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電通ライブがつくる「真実の瞬間」No.6

「食」が世界の文化をリードする!(後編)

2017/07/20

電通ライブがつくる「真実の瞬間」。空間開発でもイベントでも、飲食コンテンツのプロデュースはとても重要です。特にSNS時代に突入してからは、「食」の拡散力が注目されてきました。今回は、電通ライブにとっては良き仲間であり心強いパートナーもある、カフェ・カンパニーの楠本修二郎社長と、トランジットジェネラルオフィスの中村貞裕社長をお迎えして、クリエーティブユニットの神志名剛ユニット長が語り合いました。

取材・編集構成:金原亜紀 電通ライブ クリエーティブユニット第2クリエーティブルーム
 
(左から)中村氏、楠本氏、神志名氏
撮影協力:西麻布HOUSE
 

日本のホテルと飲食は、グローバルスタンダード的にはまだ弱い

神志名:今、東京で一番弱いのは何ですか。ホテルも海外の先進都市の方が、いろんな形態がある気がしますが。

中村:世界基準で見ると、小さい和食店とかはいいですけれど、グローバルスタンダードのレベルがすっぽり抜けていると思っているんです。例えばニューヨークに出してもいいレベルのレストランを出店すると、あっという間に外国人で埋まっちゃう。

ギリシャ料理の「アポロ」も、週末に行くと7~8割外国人です。ということは、グローバルスタンダードのレベルの雰囲気、音楽、スタッフのレベルのところが、日本にないんじゃないかなと思う。だから、僕にはビジネスチャンスかなと思うんです。

楠本:小割りの店で名店が多いから、アジアのトップ50には入ってこない。要するに、票が割れちゃう。

神志名:そもそも日本の名店は、50に入ってこないのですか。

神志名氏

楠本:入るんだけど、下の方。ホテルのトップクラスとかも、アメリカにあるものが日本にないというのは、圧倒的にまだいっぱいあると思うけど、一方で日本独自に、むしろ海外の人たちが求める日本独特の魅力みたいなものも相当あると思ってはいます。

それは、Airbnbの利用者が15%強だったというのが象徴的ですよね。2500万人のインバウンドのうち15%以上が民泊だったということですね。そんな国ないですよ。来年に規制緩和されると、より一層拍車がかかるよね。

今までは、日本は総中流社会といわれていたから、超ハイエンドなグローバル基準のレストランやホテルも少ないし、でも、そこそこにきれいなビジネスホテルはいっぱいあります。だけど、バックパッカーが泊まれる割といい感じのものもありませんね。

ふっと足元を見ると、平均年収がどんどん下がっているし、1億総中流と思っているのは日本人だけみたいなグローバル状況の中で、すごくニーズにばらつきが出てきているわけです。それにファシリティーが合っていない。だから、インバウンドがどんどん増えると、いろんなやつがいるよねということに対応するものがない、というのが今の東京であり日本。

また、古民家はどんどん増えているし、要は空き家がどんどん増えるしという中で、それをどう使おうかと。日本ならではの旅の仕方とか、食の楽しみ方みたいなことは、多分、外国の人もどんどん発見してきていて、そうなると日本人的には、その再発見をまた喜んじゃう、みたいな流れは出てくるんじゃないか。

例えば、鳥取の農家の奥さんがつくるおにぎりが、ミシュランの二つ星みたいな。多分そんな時代になっていくかなと僕は思います。

「文化」はコンペティターがたくさんいないと生まれない

神志名:法規制やパターン化されたマーケティングに基づく収益モデルが、日本の場合まだ根強くあって、大体それで自動的にできるものが決まっちゃうというケースも多いので、ここから先は、それこそ泊まれる本屋さんができたり、バックパッカー向けの宿とペントハウスが一つの館に入ってとか、いろいろなスタイルや価値観があってほしいなと思います。

楠本:モノからコトへとか、エクスペリエンスビジネスとかに、表現方法はどんどんなっているじゃないですか。それって何かというと「もうたまらん、この瞬間」みたいなことがあるということだから、そこには何らかの参加する人にとってのサプライズがあるはずなんです。

