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結局、ビッグデータは広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.4

カスタマージャーニーを支える「マーケティングオートメーション」

2015/03/24

前回の記事で「リードマネジメント」についてお話をしました。今回は、リードマネジメントを支えるクラウドサービスとして取り上げた「マーケティングオートメーション」(以下MA)ツールを詳しくご紹介していきます。
最近、「マーケティングオペレーションのオートメーション化」のトレンドが顕著になってきています。これは、ソーシャルメディアやDMPの台頭により、リアルタイムに生成されるデータを迅速に施策へフィードバックするには、これまでのように人手でデータを分析・解釈するオペレーションでは遅すぎるためです。

マーケティングオートメーション機能

MAツールといえば日本では、日本オラクル社が提供する「Eloqua」、Salesforce社が提供する「ExactTarget」、マルケト社が提供する「Marketo」などが有名です。これらツールに共通する機能概念には、「顧客データの一元化」と「シナリオ設計に基づいた施策のオートメーション化」があります。

顧客データの一元化
デジタル化で多様化する顧客接点において、顧客と約束したブランド体験の提供を実現するには、接点で収集された顧客情報を統合しユニーク(各顧客単位)に管理する必要があります。しかし、企業バリューチェーン上で得られる顧客情報は、企業内で統合されていないことが多々あります。

例えば、自社Eコマースサイト訪問・購入履歴とリアル店舗の来店・購入履歴を統合していない場合、Eコマース上での上顧客がリアル店舗に来店した際に、一見のお客様と同様のサービスを提供してしまい、顧客が期待する体験とのギャップが起こってしまうわけです。

CRM分野において、データ統合の必要性は昔から説かれていましたが、実際にはあまり進んでいません。これまで、高い精度で既存データベース間のデータ統合を行うには多額のコストがかかっていましたが、MAによるデータ統合であればクラウド上で必要な顧客情報のみを“適度”な精度で統合できるため、スピーディーかつ低コストでの実行が可能になります。

シナリオ設計に基づいた施策のオートメーション化
データ一元化により統合された顧客情報を分析・解釈し、シナリオ化された施策を実行するプロセスのオートメーション化を行います。施策としては、自社のEメールやウェブサイトバナー、ランディングページ、アプリなど、デジタルチャネル上でのメッセージ・コンテンツ配信が中心となります。MAツールによっては今後「LINE」などの既存コミュニケーションプラットフォームとの連携も可能となるようです。

これら複数チャネルを活用する顧客をユニーク化し、顧客のナーチャリングプロセスをMA上でシナリオとして表現・設定した上で、チャネル上での顧客反応に応じて、きめ細やかな分岐シナリオによる施策を自動的に展開していきます。

自動車販売店の場合のシナリオ設計
自動車販売店の場合のシナリオ設計

カスタマージャーニーを支える「マーケティングオートメーション」

さて、MAツールの一般的な機能をご紹介してきましたが、このMAツールの適用領域がどのように広がるかで、今後のMA市場規模が大きく変わります。過去、デジタル上だけの振る舞いを最適化するツールは、多々登場してきました。このMAツールも、機能としてはそれらと同様と感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、MAツールを「デジタルプロモーション最適化」ツールと決して限定せず、例えば「マーケティングプロセス最適化」ツールにまで適用領域を拡張することで、企業にとってのMA導入に対する予算や期間および適用部門の考え方が大きく変わってきます。

企業におけるマーケティングプロセス上の業務改善効果が高いのは、やはり「営業部門」など、リアルな顧客接点での業務効率改善なのです。そのようなこともあり、最近はBtoB企業の営業部門からご相談を受けることが多くなってきています。

また昨今の、カスタマージャーニーマップ作成が、サービス開発や顧客の体験設計に重要だという時流の中で、実際に作成したカスタマージャーニーマップを有効活用できていないケースが非常に多く見受けられます。広告会社がこれまで描いてきたマスマーケティング的な画一的なコンタクトポイントシナリオではなく、多様化する顧客接点や価値観・欲求に対応し、あらゆる顧客パターンのジャーニーシナリオを描く必要があります。(ゆえに施策パターンが複雑化し、カスタマージャーニーマップが机上の空論となることが多々ありました)

その全シナリオを施策実行まで落とし込む現実的な方法の一つに、先に述べたMAの「シナリオ設計機能」があると考えています。

そもそもカスタマージャーニーマップとは、生活者と企業との接点シーンに限定せず、接点と接点の間にある生活者の行動や気持ちを描き、再び出合うその時に最適な体験を提供するために設計します。よって、デジタル接点だけで収集された顧客情報では、顧客理解や最適な顧客体験の提供は不可能なのです。

ではリアルな接点での顧客情報の活用や体験提供までもを、MAのシナリオ設計に組み込むためにはどのようにすればよいのでしょうか。

例えば、前回ご紹介したようにMAをデジタルチャネルのみならず、営業やコールセンターのSFA(セールスフォースオートメーション:営業支援システム)など顧客管理ツールとリアルタイムに情報連携することが考えられます。つまり、デジタルチャネルで収集した顧客情報を活用して、リアルな接点での最適な体験提供を展開していけばよいのです。

しかし、接点間での顧客の行動を捉える事は、企業が収集する接点情報だけでは難しいかもしれません。その時は、例えば生活者に許諾を得た外部データ、例えばスマートフォンやアプリおよびセンサー搭載の腕時計などで収集されたバイタルデータ(所謂IoTデータ)や、アライアンス企業で収集された同一顧客の情報なども取り込むことで、接点と接点の間を埋める顧客理解に伴うシナリオ設計も可能になるのではないでしょうか。

 

筆者もMA導入および運用サポートをしていますが、(デジタルに閉じた範囲内だけでも)無限に広がるシナリオパターンを前にして、広告会社はまだまだMAを乗りこなせずにいると思います。ただMAツール自体を使いこなすスキルはもちろん必要ですが、それよりも広告会社に求められているのは顧客ナーチャリングのシナリオを描く仮説力です。

広告会社はカスタマージャーニーマップを描くためのフレームワークやノウハウ・人材を多様に有しています。MAのポテンシャルをより引き出せるような取り組みを、近いうちに記事でご紹介できるかもしれません。