テレビを“デバイス”と捉える。ライフネット生命の広告戦略とは?
2023/05/31
~「地上波」と「コネクテッドTV」の広告効果を、同じ指標で評価!~
現在、日本の家庭にあるテレビデバイスの50%以上がインターネットにつながっており、この接続率は年々増加しています。いわゆる「コネクテッドTV」です。
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コネクテッドTVは、YouTubeやTVerなどのネット動画コンテンツを手軽に視聴できる、インターネットに接続したテレビデバイスです。地上波のチャンネルを変える感覚で、ネット動画を視聴できると言っていいでしょう。
今回は、地上波CMとコネクテッドTV広告の横断活用への取り組みを開始したライフネット生命保険・肥田康宏氏をゲストに招き、コネクテッドTVとの向き合い方や、横断的なメディアプランニングについてお話を伺いました。
同社でコネクテッドTV広告施策を中心に、デジタル広告の運用を行うSepteni Japanの金本信一氏、そして「レスポンスコネクター・ダッシュボードPro(以下、レスコネPro)」(※1)を用いた分析を行いながら、同社のメディアバイイングを支援する電通のプランナー窪谷航氏、濱大毅氏による、座談会形式でお送りします!
※1=レスポンスコネクター・ダッシュボードPro
電通グループが提供する、広告効果測定のダッシュボード。地上波とコネクテッドTV、それぞれの広告に対する視聴者への効果を測定した上で、従来は比較が難しかった両者を同じ指標で分析・評価したり、新たな打ち手につながる情報を取得できる。
広報リリース:コネクテッドTV広告と地上波CMのコンバージョン効果を横断分析
コネクテッドTV広告の効果を、「地上波と同じ指標」で可視化したい
──「コネクテッドTV広告」とは具体的にどういうものですか?
濱:テレビの画面上でネットの動画コンテンツを見た際に表示される広告のことです。細かく言うと、YouTubeやTVer・AbemaTVなどで閲覧されたデジタル広告全体のうち、テレビからのアクセスを「コネクテッドTV広告」と呼称しています。広告素材自体はスマホやPCブラウザで表示されているものと同じです。
金本:ただ、コネクテッドTV広告の場合、デジタル広告といっても、地上波CMに近い性質も持っています。例えば共視聴が多くなったりしますし、生活者の広告への受容態度も、スマホやPCブラウザを介したものとは異なります。また、スマホやPCのように広告をタップしたり、クリックすることができず、ランディングページには飛べません。結果として広告視聴時の直接的な行動を追うのが難しいのは、デジタル広告としては特殊だと思います。
──それでは、ライフネット生命で実施されている「地上波CM×コネクテッドTV広告」の運用について伺っていきます。今回、電通のレスコネProを導入した背景を教えてください。
肥田:ライフネット生命は、生命保険をインターネットでお届けしています。いわゆる対面販売というものをしていません。それゆえ、その存在を知っていただくために広告宣伝が大事なのですが、社内では昔から「地上波CMばかりでいいんですか?」とずっと言われていました。そのたびに効果検証の実績を見せて説明してきたのですが、ここ数年で「コネクテッドTV広告はやらないのですか?」と言われるようになってきました。もちろん、やらないと決めていたわけではありませんが、地上波CMと比べて効果の可視化が難しかったんです。そこで、「地上波CMとコネクテッドTV広告それぞれに、こういう効果がこのぐらいあります」と、データに基づいた議論ができるようにしたかったという背景があります。
窪谷:実はレスコネProのリリースの前から、私はプランナーとして、電通のSTADIA(※2)を軸に、地上波CMとデジタル広告を横断した効果検証についてのご提案をしていました。そのタイミングでレスコネProがリリースされることになり、地上波とコネクテッドTVの効果比較まで可能だということで、レスコネ担当の濱にもプランナーとして参加してもらったんです。
※2=STADIA
電通が保有する国内最大規模のテレビ視聴ログを基盤としたマーケティングプラットフォーム。テレビ視聴ログデータとデジタル行動データを突合することでオンオフ統合での分析が可能
──そのレスコネについて、基本的なところを伺います。地上波CMの即時的な効果測定は難しいと言われているなか、電通グループでは「レスポンスコネクター・ダッシュボード」というものを提供することで、デジタル広告に近い形でのデータ取得ができるようにしてきましたね。
