ジャパンブランド調査2019から考える、今の日本・これからの日本No.3
日本はどんな旅行先?~どこから来る?何をする?~
2019/09/13
2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回からは、過去と現在のデータを比較しながら、訪日観光客のこれからについて考えていきたいと思います。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2018年の年間訪日外国人数(訪日外客数:推計値)は、前年比8.7%増の約3119万1900人で、ついに3000万人の大台に乗りました。
2020年以降、ますます増えると予想されていますが、訪日観光客は、どこの国から、日本の何に引かれて来るのでしょうか。
「日本に行きたい」人が8割弱も!今後は欧州からの訪日が増える?
まず、2019年の訪日意向(日本に「1年以内に渡航する予定がある」と「日程は決まっていないが、いつか行きたいと思っている」の合計値)を見てみましょう。20カ国・地域全体では77.4%と非常に高い結果になりました。
2018年度と比較すると+1.4ポイントでほぼ横ばいですが、高いスコアを維持しています。国・地域で見ると、香港が最も高く98.3%。ほぼ全員が日本に行きたいと思っている、という結果でした。全体的にスコアが高いのはアジアの国・地域ですが、他のエリアでもイタリア(81.7%)、ロシア(73.3%)、トルコ(71.7%)など、「日本が好き」と回答した人が多い国(連載第1回参照)の訪日意向が高くなっています。
また、2018年度との比較では、フランス(+5.4pt)、ドイツ(+7.7pt)、イタリア(+10pt)、ロシア(+5.3pt)でスコアが上っており、欧州エリアからも観光客が増加することが期待されます。
聴取を開始した2012年の訪日意向は、全体で67.7%。調査対象エリアが変わっているので正確には比較できませんが、7年間で約10ポイントもスコアが伸びていることに驚きます。
国・地域別に比較すると、10ポイント以上スコアを伸ばしているのは、香港(+20.5pt)、タイ(+20pt)、アメリカ(+17.7pt)、イギリス(+11.5pt)、オーストラリア(+18.5pt)で、アジアだけではなく、欧米豪エリアの国々の訪日意向も大きく高まりました。
日本はアジア圏で人気No.1。競合相手はアメリカ、イタリア、オーストラリア?
では、世界の国々と比較すると、日本はどのくらい人気の旅行先なのでしょうか。日本を含め、観光客が多い国・地域を選択肢とし、「今後訪問したい国」を聞いたところ、20カ国・地域全体では日本がトップで48.6%。2位がアメリカ(38.9%)、3位がオーストラリア(37.9%)という結果になりました。
ただし、エリアごとに差があり、全ての国・地域で日本が1位というわけではありません。
アジアでは日本が1位になっている国・地域が多いですが、北米エリアではイタリアなど欧州の国々やオーストラリアが人気で、日本は8位でした。欧州エリアではアメリカがトップで日本は2位、オーストラリアではカナダがトップで日本はアメリカと並んで2位となっています。
北米、欧州、オーストラリアのエリアでも、「今後訪問したい国」としてアジア圏にある旅行先の中では日本がトップです。しかし、これらのエリアからの訪日経験はまだ少なく、競合する欧米豪の国々と比較すると、存在感があるとは言えません。
一方、訪日の阻害要因を聞いたところ、全体のトップは「旅行費用が高い」でした。
また、訪日意向が高まっているイギリス、フランス、ドイツでは、旅行費用の高さではなく「距離が遠い・行くのに時間がかかる」がトップ。長期休暇がとれる時期に、きっかけさえあれば訪日してくれるポテンシャルを感じます。
日本でしかできないことを提示し、「いかに旅行先候補としての存在感を高めていくか」が、今後の訪日客数を増やすカギになりそうです。
本場の日本食を求めて来日する人が多数。旅行スタイルは「モノ+コト」へ?
最後に、訪日観光客が何を求めて来日しているのかを見てみましょう。訪日意向がある人たちに「日本に来てやりたいこと」を聞いてみたところ、「日本食を食べる」が、ダントツトップに。2位の「自然・景勝地観光」とは、20ポイント以上も差がありました。
国・地域によって結果がやや異なりますが、「日本食」は全ての国・地域でトップになるほどの人気ぶり。世界的な日本食ブームが巻き起こっていますが、自国で日本食に触れた人が、本場の味を求めて日本にやってきている、ということでしょうか。
また、4年前の調査(2015年)では「日本でやりたいこと」のトップ5は「日本食を食べる」「自然・景勝地観光」「史跡・歴史的建造物観光」「温泉入浴」「四季の体感」でしたが、2019年は「日本食を食べる」「自然・景勝地観光」「温泉入浴」「ショッピング」「繁華街の街歩き」という結果になっています。
訪日観光客の旅行スタイルがモノからコトへ変わった、とよく言われるので、「ショッピング」は意外に感じるかもしれません。しかし、特に欧米から来る観光客の間では、着物や包丁など、日本の伝統や職人技が感じられるモノをお土産に買って帰る人も多い傾向があります。「ショッピング」は単純にモノではなく、文化体験(コト)も兼ねているのです。
今後はモノかコトか、ではなく、モノ+コトという旅行スタイルが主流になっていくのではないでしょうか。
また、今回の調査結果から、今後は欧米豪などより遠い国から観光客が集まってくることが予測されます。
これまで訪日客が少なかった国からも多くの人が訪れるようになり、かつ旅行スタイルも変化しているので、今後ますます多様なニーズが出てきて、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
次回は、訪日観光客の日本における旅行先について深掘りしたいと思います。
ジャパンブランド調査2019の概要
・目的:食や観光、日本産品など「ジャパンブランド」全般に関する海外消費者の意識と実態を把握する
・対象エリア:20カ国・地域
中国(グループA=北京、上海、広州、グループB=深圳、天津、重慶、蘇州、武漢、成都、杭州、大連、西安、青島)、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ(北東部・中西部・南部・西部)、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ
※今回は、過去の調査の推移で変化の少なかったブラジルを除外し、インバウンドで注目が高まるトルコを追加しました。
・調査手法:インターネット調査
・対象者条件:20~59歳の男女 *中間所得層以上
*「中間所得者層」の定義(収入条件):OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定
・サンプル数:中国はA・B300名ずつで計600名、アメリカは600名、それ以外の地域は各300名の計6,600名
・調査期間:2018年12月
・調査機関:株式会社ビデオリサーチ