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海外の人の多くは、日本に対して「勤勉な」「礼儀正しい」「上質な」といったイメージを持っているようです(ジャパンブランド調査2016から)。

大きな災害時に落ち着いて行動する人の様子や、新幹線のスピーディーな清掃サービスなど、拡散される日本の話題がますますそのイメージを強化していると思います。

「日本への好意度も高いし、イメージもいい。もしかして日本って、めっちゃいい国だと思われている?」と思ってしまいそうですが、本当にそうなのでしょうか?

2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。第2回は、多角的な視点から日本の印象について深掘りしてみました。

日本とダイバーシティー。「女性」「高齢者」「外国人」は活躍している?

近年、日本国内でダイバーシティーへの意識が高まり、さまざまな取り組みが進んでいますが、海外からはどう見えているのでしょうか?「女性」「高齢者」「外国人」という切り口で印象を聞いてみました。

まずは「女性」。世界経済フォーラム(World Economic Forum)が発表した、世界各国の男女格差の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数2018」では、調査対象149カ国のうち、日本は110位。主要7カ国では最下位です。

そんな日本が「女性が生きやすい・活躍している」国であると思っている人は、全体で55.4%でした。日本への好意度が高いASEANの国々では高スコアでしたが、日本のことをよく知っている東アジアエリア、特に好意や訪日経験の高い台湾では36.7%と非常に低い結果となりました。台湾の評価は、より実情を知っているがゆえの結果、といえるのではないでしょうか。

一方、高齢化が進んでいることも知られている日本ですが、「高齢者が生きやすい・活躍している」と思っている人は64.0%と、「女性」に関するイメージよりは高い結果。エリアで見るとASEANからの評価がやはり高く76.4%、次いで高いのは欧州で61.3%でした。同じく高齢化に悩まされている欧州からの評価が高いのは、世界で最も高齢化が進んでいる国として注目され、高い水準の医療を背景に、日本のシニアが元気に働いている姿を知っているからかもしれません。

最後に「外国人」。年々在留外国人の数は増えており、日本の総人口の約2%を占めるに至りましたが(2018年6月末時点)、「外国人が住みやすい・働きやすい」と思っている人は52.9%。「女性」よりもさらに低い結果となっています。

国で見ると最もスコアが低いのはドイツ(38.0%)で、エリアで見ると北米エリアで43.8%です。旅行先としては人気が高まっている日本ですが、住みたい国としてはまだまだ魅力的には映っていないようです。

日本の世界への影響力は?

6月末に大阪でG20サミットが開催されましたが、日本はどれくらい世界に影響力がある国だと思われているのでしょうか?

「日本が世界経済の発展に貢献している」と思っている人は73.9%と多く、特に日本が長年にわたって協力・支援しているASEANで85.5%と非常に高いスコアでした。

また「日本が好き」と答えた人が多いイタリア、ロシア、トルコの評価が高いこともあり、欧州エリアのスコアも74.1%と高くなっています。日本の経済分野における影響力に対しては、まだまだ評価や期待が高いことが伺えます。

では、ブームとなっている「食」も含めた文化的な影響力はどうでしょうか。

「日本文化は世界の人から愛されている」と思っている人は67.1%おり、特に今後を担う世代である20代・30代でスコアが高くなっています(20代:69.4%、30代:72.2%)。日本文化への注目が高まっていますが、今後ますます世界を席巻し、文化的な影響力が高まっていくことを予感させます。

日本の将来性・ポテンシャルは?

世界への影響力、の流れで、日本の将来性についての評価も少し見てみましょう。

まず経済的な成長性ですが「日本は今後も経済的に成長する」と感じている人は79.2%と多く、まだまだ期待値が高いことが分かります。

エリアで見てみると、ASEAN、欧州エリアのスコアが高く、それに比べて日本も位置する東アジアでの期待値が相対的に低い(61.6%)ことが分かりました。東アジアでは特に中国の存在感が大きい、ということでしょうか。そしてその成長性を語るのに欠かせない、日本の技術力に対する評価ですが、「日本の製品は優れている」は82.3%、「日本の技術力は高い」は86.5%と、こちらも非常に高いスコアとなっています。

 

近年、世界での人気が高い日本のコンテンツ力についても見てみましょう。

「日本のコンテンツは世界中の人が楽しめる」と思っている人は74.2%。ASEANはもちろん、北米エリアでも72.4%とスコアが高くなっています。

国で見ると特にタイで高く91.3%、約9割の人がそう感じている、という結果が出ています。

製品はもちろん、コンテンツにも期待が高まり、総じて日本の成長性についてはまだまだ期待が寄せられていることを感じます。

今回の調査を通して、ダイバーシティーの視点ではまだまだな印象の日本ですが、世界への影響力や、今後の成長性については評価が高く、世界から寄せられる期待の高さがうかがえました。

しかし、一番身近で、日本のことをよく知っている東アジアでは全体的に評価があまり高くない、という残念な傾向も見られました。

「勤勉な」「礼儀正しい」というイメージの日本ですが、訪日外国人が増え、日本の理解が進めば、そのイメージはどんどん変化していくのではないでしょうか。これからはますます「海外から見た日本」を意識することになりそうです。


【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp

ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/

【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。

【電通ジャパンブランド調査2019 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域(中国本土、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ)
・サンプル数:6,600(内訳:アメリカ 600、中国本土 600、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2018年12月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)

【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR、トルコ/TR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。

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著者

中里 桂

中里 桂

株式会社電通

第4マーケティング局

コミュニケーション・ディレクター

入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。

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