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濱:はい、CMからのあらゆるレスポンスを計測・分析し、その後のアクションに結びつけることからレスポンスコネクターと名付けています。従来のレスコネは「レスポンスコネクターBasic」といって、地上波CMの効果を即時に可視化するものでした。具体的には、CM放送後に素材別・時間帯別・曜日別などで、事業KPIとして設定したコンバージョン(以下、CV)への広告効果を分析できます。
そして今回ご活用いただいている「レスポンスコネクターPro」は、分析対象にコネクテッドTV広告を追加したのが特徴です。一つのダッシュボード上で、地上波CMに加えてコネクテッドTV広告の効果も、“同じ指標”で比較・評価できるようになっています。ウェブサイト来訪者数、アプリダウンロード数、問い合わせ数などを詳細に分析できます。
<「レスポンスコネクター・ダッシュボードPro」の画面イメージ>
肥田:レスコネProの広報リリースを見て、これだ!と思ったんです。当社としては、地上波CM単体での効果検証自体は、レスコネを入れる前からできていました。しかし、地上波CMとコネクテッドTV広告を同じ指標で評価するのがどうしてもできませんでした。YouTubeやTVerで当社のCMが時間・分単位でどれくらいの広告ボリュームが流れているか分からなかったですし、その即時的なレスポンスが見えなかったからです。それが、レスコネProではそういったことが分かる情報が取得できて、1つのツール上で、地上波CMとコネクテッドTV広告を同じ指標で評価できるということで、もうこれしかないなと。
金本:レスコネProでは、「地上波CMにおけるGRP(延べ視聴率)」「デジタル広告におけるimp(表示回数)」という単位の異なる出稿量を、いわば相互変換できるんです。それにより、地上波CMとコネクテッドTV広告、それぞれCVへの効果を、同じ尺度で横比較できます。
GRPとimpを相互変換することで、地上波とYouTube・TVerを横比較!
──ライフネット生命が求めていたコネクテッドTV広告のCVへの効果を、レスコネではGRP換算した上で、地上波CMと比較できるようにしたのですね。
金本:はい。私は、セプテーニというデジタル広告のストラテジストとして、ライフネット生命のミドルファネル施策の運用と分析を担当しています。この3月に地上波、YouTube、TVerでの広告配信を行い、それぞれの効果を分析しました。今まではオフライン単体、オンライン単体、それぞれ別の指標(GRPとimp)での評価しかできなかったのが、同じ指標で比較したことで、それぞれ「もっとこうすればいいのではないか」という課題を洗い出すことができました。
肥田:広告主の立場から言うと、GRPで「反応が良いです」と言われているものと、impで「反応が良いです」と言われているものを、同列に扱っていいのかという課題がありました。個別施策の良し悪しではなく、同じテーブルに全部並べて俯瞰(ふかん)した上で、「全体的にどうなっているのか」という説明をしたいという思いです。今回、同じ指標で比較してみたら、地上波CMの方が当社の定めるCVポイントへの寄与度が高いことが分かりました。だからといって「デジタルはダメだ」という話ではなく、「同じ指標での分析結果を基に議論できるようになった」のがすごく大きな進歩です。どんな差異があるかが分からないと、次の打ち手を議論できませんから。
窪谷:コネクテッドTVに限らず、デジタルの強みは、狙いたい性・年代だったり、「まだ保険に入っていない」という属性にピンポイントで届けられる、いわゆるターゲティングができることです。でも、だからといって「それぞれ役割が違うので、どちらも良いです」といって終わるのではなく、それらが結果として事業KPIにどのくらい貢献したのかを比較したいというニーズに応えたのがレスコネProです。
肥田:今回の取り組みで何が良かったかというと、今までは予算を「オフライン広告費」と「オンライン広告費」に分けて管理と運用をしていました。そうではなく、今は「テレビデバイス予算」という枠を作って、その中で地上波CMとコネクテッドTV広告の割合をどう配分していくか?という議論ができるようになりました。
ただし、この「テレビデバイス予算」という考え方は、地上波CMしか売らない広告代理店や、デジタル広告しか売らない広告会社だとどうしてもどちらかに偏ってしまうため、「統合的な」進め方が難しくなります。片方しかできない会社に頼んでも、「やっぱり今はデジタルですよ」みたいな売り込みにならざるを得ないと思うんです。そういった意味では、地上波に強い電通と、デジタルに強いセプテーニが、“オンオフ統合”体制で向き合ってくれるのがありがたいですし、アドバンテージだと思います。
オンライン担当とオフライン担当はバラバラで良いのか?