マーケティング寄りにいったら、サプライズと全く真逆というか、安心感はあるかもしれないけど、サプライズはありませんという話になっちゃうから。

楠本氏

中村:基本的に文化は一人とか一社じゃできなくて、コンペティターがたくさんいないとだめで、例えば芝浦に「ゴールド」ができたときに、ナイトシーンの新しいカルチャーが生まれた。

そこにいろんな人たちが集まって毎日騒いで、ちょうど僕が大学1年のときにできたのでしょっちゅう行って、映画関係、ミュージシャン、ファッション業界の人とかみんな集まっていたので、カルチャーをすごく感じたんですよ。

初めてゴールドに行ったときも、「あ、これ、ニューヨークみたいだ」と思ったんです。まさにニューヨークでびっくりしたナイトシーンがあったんですが、それを東京でも味わえるんだと思って感動した。

楠本:中村くんが言っている、徹底的な海外感、高揚感みたいなものって、日本がやるためには、徹底的に外国人を呼びまくるということと、その人たちにとっての出島、エンターテインメントの出島みたいなものを特区的につくらないと、難しいと思うんですよ。

例えば、イスタンブールの運河の先に人工島みたいのをつくっちゃって、そこが全部、要はフローティングの出島みたいで、全部クラブなんです。

神志名:本当にそれ、あるんですか。

楠本:あります。2020って、そういったデカいことを仕掛けてもいいんじゃないかな。

東京は広すぎて、ナビゲーションが足りない?

楠本:寿司が世界的に流行ったのは、ローフードで、グルテンフリーで、ローファットでという、ロジカルな面があるわけです。

日本の食というものを、別に海外展開ということだけじゃなくて、海外から集まってくるガストロノミーパーソンやセレブリティーも巻き込んで見せていくときに、寿司のように研ぎ澄まされた寿司職人対お客さんの1対1の勝負みたいなこともあると思うけど、もっと食の場を体験してもらうきっかけみたいなことを、それこそ今までファッションや映画をやっていた人たち、異分野の才能がどんどんプロデュースしていくことによって、日本全体が盛り上がっていくと思うんですよね。

さっき中村くんが言ったけど、圧倒的にグローバルな基準、そういう人たちの目線で見たときに、個店個店の小さい店しかないから、東京へ来たらここにバーンと集まろうぜというような仕掛けって本当に少ないと思います。

そう思ってGINZA SIXに銀座大食堂をつくったんですが、あれも日本版イータリーをつくろうと思ったんです。日本の食が何で世界から受けているんだっけ、みたいなことをちゃんと僕ら自身が把握して、そこに対して高い次元でリーチしたら何が起きるだろうということを、もうちょっと食の産業全体で狙っていけたらいいんじゃないかと思います。

GINZA SIX 6F「銀座大食堂」
「銀座大食堂」の内観

神志名:昔の東京オリンピックの資料を見ると、都民の普通の生活をしている人が、世界を迎え入れようという意識が実はすごく高かったんですよね。

楠本:今回も、だんだん盛り上がってくるんじゃないですか。圧倒的に足りないと思っているのは、ナビゲーションです。東京ってラビリンスな面白さがあるんだけど、とはいえ、もうちょっと教えてくれてもよかろう、みたいな。

全体が広いから、それぞれのエリアのそれぞれの特徴ってあるんだけど、そこがもうちょっとキャラクタライズされてくるといいんじゃないかな。

神志名:ツアービジネスをいろいろ考えたいなと。ハコだけじゃなくて、東京に来たときに、あるストーリーのもとで、そのストーリーは選べるようになっていて、それぞれがさまざまな視点で切り取ったものを見られるとか。

楠本:そこの丁寧な設計を、順列組み合わせしながら、いろんな形で提案できると相当面白いと思います。

中村:とりあえず海外へ行くと、Uberなしには生きていけないんですけど、Uberないのがつらいですよね。

楠本:よく言われるのが、二次交通の分野ですね。新幹線まではいいし、空港はいいんだけど、これは東京だけに限らず、日本は二次交通がプアだから。デスティネーションは日本中にいっぱいあるけど。飛騨高山に行きたいとか、富良野に行きたいとかね。

でも、新幹線の駅降り立って、さてどうする、だよね。タクシーを呼んだら3~4万円になっちゃうし。二次交通をエンターテインメントに変えて、目的地に楽しくナビゲーションされていくというような仕組み、Uberなんかその一つになり得ると思いますが、競争がないから、そこが一番プアなんですね。

インターナショナルでもあり日本的でもある、世界基準を目指して!

