令和のテレビパワーNo.2
データで見る、事業成長にヒットする「スタートアップ×テレビCM」
2020/05/08
テレビCMは企業の事業成長にどのように寄与するのか?
以前は可視化しづらかったさまざまな指標が、今はデータで示すことができるようになっています。
今回は、テレビCMを実施したスタートアップの事例を紹介しながら、テレビCMの可能性を探ります。
スタートアップは、テレビCMよりデジタル広告に注力する、はず?
一般的に多くの企業がテレビCMを実施する主な理由は、「ターゲットに効率よくリーチしたい」「ブランド認知を最大化したい」というところにあります。現在でも“リーチ率”や“ブランド認知度”は、企業のマーケティングにおいて重要な指標であり、テレビCMがこれらを向上させる力があることは当然、事実です。
しかし、これらの効果だけでは、テレビCMへの投資に対して満足しない業界が増えてきています。
テレビCMは投資額が大きいため、アカウンタビリティー(説明責任)の議論に陥りやすく、「思っていたより効果がないのだが、どう考えるか?」と理由を求められることがデジタル広告に比べてはるかに多いです。
「思っていた効果」、つまりテレビCMへの企業の期待値が、現実とあまりにもかけ離れたものにならないよう広告会社が事前に説明することは大事です。しかし、それ以上に、テレビCM自体が“事業成長”にどう寄与したのかといわれても、顧客の獲得、利益、その先のロイヤル化にどれくらい効果があったのかが直接的な数値としては見えにくく、事業との関連性を説明しづらいことが、テレビCMへの投資を躊躇する大きな原因となっています。
こうなるとテレビCMを実施する企業は、ブランド形成のために体力を使える企業(ナショナルクライアント)と考えられがちです。特に消費者との一つ一つのコミュニケーションにおいて、KPIや事業成長の観点から厳しいPDCAを求める傾向にあるスタートアップ企業などは、結果が可視化されやすいデジタル広告に出稿が集中しがちであることも容易に想像されます。
しかし、昨今、広告におけるテレビCM比率が伸びている業界を見てみると、「ライフスタイル系アプリ(※1)」や「BtoB系サービス」が目立ち、上記の仮説が当てはまらないことが分かります。
※1 ライフスタイル系アプリの定義:ゲームアプリ以外のスマホアプリサービス
テレビCMが導く、事業成長への“リンク”とは?〜 「テレビCMがすごく効いた」を可視化してみた
テレビCMを実施したスタートアップ企業の多くは、社長やマーケティング担当者が次のような効果をよく述べています。
- アプリのダウンロード数が増えた
- アプリのアクティブユーザー数が増えた
- 会員登録者数が増えた
- ターゲットが広がった
- 黒字になった
- 株価が上がった
- 売り上げが上がった
- 受注までのリードタイムが短縮された
- リピーターが増えた
- 取り扱い店舗が増えた
- バズった
一見、“定性的な”自己満足に見えがちなこれらの発言も、データとして可視化することが可能です。実際にデータで示すことができた指標の一部をご紹介しましょう。
テレビCMによる直接的な効果
もちろんテレビCMだけで株価が上がったわけではありません。
むしろ株価についていえば、スタートアップ企業だけでなく、初めてテレビCMを出稿する企業にとって、多額の予算を投じることに対する、株主へのアカウンタビリティーが必要になります。つまり、広告費に対する効果を不安視する株主の売り注文を避けるためにも、テレビCMの効果を“多方面かつ定量的に”可視化する必要があります。
ここでは、「テレビCMが全てを司っている」ということをお伝えしたいのではありません。テレビCMをベースに、各指標が相互に“リンク”すると考えていただいた方がよいでしょう。
テレビCMと“リンク”した効果として、データで可視化することができた各指標は下記の通りです。大きく分けて、実行動面(Action)と心理面(Psychology)に分類されます。
「実行動面」では、検索数やダウンロード数、クリック率やコンバージョン率、サービスの利用者数や売り上げなど、「心理面」では、ブランドに対する興味や理解率、企業に対するイメージ、株価など、幅広い指標が可視化できます。
テレビCMをベースとした“リンク”を、もう少し詳しく説明します。
例えば、「テレビCMを使って、バズらせたい(ツイートさせたい)」というオーダーはよくありますが、それが事業に直結しているか否か、つまり「ツイートがその先のダウンロード、さらにはアプリ起動(アクティブ化)に寄与しているか」といった、テレビCM →ツイート数→アクティブ率の“リンク”も可視化できます。
また、“リンク”だけでなく、テレビCMのクリエイティブ上でどのような要素を伝えれば、ダウンロードなどのアクションに寄与できるかまでも、アプリ業界の400以上のテレビCMキャンペーンのデータで示すことができています。
逆に、定常的に出稿していた企業が「テレビCMをやめたら、ウェブ上の行動はどう変わるか?」という問いに対して、テレビCM →ウェブ上の獲得効率(CPA)の“リンク”を可視化することも可能です。
テレビCM効果の“リンク”の可視化事例
目先のPDCAと事業成長のためのPDCAは使い分けるべき
「テレビCM出稿の費用対効果は?」「デジタル広告と比べてどうなのか?」。これらを可視化できることは確かに重要です。ただ、「テレビCMで〇〇が上がった!」という議論の中で、例えば、検索数やツイート数、ダウンロード数などいわば“目先の効果”の可視化と、“中長期的な効果”の可視化は分けて考えなければなりません。目先の効果以上に大事なことは、テレビCMがどこまで“事業成長(売り上げ)”にコミットできるかです。
いきなりですが、皆さんが次の状況だったとき、どちらを選択しますか?
短期的に見るとクリエイティブ素材Aを取りがちですが、長期的に見ると素材Bの方が売り上げに直結するといえます。ダウンロード(Cost Per Install)の観点ではなく、課金というアクティブ(Cost Per Active)で見るべきであるというのは、業界的には以前から当たり前の話かもしれません。しかし最近では、アクティブを可視化してPDCAを回していくことは、あらゆる企業にとっても当たり前になりつつあります。
例えば、電通のDMP(STADIA※2)と企業のデータ(モバイルデバイスのID-ADIDなど)をつないで、「実際にダウンロードした人のテレビの視聴状況はどうか?」「課金をしてくれるような質の高いアクティブユーザーが、デジタル広告でキャッチできるのか?」また、「心理面」の視点では、「どちらが事業成長に直結するイメージ(技術力がある、就職したいなど)を高めるか?」など、「実行動面」と「心理面」双方の視点を、テレビとデジタルを横並びでPDCAすることが、当たり前にできる時代です。
※2 STADIA:2019年5月時点で、テレビ受像機や録画機の合計で約400万台の実視聴ログデータに対して、約1200万台のモバイルデバイスのIDや約5000万件のCookie_idに紐づくオーディエンスデータと約10万人の調査モニターが人単位の同一IDで紐づく規模を有しています。
このようにスタートアップ企業の多くは、事業成長が見込めるからこそデジタルに加え、テレビCMの“リンク”を狙いとして、テレビCMを利用しています。また、このような“事業成長で考える統合的なPDCA”はスタートアップ企業だけでなく、ナショナルクライアントを含めた、さまざまな企業に取り入れることができます。
ウェブサイト訪問者に関するデータやリアルデータなど、さまざまなデータをカスタマイズしながら活用・定量化し、事業にイノベーションを起こしていく。そのひとつの方法としてテレビCMを利用することは大いに価値があると考えます。