時期によって旅行者は異なる嗜好(しこう)と旅行ニーズを持っているので、それを踏まえた施策や対策が重要となってきます。
人気検索キーワード
訪日旅行者の検索キーワードは、旅行先の検索行動と比べると、時期による差異はあまりありませんでした。上位25の検索キーワードをみると、主に「①東京・大阪の商業地域」「②日本のローカルブランド」「③定番観光地や人気観光地」が中心となっています。
飲食関連キーワード:
日本のレストランチェーンである「牛角」は、最も検索された飲食関連キーワード。次に多く検索されている飲食関連キーワードは「松屋」。
ブランド関連キーワード:
「資生堂」「花王」「CPB(クレ・ド・ポー ボーテ)」はブランド関連キーワードで上位にランクされ、人気が高く、「Curel」「ライオン」「canmake」などがそれに続く。
旅行期間における違い:
クリスマス・新年期間中は、ブランド関連キーワードの検索数がより高くなる。クリスマス・年末年始の日本旅行はショッピング(プレゼント)への関心が高まる時期であることが想定される。
テーマパークのトレンド:
「ディズニーリゾート」や「USJ」が検索されており、「ディズニーリゾート」の検索数はどの時節でも上位にあがっている。
主要旅行時期における検索キーワード

興味・関心嗜好とメディアコンタクトポイント
日本を旅行中の中国人が、どのようなスマートフォンアプリを利用しているのかについて、Merkuryのデータをつかって分析をしたのが以下の図表です。

カテゴリーとしては、「SNS」「デリバリー・テイクアウト」「旅行」「学習ツール」関連のアプリ利用率が高く、旅行中の情報収集や旅行を便利なものとするツールが普段よりも積極的に利用されているということがわかります。
具体的には、小紅書(シャオホンシュー、英語名“rednote”)・微博(ウェイボー)・bilibili(ビリビリ)といったSNSアプリ、NetEase Cloud Music(ネットイース・クラウド・ミュージック)の音楽アプリ、Ctrip(シートリップ)などのオンライン旅行プラットフォームは訪日中国人旅行者の利用嗜好性が高いアプリになっています。
特に小紅書は、全体の50%以上が利用しており、訪日中国人旅行者セグメントにとって非常に重要なプラットフォームだといえます。旅行中のコンタクトポイントとして、こうした利用度の高いアプリ・プラットフォームを積極的に活用して、訪日中国人旅行者の認知・行動意思決定に影響を与えるようなアプローチが重要です。
訪日中国人旅行者の主要プロファイル
以上のMerkuryが持つデータを駆使して、訪日中国人の主要旅行者層を特徴的なグループ・ペルソナに分類し、それぞれのグループにおける特徴を掘り下げると、以下のような5つのグループが訪日中国人旅行者の主要プロファイルとして現れてきました。
グループ1:短期間で自由気ままに訪問する層
グループ2:とにかく日本での買い物を楽しむ層
グループ3:文化的で優雅な旅を楽しみたい層
グループ4:趣味や興味を満たすことを重視する層
グループ5:裕福でゆとりのあるシニア世代



例えば、グループ1の「短期間で自由気ままに訪問する層」の属性や意識をデータから読み解くと以下のようなことが推察されます。
・ 上海市や江蘇省、浙江省といった、日本から比較的近い距離の都市に住む人
・ 日本旅行は単なる観光地ではなく、地理的に近く、文化的な共感からの慣れ、親しみを持っている
・ 特に具体的な目的がなくても、思い立ったら週末など短期間でも訪問する場所になっている
また、SNSなどの投稿内容などのコンテンツからは、以下のようなキーワードに関連付けられる内容に関心があるグループです。
#庭 #週末旅行 #弾丸ツアー #数次ビザ #安い航空券 #夜行便
#エコノミーホテル #魚市場 #omakase #おみくじ #お守り
このようにそれぞれが特徴的なポイントを持ったプロファイルであり、多様化する訪日の目的やデモグラフィックに対応したコミュニケーション設計やメディア選定・キャンペーン展開が求められます。
電通は、このようなデータを駆使して、企業の商品やサービスに対して訪日中国人旅行者のターゲットセグメントを設定し、適切なコミュニケーションについて、メッセージとチャネルの両面からご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:dentsu-gbc@dentsu.co.jp
次回は、中国人の間で幅広く利用されている SNSプラットフォーム「小紅書」から電通に提供されたデータを用いて、訪日旅行者の興味・関心についてさらに深掘りしていきます。