──実際の広告効果の分析はどんな流れと体制で行われますか?
窪谷:セプテーニの金本さんが、地上波もコネクテッドTVも含めた効果測定を行い、詳細なレポートを作って共有してくれています。
肥田:何しろ、セプテーニというデジタルの会社が「この月は、地上波CMの方にこのような優位性が見られます」という考察をしてくれるのが本当に画期的だと感じています。普通だったらデジタルのメニューを推したくなるじゃないですか。そこを、きっちりと数字を見たうえでフラットに効果効率を求めるべきという姿勢でいてくれるため、「セプテーニ社とであればコネクテッドTVの可能性を追求できるのではないか」と思えます。
金本:ありがとうございます。セプテーニとしては、ライフネット生命様がこのような機会をくださったことを大変ありがたく思っています。
地上波CMのデータというのは、セプテーニのようなデジタル専業の広告会社からすると、全く見えないものなんです。だいたい「GRP」というのがもうほぼ別の世界の言語なので、数字を見て良い・悪いも判断できないし、「じゃあ、ここについてはウェブでやりましょう」という自信を持った提案もできません。
それが、今回はライフネット生命様から「地上波はこういう運用をしています」「ウェブは今こういう課題があります」というのを、密に連携していただいているので、とてもご提案しやすいです。
肥田:ライフネット生命のオフライン担当者、オンライン担当者がそれぞれ金本さんに情報をインプットする体制になっています。それを全部受け止めてオンオフ統合ならではの分析・考察を進めてくれています。まさか、セプテーニにいながらクライアントのオフラインの定例会に毎週呼ばれるなんて思っていなかったのではないでしょうか。
金本:そのおかげで、レスコネProの数値の見方が分かったので、とにかくいろいろな角度からの課題感や意見をいただけるのは非常にありがたいと思いました。たしかにセプテーニとしては、コネクテッドTVの広告配信の運用、管理、報告が基本的な役割です。でもコネクテッドTVは、地上波とデジタル広告、両方の要素があるものなので、やっぱりそれぞれの視点から分析する必要があるんですね。その点では、ライフネット生命の皆さんそれぞれの前向きな体制が、やりやすさを生んでいると思います。
──電通の関わり方はどういう形でしょうか?
窪谷:レスコネはダッシュボードなので、クライアントを含め、「誰もが見られるような状態」を開発するところまでが私たちの仕事です。そこから先の“読み解き”は、クライアント自身がやってもいいし、私たち電通がやらせていただくこともあるし、今回の場合はセプテーニの金本さんにやってもらっています。そして誰が分析を担当するにせよ、「同じ物差しで、全員で見られる」ことが重要なんです。今回も、広告配信後に金本さんのレポートを基に“振り返り会”を開いて、ネクストアクションをちゃんと規定していただくところまで、三社でうまく連携できていると思います。
濱:普通は、クライアント側にも広告会社側にも「オンライン担当」「オフライン担当」がいて、それぞれ部署や予算の事情ではっきり分かれていて、ミーティングも1対1なんですよ。それが今回は、両社のオンライン担当、オフライン担当がみんな同席して、セプテーニも交えて一緒に議論できています。それぞれの担当者がお互いに地上波、コネクテッドTVを自分ゴト化できているので、分断しないライフネット生命の体制がすごいなと。
──地上波およびコネクテッドTVへの出稿と、その結果を基にネクストアクションを考える振り返り会を行っているんですね。
窪谷:一般的なCMでは、キャンペーンが終わったら1カ月くらい時間をいただいて、分析したり、結論を導き出します。しかしレスコネは、地上波CMを開始したら最短翌日には初回の結果が見えているスピード感です。それに、コネクテッドTV広告はデジタル広告ですから、追加の出稿なども含め、短期間で運用が調整できます。つまり、地上波CMの分析結果次第では、デジタルの出稿を増やすことで全体最適を図ることができます。
肥田:ちょうど当社としても、地上波CMとコネクテッドTV広告について、オフラインとオンラインで分けるのではなく、「テレビデバイス」という中で併用していくべきだと考えていたところでしたので、レスコネがまさにフィットしました。まず地上波CMの初速を見て、投下量が足りないようであれば後からコネクテッドTV広告でフォローできるんじゃないかということですよね。
金本:その通りですね。「先週、地上波CMがこのぐらいで、コネクテッドTV広告はこのぐらいだった」というのを見てから、クイックに方針を切り替えられるんじゃないかと。今回でいうと、3月の地上波CMとコネクテッドTV広告、全体のGRPを見た上で、「足りない分」をコネクテッドTV広告で補完できる。テレビとネットという分け方ではなく、いわば「テレビデバイス」全体での戦略を立てられるようになったというのは、今後のメディアプランニングにおいても選択肢が広がるので良いことだと思います。
「動画広告を最後まで見てもらうこと」が目的ではない?