神志名:最後に、いまお二人が興味持っていることややりたいこと、2020で世界中から人が来たときに、迎え入れる場とか体験として、どんなことをお考えになっているのか教えてください。

中村:僕は、インターナショナルフードで昨年はギリシャ料理、今年はタイ料理をオープンさせるんです。次はスペイン料理やベトナム料理も狙ってます。

中村氏

それを150~200坪ぐらいの、ちょっと暗めで音楽ガンガン鳴っていて、ちゃんとおいしい食事があるような、内装もスタッフのレベルも雰囲気も世界基準の、そのままニューヨークとかに持っていけるレベルのインターナショナルなレストランをこれから何軒もやりたい。あとは、ワールドベストレストラン。アジアベストレストランでもいいけど、ベストテンに入る日本を代表するレストランをやりたい。

さらに、コンペティターはたくさんあった方がいいという意味で、ホテルがまだ全然足りないので、僕らもそれをやりたい思う。バックパッカー向けというよりは、もうちょっとスモールラグジュアリーな世界基準のホテルを、僕らも含めて10個ぐらい増えた方がいいなと思っているので、そのうちの一個は自分たちでやりたいですね。

あとは、ナイトシーンを盛り上げたいというのはあるんですけれど、僕は夜があまり得意ではないので(笑)、ラウンジかな。360度夜景のような、世界最高のミュージックラウンジをやりたい。

だから、スモールラグジュアリーなホテル、巨大なラウンジ、巨大なレストランかな。あと、余力があれば、すごい格好いい温泉。スパホテルみたいな。海外でいろいろ見てきた、温泉を使ったリゾートが東京近郊に欲しいな。

楠本:僕は地方が面白いなと思っている。人口5万人ぐらいの街だからこそ、どういうキャラを立てるか、何の聖地にするかみたいなことを考えていくのは、結構面白いなと。

黒船来襲的に考えるんじゃなくて、外国人目線って面白いから、僕も海外へ旅行に行って、地元の人たちに、「ここって、○○だよね」と例えると面白がられたりする。だから、彼らと一緒に地方を回ったりもするけど、そういうときに起点になる場所って、まずはホテル。

気の利いたラウンジ機能があるホテルがない。そういう意味では、スナックはいいな。スナックをどう盛り上げようかなと。

神志名:5万人ぐらいの街というと、どれくらいを想像しておけばいいのですか。

楠本:5万人にこだわっているわけじゃないですよ。人口5万は5万のありようがあるし、30万は30万のありようがある。それを経済性に置き換えたときに、まだまだいろんなハードルがあるんだけれど。10年ぐらいのスパンで、どんなふうに社会が変わるかなと。

その社会の変わりように対して、ソーシャルインパクトのある仕事をしたいから、地方でも、ちょっと先手をとるみたいなことを考えています。いまはやっているグランピングもそうだし、キッチンカーとか、レストランバスとか、そういったアプローチで、移動というものがどんどん面白くなってきた方がいい。

そういう流れが普通になっていくと思うので。地方ならではのコミュニティーの場所としては、スナックは最高だなと。外国人をスナックに連れていったら、100%盛り上がりますから。

中村:恵比寿に、ミッキーというスナックがあるんです。僕らの仲間の接待の最終地点がいつもそこです。

神志名:スナックの、何がうけるんですか?

楠本:外国人は結構カラオケも好きですし、独特の雰囲気をやっぱり感じるんじゃないですか。浅草とかでも、スナック多いじゃないですか。連れていくと、超喜びますよ。できれば、おかみが、本業は別に持っている(笑)。

そうすると、そっちの話にもなったりすると、相当面白い。芸者さんの元締めの方がバーをやったりしているけど、そういうところに連れていくと、ほんと盛り上がりますよ。カフェカンパニーをスナックカンパニーに変えちゃおうかな(笑)。

神志名:さすがにお二人とも、やりたいことだらけですね! 今日は飲食業の雄のお二人から、さまざまなヒントをもらいました。ぜひ電通ライブも一緒に実現させていく仲間になりたいです。今後とも、よろしくお願いいたします。

<了>