開発途上国の森林を守るソーシャル
ビジネスを提案せよ
2017/06/07
「森から世界を変える REDD+プラットフォーム」(事務局=JICA/森林総合研究所)は6月3日、東京・新宿区のJICA市ケ谷ビル 国際会議場で「森から世界を変える ソーシャルビジネスアワード」のソーシャルビジネスカンファレンスが開催された。
同アワードは、途上国の森林を保護することで温室効果ガスの排出を抑え、世界的な気候変動緩和に取り組むREDD+のプロジェクトを推進するための「森から世界を変える REDD+プラットフォーム」の活動の一環。途上国での森林保全とビジネスを両立させるため、30代までの若い世代を対象にワークショップを行い、優れたアイデアを提案した参加者をオフィシャル特派員として海外に派遣する。
同プラットフォームでは2016年、学生らをインドネシアに派遣。同年12月に開催された「エコプロ2016」などで、森林破壊を止めるプロジェクトの有効性や現地の人々との交流について報告を行った。
(https://dentsu-ho.com/articles/4763)
当日のカンファレンスは、7月に東京と神戸で行われるワークショップを前に、今年のプロジェクトのキックオフとして開催された。
冒頭、ナビゲーターを務めたビジネスプロデューサーの谷中修吾氏(同アワード総監修)は「国際協力で活動されている方や、ソーシャルビジネスという視点でNGO活動をされている方など、それぞれ関心の切り口は異なると思う。今回はそれらを合わせた国際協力のソーシャルビジネスカンファレンスだ。社会的な意義と事業を組み合わせたソーシャルビジネスを、開発途上国の課題を解決するために役立てたい」とあいさつした。
ジュエリーブランド・HASUNAの白木夏子CEOは「開発途上国の社会的課題を解決するビジネス」と題し、同ブランドが取り組むエシカルビジネスについて紹介した。「エシカルな取引が不可能ともいわれがちなファッション業界で、あえて透明性を保った取引を追求することにより業界が少しずつ変化し、やがて社会が変わる」と述べ、これからソーシャルビジネスを目指す若者に対し、投資家と積極的に会うこと、自分の情熱に忠実であり続けることなどをアドバイスした。
フォトジャーナリストの安田菜津紀氏はカンボジアでの実例について、地雷除去後にキャッサバを栽培し、日本の技術とのコラボレーションで焼酎を製造する取り組みを写真を示しながら紹介した。「何かをしてあげるのではなく、お邪魔させてもらっている、時間を頂いていると考えることが大事。そして、お返しの気持ちを忘れずに。現地で関係性をたくさん築いてください」と話した。
兼松 鉄鋼・素材・ブランド統括室の矢崎慎介氏は、カカオ農業によるグリーン経済開発など、インドネシアで行っている取り組みについて紹介した。「民間企業が新たな農業プロジェクトを始めることは難しく、官民連携というスタイルで進めている。指導や啓発活動だけでなく、実際に農産物を買い取ることも大切。その結果として森林減少を抑制することができる」と語った。
JICA 地球環境部の森田隆博氏は、世界の森林や気候変動の現状について「日本は70%ほどの森林率で、スウェーデンに並び先進国ではトップクラス。しかし世界の森林率は減少傾向にあり、中でも熱帯林の森林率が激減しているため保全プロジェクトを進めている。ソーシャルビジネスを考えるに当たって、森も人々の暮らしも大切にするべきだ」と述べた。
同プラットフォームのオフィシャルサポーターとアワード特別審査員を務める、日本人と米国人のお笑いコンビ・パックンマックンも登壇。「ボクらは毎日、国際会議をしています」とジョークを交えながらゲストのトークを振り返り、「ビジネスチャンスを探すのも、新しいことに挑戦するのもいいが、自分の好きなことをからめると新しい発見もあって持続できると思う。そこをポイントにビジネスを楽しんでほしい」と締めくくった。
プロジェクトでは、7月のワークショップ、8月のプレゼンテーション(審査会)を経て、オフィシャル特派員を決定。特派員は海外の森林視察に派遣され、ワークショップ参加者を代表して、さまざまなビジネスアイデアの可能性を現地で体感する。帰国後、体験を基にファイナルプレゼンテーション(10月予定)や各種イベントなどで報告を行う。