──3月に実施した取り組みでは、地上波CMと同じ素材をYouTubeやTVerでも出稿したのでしょうか?
肥田:今回はそうです。同じ条件で、純粋に各媒体のCVへの貢献度を出したかったため、「サイト来訪」をCVとみなし、目標CV数をKPIとして設定しました。各媒体の広告が、それぞれどれだけサイト来訪数に寄与したのか、ですね。結論としては、圧倒的に地上波CMが、CM放映直後のサイト来訪数としての寄与度が高かったです。
濱:今回発見があったのは、やはり地上波の“勝ち素材”とYouTubeの“勝ち素材”は違うということですね。実際に分析してみると、それは明らかでした。
肥田:YouTubeと地上波を比較すると、CMが流れるタイミングが違いますよね。また、視聴態度も異なります。こんなに違うんだから、素材が同じでいいはずがないというのは改めて実感しました。
そういった素材の最適化はウェブ動画を考えるうえでは一般的ではありますが、レスコネを使うことで、その常識がちゃんと数字として可視化されて、「テレビデバイスという枠の中で確認できた・比較できた」というのが大きいです。
──YouTubeは、どんなところが地上波と違っていて、実際にどういう違いを出したのでしょうか?
金本:サウンドロゴの位置を変えたところ、結果に差が見られました。地上波やTVerでは、広告の最後にサウンドロゴがある素材を配信していましたが、YouTubeでは広告の冒頭にサウンドロゴが流れる素材も配信してみました。その結果、YouTubeでは冒頭に持ってきた方がパフォーマンスは良かったのです。
YouTubeでは広告の冒頭5秒ぐらいでスキップボタンが出てきて、そこで離脱する人が大量に出ます。でも、その5秒までに「ライフネット生命♪」とサウンドロゴを出して印象付けることができれば、たとえ途中でスキップされたとしても、「ライフネット生命」が記憶に残ります。このあたりの“常識”も、レスコネを使って検証できました。
窪谷:一般的なコネクテッドTV広告って、スマホやPCのようにクリックやタップで直接サイトに遷移ができないので「完視聴」といって、動画を最後までちゃんと見てくれたかどうかで評価することが多いんです。でも、「動画を最後まで見てもらうこと」だけが目的じゃないですよね。サイトに来訪してほしいというのが大切なので。「広告を見た人に、ライフネット生命のサイトにどのくらい来訪してもらえたのか?」という、深い指標で評価できるように設計しました。
──3月に実施して、テレビデバイス内での地上波とコネクテッドTVを横断した効果測定の取り組みが加速していると思いますが、現在の状況はいかがですか?
