戦争を考えるテレビ局自社広告がグランプリ~2015 ACC CM FESTIVAL受賞作決まる
2015/09/30
全日本シーエム放送連盟(ACC)は9月25日、記者会見を開き2015 55th ACC CM FESTIVALの入賞作品を発表した。今年の応募総数は2609点。この中から5点の「総務大臣賞/ACCグランプリ」と各賞を選出した。
今回から従来のテレビCM部門を改めフィルム部門を新設し、テレビCMのAカテゴリー、オンラインフィルムのBカテゴリーに分けた。フィルム部門審査委員長の電通・古川裕也氏は、映像のアイデアを考えて形にする広告制作者の仕事の可能性を広げるためにCMを含む全ての映像表現を審査対象にしたと説明した。
高田坦史理事長は「インタラクティブを含めたメディア環境が多様化する中で、広告も表現手法がますます進化している。贈賞を通して、若者たちがこのような作品を自分でも作りたいと思うきっかけになればうれしい」と総括した。
各部門の総務大臣賞/ACCグランプリ受賞作品と審査委員長による講評は次の通り。
フィルム部門Aカテゴリー
広告主:東海テレビ放送
商品名:自社キャンペーン
タイトル:総集編 ~戦争を、考えつづける~
広告会社:電通 中部支社
制作会社:ソアズロック/Zaxx/東海テレビプロダクション
講評:フィルム部門審査委員長 電通・古川裕也氏
去年のグランプリはフィクションの極致ともいえる作品だったが、今回はジャーナリスティックなノンフィクションが選ばれた。「戦争」という極めて重要なイシューを「我々はこう考える」と投げ掛ける、テレビ局の自社広告として勇気ある優れたものである。テレビCMの一つの役割、可能性を示している。
フィルム部門Bカテゴリー
広告主:OK Go + Honda
商品名:OK Go
タイトル:I Won't Let You Down
広告会社:もり/ドリル/電通
制作会社:morimori
講評:フィルム部門審査委員長 電通・古川裕也氏
当カテゴリーでゴールドを受賞した大日本除虫菊/サンポール「ベンキー・シロイシ」と最後まで競り合い、1票差でのグランプリ獲得となった。Bカテゴリーが指し示す未来の可能性を吟味し、当グランプリ作品の方がやや上であると判断した。部門を通して映像表現の多様性と可能性を証明する授賞リストになったと自負している。
ラジオCM部門
広告主:サントリーホールディングス
商品名:サントリー ビール
タイトル:Beer-lingual
広告会社:マッキャンエリクソン
制作会社:メガヘルツ
講評:ラジオCM部門審査委員長 電通・澤本嘉光氏
さまざまな業種のラジオ好きな人たちを審査員に迎えた。ワイワイガヤガヤと楽しんで審査した結果、当作品が選ばれた。音声で全てを規定するのがラジオCMの特徴。お金をかけなくてもアイデアが広がっていけばグランプリを獲得できる好例である。
マーケティング・エフェクティブネス部門
広告主:メルセデス・ベンツ日本
商品名:GLA
キャンペーン名:GO!GLA
広告会社:HAKUHODO THE DAY/博報堂
制作会社:AOI Pro.
講評:マーケティング・エフェクティブネス部門審査委員長 トヨタマーケティングジャパン・土橋代幸氏
今年最も効いたマーケティング戦略を選ぶために女性審査員も多く登用し、幅広い意見を集約した。超高級車を代表するブランド、メルセデス・ベンツが「スーパーマリオ」という意外性のある広告表現を核にし新規マーケットに切り込んだ。その成果も素晴らしく、この業界に身を置く者として「かなりやられた」。
インタラクティブ部門
広告主:アミューズ/ユニバーサル ミュージック
商品名:Perfume
作品名:Perfume at SXSW
広告会社:電通
制作会社:ライゾマティクスリサーチ/電通テック/ピクス
講評:インタラクティブ部門審査委員長 博報堂・北風勝氏
新設2年目、審査は「チャンスと勇気」を合言葉に未来のシーズを発見する会と位置付けた。当グランプリ作品は高度なテクノロジーを複合的に組み合わせ、リアルなライブ会場とCGの世界をシームレスにつなぎ、見たこともない空間を演出。それをシェアすることでウェブ上にも魅力ある空間をつくった。グランプリとゴールド受賞作品に共通して生中継を起点にシェアしていくものが出そろった。ウェブが時代を生中継するメディアとしてそのポテンシャルを見せてくれた。
入賞作品および作品リストは、ACCウェブサイト内で閲覧できる。
また同日、第5回「クリエイターズ殿堂」と第16回「パーマネントコレクション」(CM殿堂入り作品)も発表。
前者には伊藤アキラ、故・椙山(すぎやま)三太、故・沼上満雄、操上和美、故・大西清の5氏が選ばれ、小田桐昭選考委員長が講評。
後者には、2005~07年にACC賞テレビCM、ラジオCM部門でブロンズ以上を受賞した作品からテレビCM3本、ラジオCM2本が選ばれた。