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2017年の日本は10月の衆議院選挙とそれに至る過程では政治が揺らぎ、経済でも企業の信用を揺るがす出来事がいくつもありました。一方、最年少でプロ入り、デビューから無敗で29連勝を挙げた藤井聡太四段の活躍が注目を集めたのはさわやかな話題でした。

さて、そんな1年は、テレビ業界にとってはどんな年だったのでしょうか。放送・通信・ITまわりを見渡して振り返ってみたいと思います。

全日のHUTはわずかに減少。新たな指標「総合視聴率」動向

17年は国内外、硬軟さまざまの話題はあったものの、全日(6~24時)のHUT(チャンネルに関係なくテレビを見ていた世帯の数または割合)では、16年をわずかに下回る結果となりました。相対的にプライムタイム(19~23時)の低下がやや目に付きますが、ゴールデンタイム(19~22時)はほぼ同水準に推移したといえます。

当社が毎年発表している「年間高世帯視聴率番組上位30」の17年の結果をみると、例年どおりNHK紅白歌合戦が首位となりました。上位には東京箱根駅伝、WBCのスポーツ中継や、日本テレビの24時間テレビが占めました。ただし、これは放送と同時に見られたリアルタイム視聴の結果です。

16年10月から測定・提供を開始している「総合視聴率」※でみると、17年の年間総合視聴率の上位はこれもまたNHK紅白歌合戦第二部 42.0%(NHK 視聴率39.4%、タイムシフト視聴率4.3%)となりました。それ以外では「ドクターX・外科医・大門未知子・最終回」(テレビ朝日12月14日)が35.2%(同25.3%、12.5%)、「日曜劇場・陸王・最終回」(TBS 12月24日)30.3%(同20.5%、13.1%)、「NHK連続テレビ小説・ひよっこ」(NHK 9月28日)29.2%(同24.4%、6.8%)などのドラマが上位に並び、リアルタイム視聴を示す視聴率とは違った生活者の楽しみ方を感じることが出来ます。

17年 年間高世帯視聴率上位30(関東地区)のうち、ドラマは6本でした。しかし、17年総合視聴率上位30番組のラインアップでみると、ドラマの数は倍以上となりました。ドラマが以前ほど見られなくなったというよりも、生活の変化、デジタル機器の普及に伴って「見方が変わった」「タイムシフト視聴者が増えた」ということを表していると考えられます。

※総合視聴率とは、リアルタイムまたはタイムシフト(7日間以内の録画視聴など、リアルタイムではないもの)、そのどちらかで見ていれば全て「視聴」としてカウントされる指標

2018年はテレビ広告取引の新指標導入も

18年からタイムシフト視聴も加味した広告取引が順次始まる見込みとなっています。加えて、これまでの世帯指標から、個人指標(呼称 ALL)への転換が標榜されています。

番組平均(P=Program)と7日内に再生された広告枠(C7)を組み合わせた「P+C7」を指標とする取引だけでもシステム変更の負荷が生じますが、今後さらに配信なども含めて、「テレビ」というメディアや番組の定義、広告枠の設計とセールス、これらを俯瞰的に捉えて、再設計、転換していく初めの一年になりそうです。


この記事は2017年12月に発刊されたビデオリサーチのVR Digestを基に2017年12月31日までのデータを加味して加筆・編集したものです。

 

 

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著者

石松 俊之

石松 俊之

株式会社ビデオリサーチ

ソリューション局 兼 デジタル推進局 兼 テレビ事業局

1993年入社。放送・通信業界研究、デジタル放送、IT系の新たなサービスに関わる調査・分析を多く担当。分析部門、企画部門の在籍が長く、2017年10月から3局を兼務。

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