金本:今はまだ「こういう結果が出たね」「じゃあ次はこうしよう」と分かっただけの段階です。レスコネProで分かったことを次のアクションにつなげるには、今後のPDCAの中で勝ちパターンを探っていくことになります。レスコネで評価する指標は従来の運用では見えない指標であったため、ここから改善していくことがコネクテッドTVの本領とも言えます。
肥田:同じ広告でもCVに与える効果に大きな差異があることが分かったのですが、その差異を埋めるのは、運用能力だったり、クリエイティブの力だったりします。しかし、まずは「可視化」という成果を得たという段階です。私もこれで「これくらい差がありました」「これからこうやって埋めていこうと思います」という報告ができるようになりましたし、次にどうすべきかを提示しやすくなりました。
──今回の分析結果を踏まえて、改めて地上波CMとコネクテッドTV広告の価値はそれぞれどんなところにあると思いますか。
肥田:地上波CMの価値は、その巨大な「リーチ力」と、リーチ力から生まれる「反響」だと思います。GRPとimpを比較すれば一目瞭然なのですが、マス広告としての地上波CMのリーチ効率は圧倒的です。また、番組というコンテンツにうまくハマる形でCMが流れたときの、SNS等を通じた瞬間的な反響の爆発力は地上波でしか生まれないものがあるなと思います。「気づいてもらう」「知ってもらう」という点では、地上波CMに勝るものはないでしょう。
金本:逆にコネクテッドTV広告の価値は、ターゲティングができることや、届けたい人に届けたいだけ届けるという、コントロールできるところです。また、短い期間でクイックに方針転換できる身軽さがある。それぞれの良さは、皆さんも認識していると思うのですが、レスコネによって同じ土俵で比較できたことで、「じゃあこの数字をこうすることを目指そう!」という議論が活発にできるようになりましたね。
濱:コネクテッドTV広告はデジタルの配信なので、例えば1分に50impずつとか、常に流れています。でも50impでは、地上波のように「反響で話題化する」のは無理です。逆に、テレビのGRPをimp換算するとすごいことになります(笑)。いきなり200万impという数値が出たりしますからね。コネクテッドTVも、地上波の良さを分析した上で、爆発力がもっと出せるようになると、かなり良い媒体になっていくと思いますし、実際AbemaTVのFIFAワールドカップ、Prime Videoのボクシング中継などは、爆発的なコンテンツ枠になっていますよね。
窪谷:デジタルと言っても媒体によりますが、例えばTVerなど地上波放送との同時配信や独占コンテンツのライブ配信を行う媒体においては、地上波に近い視聴のされ方も重視をしていくのかなと思います。ただ、YouTubeやSNS系の媒体は、1impあたりの共視聴人数を増やすことはあまり目指していない印象です。どちらかというと爆発力よりも、データを集積し、ターゲティングできるという、従来のデジタル広告の強みを生かしていくのかなと。
──横断的にデータを取得できたことについて、経営層をはじめとするライフネット生命社内での評価はいかがですか?
肥田:今回の結果を受けてひとつ、明確に大きく変えると決めたことがあります。今まで「オフライン予算」と呼んでいたものを「テレビデバイス予算」に統一します。あの大きい画面のテレビデバイスという機器に対して、今月はいくら投下します、という単位で考えるようにしたいなと。その上で「あのデバイスで流す素材」の最適化を考えたいです。その考え方については、「地上波だけでいいのか?」という声にこたえる形にもなりますし、予算の最適化という意味では大きな前進です。
濱:テレビデバイス予算という言葉は大変しっくり来ます。そもそも、テレビデバイスを見ているユーザーは、地上波かデジタルか、今見ている広告はどっちの予算が使われているのかなんて意識していませんよね。
肥田:そうなんですよね、見ている人からしたら、あまり大きな問題ではないですよね。地上波だろうがコネクテッドTVだろうが、テレビはテレビですから。
濱:ユーザー側が意識していない以上は、「コネクテッドTV」という言葉自体も廃れて死語になるのかなと思っています。そして肥田さんのおっしゃる「テレビデバイス予算」という考え方が一般的になっていくと良いなと思いました。
──最後に、今後のライフネット生命のメディアプランについて、展望をお聞かせください。
濱:運用型のデジタル広告というのは「効率化」や「費用対効果」を求めていくので、ある意味で何かしらにシュリンクしていくことになりがちです。賛否あるかもしれませんが、シュリンクしないためには、地上波の持つ爆発力を定量的に可視化・要素分解できないか考えています。コネクテッドTV広告については、現時点では地上波CMと比べてCVへの寄与度が低いので、効率化と同時にパイを広げていくことは必須かなと。
肥田:私たちは効率化を目指してはいるんですが、シュリンクはしたくないと思っていることをこの場でシェアさせてください。もちろんテレビデバイスの中での予算の最適配分を追求していきつつも、右肩上がりでの成長をし続ける意志を、電通グループとも共有して、最後まで当社と同じ熱量で向き合っていただけるとうれしいです!と。
窪谷:よろしくお願いいたします!地上波の持つ爆発力みたいなものをどれだけコネクテッドTVに生かしていけるのか、今はスタート地点だと思っています。本日はありがとうございました。