LGBTQ+調査2023No.1
LGBTQ+をめぐる人々の意識は?~最新調査レポート
2023/10/19
電通では2012年に国内初となるLGBTQ+についての大規模調査を実施して以来、10年以上にわたり調査を重ねてきました。5回目となる「LGBTQ+調査2023」(※)では、LGBTQ+当事者層の意識や経験に加え、非当事者層の意識や知識、行動についても分析しました。
本連載では、最新の調査結果をさまざまな切り口から分析していきます。初回は「LGBTQ+調査2023」の主なトピックスを紹介します。
※ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン課題に対する研究やソリューション提供を行う電通ダイバーシティ・ラボ協力のもと、電通グループのdentsu Japan内の組織であるdJサステナビリティ推進オフィスが主体となり、調査を実施。
〈目次〉
▼LGBTQ+当事者層の割合は9.7%
▼ LGBTQ+へのインクルージョン意識は約8割。しかし、行動とのギャップがある
▼LGBTQ+に関する取り組みを行う企業への就業意向は約6割
▼LGBTQ+の子どもを持つ親の約7割が「子どもの人生を応援したい」と回答
▼パートナーシップ制度当事者層の住みやすさに関係しているが、周知に課題
LGBTQ+当事者層の割合は9.7%
「LGBTQ+調査2023」では、性のあり方を下記の3つの要素の組み合わせで分類しました。
- 性自認
- 生まれた時に割り当てられた性
- 性的指向(恋愛・性愛感情を抱く相手の性)
調査実施時点での回答に基づき、異性愛者であり(ヘテロセクシュアル)、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する(シスジェンダー)回答者以外を「LGBTQ+当事者層」と定義しています。
日本在住の20〜59歳、5万7500人を対象にスクリーニング調査した結果、全回答者に占めるLGBTQ+層の割合は9.7%となりました。2018年と2020年調査の8.9%から微増となった要因の一つとして、電通ダイバーシティ・ラボは、LGBTQ+に関する情報の増加により、自分自身の性自認や性的指向への気づきが進展したことがあると推測しています。
しかし、匿名のアンケートであっても性自認や性的指向を表明することが難しい回答者もいることや、ジェンダーやセクシュアリティの認識は個々人の中でも流動的なことを鑑みつつ、今後もスコアの動向を注視していく必要があると考えています。
また、「性自認×生まれた時に割り当てられた性」と「性自認×性的指向」のそれぞれの組み合わせによって分類した内訳も算出しました。その結果、前回調査同様、L(レズビアン)・G(ゲイ)・B(バイセクシュアル)・T(トランスジェンダー)以外にも、Q+に含まれる多様な性のあり方が確認されています。
「性自認×生まれた時に割り当てられた性」では、性自認と生まれた時に割り当てられた性が異なる「トランスジェンダー」が1.15%、性自認が「男性か女性か変わることがある、一定ではない」「男性・女性のどちらでもある/ない」と感じる「ノンバイナリー/エックスジェンダー」が1.38%。性自認が「わからない」と回答した「クエスチョニング」が0.26%でした。
また、「性自認×性的指向」では、「ゲイ」(1.59%)、「レズビアン」(1.01%)のほか、もっとも多い割合を占めたのは、「性的指向が男性か女性か変わることがある、一定ではない」、「男性・女性どちらも好きになる」「相手の性別は問わない」と回答した「バイ/パンセクシュアル」で3.20%となりました。
加えて、性別に関係なく、他者に恋愛感情を抱かない「アロマンティック」が1.43%、性別に関係なく、他者に性的に惹かれない「アセクシュアル」が1.56%、性的指向がわからない「クエスチョニング」が0.58%となりました。
なお、すべてのスコアを足すと9.7%を超えるのは、回答者の中には「ノンバイナリー」で「アセクシュアル」など、複数の性のあり方に該当する人も含まれているからです。
LGBTQ+へのインクルージョン意識は約8割。しかし、行動とのギャップがある
企業や学校、自治体などでダイバーシティ&インクルージョンの機運が高まるなか、LGBTQ+非当事者層の間でも、LGBTQ+へのインクルージョン意識が高まっています。たとえば「職場や学校などの仲間からLGBTQ+などの性的マイノリティーであることをカミングアウトされたときは、ありのまま受け入れたいと思う」と回答した人は、非当事者層の84.6%と非常に高い結果となりました。
その他にも、「LGBTQ+などの性的マイノリティーの職場や学校の仲間にも、自分らしくいてほしいと思う」が84.5%、「LGBTQ+の当事者に相談されたときはできるだけ協力したい」が77.3%と、いずれも高いインクルージョン意識が見受けられます。
