電通総研が2015年を展望
キーワードは「進め、自分。」
2014/12/15
電通総研では、毎年この時期に話題・注目商品や消費マインドの調査などを通じて、トレンド分析を行っている。
今年は11月27日に、2014年を振り返る「消費者が選ぶ2014年の話題・注目商品ランキング」、そして2015年の動向を探る「消費者が選ぶ2015年の有望商品ランキング」を発表。2015年の消費キーワードは「進め、自分。~後戻りしたくない消費者~」とした。そこで今回は、ランキングの背景にある消費者の気分や今後の見通しについて、電通総研に取材し、解説する。
デジタルネイティブ世代の消費活発化に期待
アベノミクス景気で前向きな消費トレンドが強まった一方、消費税増税も実施され、攻めの消費と節約が交錯した“せめぎ合いの年”となった2014年。電通総研は時代の気分をこのように読み解き、「進め、自分。~後戻りしたくない消費者~」という2015年のキーワードを発表した。
特に注目したいのは、明るく元気なコンテンツやイベントなど、励ましや勇気づけのきっかけとなるものに消費行動を促す力のあることが分かってきたこと。
例えば気に入った映画は複数回見て各回の観客との一体感を楽しんだり、ハロウィーンなどのイベントに参加してコスプレを楽しみ、仲間と盛り上がって一体感を味わう。このように気分をポジティブにアゲてくれるためならお金は使う傾向にある。これらリアルの出来事はバーチャルなSNSで自分を演出するネタとしても使える。
従来のモノやコトの消費だけでなく、ソーシャルを通じたコミュニケーションも加わり、より手応えのある充実した体験の価値が高まっている。注意深く観察すると、ソーシャルでの発信や交流で励まし、勇気、新たな発見などが得られることならば消費をするし、逆に現実の消費で活性化しているものはソーシャルでの交流が活発となっている。
この他、大きな意味で自分の所属集団である「日本」への愛国マインドも高まる傾向がある。日本や和食、日本人の海外での活躍はもちろんだが、仮にスポーツなどで結果が伴わなくても温かい応援の輪が広がるケースは幾つもの例を挙げることができる。
現実の体験を重視する動きは、30歳代前半までのデジタルネイティブに顕著で、技術の進化に対するポジティブな評価の一因にもなっている。ここ数年電通総研では、バブル崩壊後に育ったデジタルネイティブは消費意欲が強く、実際に消費もしている点に着目すべきと提案している。
これからデジタルネイティブの若者は結婚や子育てなどを迎え、消費が活発化する。またこの層は他の世代に比べると有望なマーケットと捉えられてこなかった面があり、結果的に商品の選択肢が少なかった彼らや彼女らは、インターネットやソーシャルメディアで自分の欲しいものだけを探す。2014年にコンテンツマーケティングが注目された理由は、ネットを駆使して商品選びをするデジタルネイティブを核にして他の世代も取り込む必要に迫られているから、とも考えられる。
バブルを知らないデジタルネイティブがいよいよ社会の中心的存在になる時代が控えている2015年は、マーケティングやコミュニケーションでも大きな変革の年になるのかもしれない。
電通総研リポート
キーワード「進め、自分。」とは?
「進め、自分。」とは、前に進みたい自分を励ます自らの声であると同時に、それを後押ししてくれる商品・サービスから聞こえてくる応援の声でもある。ここにはデフレ時代のふさいだ気分に戻りたくない気持ちが強く表れている。
具体的には、映画やハロウィーンのコスプレなどの体験型消費で時間や空間を共有して前向きな気分になったり、日本人の海外での活躍を通じて、日本の底力を実感して前に進む勇気にするなど、応援の声を受け取ることが目的となる、新しい消費が始まっていると思われる。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会への期待も加わり、未来志向のポジティブ発想の動きは加速していくことが期待されている。
消費者が選ぶ |
消費者が選ぶ 1位 電気自動車(燃料電池車も含む) |
【四つの気分・社会トレンド】
1)アラウンド Me!
心の許せる仲間や家族と手の届く距離感でつながり、一体感を味わいたい。生活や消費に対する自信が回復し自己肯定感が高まった結果、地に足の着いた人々との絆づくりが見直される。
2)ハイブリッド・リアル
バーチャルな体験よりもリアルな体験を志向しているが、完全な現実ではなくバーチャルにサポートされたハイブリッドなリアル感覚を楽しんでいる。
3)日本からNIPPONへ
日本に対する愛国マインドがもう一歩前進。消費者は、日本に対する自信を回復するとともに、日本の良さを世界に対して発信したい“発信欲”を持つようになっている。
4)手に取れる未来
新技術・新サービスによって日常生活が前向きに変わっていくことへの期待感が高まっている。未来的な技術が生活を豊かにするイメージを現実的に描けるようになってきた。
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*詳細は電通ホームページに掲載しています。
www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1127-003883.html