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結局、ビッグデータは広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.2

ビッグデータがもたらす「4P」融合

2015/01/13

今回は、「マーケティングテクノロジー」の高度化により、マーケティングフレームワークとして有名な「4P」さえもが変化しつつあるという現状についてお話しします。

4Pとは(電通報をご覧になっている方には馴染みのフレームだと思いますが)、Product(製品・商品・サービス)、Price(価格)、Place(販売する場所、流通チャネル)、Promotion(広告宣伝・販売促進)の主要マーケティング戦略の頭文字をとったものです。同時に、「Product=製品開発・研究部門」「Price=マーケティング部門」「Place=営業部門」「Promotion=宣伝・広告部門」というように、戦略的に組織を設計している企業も多いのではないでしょうか。

前回、企業の「IT部門」と「マーケティング部門」の業務融合が急務であるがゆえの電通とITベンダー協業の必要性について書きましたが、今後は、4Pの各戦略部門間での業務融合も急務となっていきます。
次章では、4Pの融合について事例を紹介します。

4Pの平面融合

まずは「Place」と「Plomotion」の融合事例です。韓国の某大手ディスカウントストアが展開した「バーチャルストア」は、地下鉄駅構内に店舗の商品陳列を表現した巨大ポスターを設置し、各商品写真にQRコードをつけ、スマートフォンでQRコードを読み取ることで、地下鉄構内から商品を購入して自宅に配送できるというユニークな取り組みを行いました。この取り組みにより、オンラインストアでの売り上げが130%向上したそうですが、実際に地下鉄構内での購入が増えただけでなく、プロモーション的な要素も強く、「オムニチャネル」の取り組みとして、「いつでもどこでも便利なお買い物体験を提供するディスカウントストアである」というブランドメッセージを訴求する事で、通常のEC利用者が増えたのではないかと推察されます。このような取り組みは、まさに「Place」と「Promotion」の融合と言えます。

次は、2つの領域の融合にとどまらない事例です。ある大手家電量販店では、顧客の「価格比較」行動に対して、価格比較アプリを自社で作成し配布しました。このアプリは、商品のバーコードを読み込むと、自社店頭およびECでの販売価格を表示するというものです。自社の販売価格に自信があるがゆえに成しえる施策ではありますが、うまくいけば競合他社の店頭という場所において、他社顧客を奪う、また流出しそうな自社顧客を食い止める事ができるといった、まさに「Place」と「Price」の融合、そして販促的な意味合いでは「Promotion」とも隣接した融合事例といえます。

また、別の事例ですが、業務用プリンターにセンサーをつける事でインクが切れそうになるとリアルタイムで発注信号を送るといった仕掛けは、まさに「Product」と「Place」と「Promotion」の融合といえます。なお、これらの4Pは、顧客に商品を購入してもらう瞬間の為の戦略フレームワークであることから、4Pの「平面融合」と名付けます。

4Pの立体融合

ビッグデータによる4Pの融合は、平面融合だけでなく、立体的な融合さえも可能とします。
これまでの4P戦略は、モノの「購入時点」の状態を表現するPOSデータの分析をもとに設計されてきました。ただし「コトの価値」時代においては、商品の購入前や後の体験も含めた、トータル価値が重視されるわけで、4P自体、商品購入前後のマーケティング戦略にも適用されるべきです。

「購入前」については、例えば顧客の店内回遊行動や陳列棚の前での検討行動をデータとして収集する事が可能になり、「購入後」については、商品に装着されるセンサーにより、どのように使われているかというデータを収集できます。これらのデータを活用することで、購入時点だけの平面的な4P戦略だけではなく、「購入前」の4P評価、「購入後」のアップセル・クロスセルまでをも含めた、「立体的」な4P戦略の設計ができます。

これは店内の購入誘発だけの4P戦略とは違い、先の大手ディスカウントストア事例と同じく、来店以外の接点も含めての購入誘発を踏まえた立体的な4P戦略が必要である事を意味します。そしてその戦略こそが、いま流通企業が取り組む「オムニチャネル」戦略であり、これまで長年培ってきた4P戦略フレームワークを掛け合わせた「立体融合」なのです。

例えば昨今の「フリーモデル戦略」は、購入時点の「Price」は無料にして、長く使っていただけることを念頭においた「Product」設計によって、購入後に「Place」を選ばぬ自動発注による付属品購入やライセンス契約で利益をあげるといったモデルであり、まさに購入時点と後を立体的に捉えた4P戦略であると言えます。

4P融合を目指して

これまでの述べてきたビッグデータ時代における「4P融合」に対して、企業はどうあるべきなのでしょうか。決してこれまでのマーケティング戦略を根底から覆すものではないので、身構える必要もないと思います。ただし、これまでの4P各業務の個別最適ではなく、全体最適を目指した「4P融合」が求められているとするならば、冒頭でも述べましたが、企業内の各部門業務連携がますます重要になってきます。

次回は、これらの部門業務連携を後押しする具体的なマーケティングテクノロジーを紹介していきます。