しかし、実際の行動を見てみると、意識とのギャップがある様子がうかがえます。たとえばLGBTQ+の人たちへの配慮として、ジェンダー中立的な言葉を使うというものがありますが、「『彼氏、彼女』ではなくて、『パートナー』や『恋人』など性別を特定しない言葉を使うようにしている」人は、非当事者層の17.1%にとどまりました。
また、「目の前で誰かが差別的な言動をとったときは、話題を変えたり、注意をする」が36.7%、「LBGTQ+について正しく理解できるよう、情報収集や、当事者の声をしっかり聴くようにしている」が31.1%と、全体的に低い結果となりました。
LGBTQ+の人たちへのインクルージョン意識は浸透してきているものの、インクルージョンにつながる行動を実際にとっている人は、まだまだ限定的なようです。
LGBTQ+に関する取り組みを行う企業への就業意向は約6割
LGBTQ+の人たちが自分らしく働ける職場づくりに取り組む企業は年々増加しています。2022年にはLGBTQ+に関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する団体「work with Pride」が策定したPRIDE指標への応募が400社を超えました。PRIDE指標とは、職場におけるLGBTQ+に関する取り組みを評価する指標です。
LGBTQ+をサポートする企業で働きたいと思うかを尋ねる質問に対しては、「待遇や職種にかかわらず働きたい」が18.0%(当事者層21.8%、非当事者層17.6%)、「待遇や職種が他社と同条件であれば、働きたい」が42.2%(当事者層44.9%、非当事者層41.9%)となり、LGBTQ+フレンドリーな企業への就業意向は、全体で約6割となりました。当事者層の方が意向はやや強いものの、非当事者層も大きな差はありません。
さらに、「LGBTQ+支援を表明する企業」へのイメージを聞いたところ、「社会の変化に対応できる」(32.4%)、「ハラスメントが少ない」(31.9%)、「社員が働きやすい」(31.8%)が上位に入りました。こうした結果からは、LGBTQ+フレンドリーな企業は、LGBTQ+当事者だけでなく、非当事者のなかでもポジティブなイメージがもたれていることがうかがえます。
LGBTQ+の子どもを持つ親の約7割が「子どもの人生を応援したい」と回答
2023年調査では、「LGBTQ+調査」として初めて、LGBTQ+など性的マイノリティーの子どもを持つ親に対する質問を設けました。
「性的マイノリティーとしての困難はあるかもしれないが、子どもの人生を精一杯応援してあげたいと思う」かどうか聞いた質問では、「そう思う」もしくは「ややそう思う」と答えた人の割合は67.4%となりました。約7割の親が子どもの人生を応援したいと思う一方で、約3割は子どもの生き方を肯定的に受け止められていないという実情も明らかになりました。
また、「自分の住んでいる地域では、性的マイノリティーの家族がいる家庭は暮らしにくいと感じる」かという質問に対しては、「そう思う」もしくは「ややそう思う」と答えた人は56.5%となり、LGBTQ+の子を持つ親が地域での生活において不便を感じたり、課題に直面している可能性を示唆する結果となりました。
パートナーシップ制度は当事者層の住みやすさに関係しているが、周知に課題
「自分が住んでいる地域が住みやすいと感じるか」について尋ねたところ、性的マイノリティーのカップルを結婚に相当する関係とする証明書を自治体が発行する「パートナーシップ制度」の有無によって、回答に差がありました。「とても住みやすいと感じる」または「まあ住みやすいと感じる」人の割合は、制度のある自治体に住む当事者層で65.0%、制度のない自治体に住む当事者層で56.5%となり、制度ありの方が住みやすさを感じていることが明らかになりました。
しかし、パートナーシップ制度の認知はまだ低く、パートナーシップ制度のある自治体に住む回答者のうち68.5%(当事者層58.4%、非当事者層69.4%)が制度の存在を知らないという結果になりました。
パートナーシップ制度が導入されてからの期間が短い自治体も多く含まれているという事情を考慮すべきではありますが、パートナーシップ制度のある自治体では住民や企業などへの理解促進も期待されるため、LGBTQ+の当事者であるかどうかにかかわらず、周知が望まれます。
この記事でご紹介した5つのトピックに加え、「LGBTQ+調査2023」では、日常生活におけるコミュニケーション、メディア、企業に対するニーズなど、幅広いテーマでLGBTQ+当事者層・非当事者層の意識や行動について聴取しています。次回は調査結果を元に作成したデジタルブック「実はずっと聞いてみたかったこと」の内容についてご紹介します。
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