セカイメガネNo.18
ジャカルタで自由を味わう朝
2013/11/20
ジャカルタはインドネシアの首都である。世界中の他の都市と同じように高層建築が立ち並ぶ。この街の特徴は道路にある。インドネシアには1万3000余りの島、34の州がある。2億3800万人が暮らし、何百もの民族、言語が交じり合っている。それだけ多様な人々がみなジャカルタにやって来て、同じ道路を使う。どうしたって最悪の交通渋滞が生まれる。私たちの国がいくら「多様性の中の統一」を旗印にしていようと、ジャカルタの道路事情は私たちをバラバラに分断している。誰もがストレスを感じ、自分のことしか考えない。そうした交通渋滞がジャカルタ市内の5地域全てで平日の朝から夜中まで際限なく続く。
1週間のうち5時間だけは例外だ。2012年5月から日曜日の朝6時から11時まで、幹線道路から自動車を閉め出す法律が施行されている。その時間帯の道路にはランナー、サイクリスト、サッカー選手、インラインスケーターたちがやって来る。
誰もが、より健康的なライフスタイルを望んでいる。その瞬間には、これぞ民主主義といった風景が目の前に広がる。年齢、趣味、階級の区別は見当たらない。私たちは自分たちの道路を取り戻したかのようだ。
12年9月の知事選挙でジャコウィ氏が現職を破り当選した後、ジャカルタの道路が焦点となってきた。新知事はタムリン通りからクルマを閉め出しコンサートを開催して、ジャカルタの周年行事を市民と共に祝った。
彼は同じ試みを断食月明けのレバランの大祭、8月17日の独立記念日でも実施した。その国の文化を理解する最もたやすい方法は、人々が道路でどんな振る舞いを見せるか観察することなのだ。
平日、ジャカルタの人々は意地が悪く、利己的で、不幸せに見えるかもしれない。もし、そうだとすれば、単に最悪の交通事情にへきえきしているためなのだ。けれども、日曜の朝、ジャカルタの幹線道路にあなたがやって来たとしたら、まったく異なる風景を見て驚くだろう。快活で、心の広い、幸福な人たちがいるからだ。
その人たちこそ本当のジャカルタ市民なのだと私は思う。だから、ジャカルタに来る機会があったら、ぜひとも日曜日の朝、スディルマン通りやタムリン通りで交通渋滞から完全に解放された自由を味わってほしいのだ。
(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)