カテゴリ
テーマ
公開日: 2023/03/28

意識調査がひもとく、メタバースの広がりとビジネスにおける可能性(前編)

仮想空間やそのサービスの総称、「メタバース」。最近、このワードを耳にすることが増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。電通グループでは、グループ横断のXRテクノロジー専門チーム「XRX STUDIO」を調査主体に、一般ユーザーを対象とした「メタバースに関する意識調査」を実施。2022年に行われた第2回目においては、1回目(2021年実施)の結果と比較し、メタバースに対する認知度や興味・関心の変化について調査しました。

Transformation SHOWCASEでは、本調査に関わった電通イノベーションイニシアチブの森岡秀輔氏、株式会社 電通の金林真氏、堤史門氏にインタビュー。調査結果を踏まえ、メタバースを取り巻く現状や今後のビジネスへの生かし方などについて掘り下げていきます。

マーケットの動向を捉え、メタバース事業を促進するために

Q.金林さんには以前、いわば「メタバース入門編」のお話も伺いましたね。その際に電通グループ横断組織「XRX STUDIO」の中心メンバーとして、メタバースを活用した事業構想やマーケティング、開発、運用など一貫して行っておられることをお聞きしました。森岡さん、堤さんの社内での役割やメタバースとの関わり方についても教えていただけますか?

森岡:私は、電通イノベーションイニシアティブ(DII)のR&D推進チームに所属しており、海外スタートアップや海外ソリューションの日本市場展開のお手伝い、事業開発を主業務としています。直近では、メタバースやゲーミングの領域を担当していますね。

株式会社 電通グループ 森岡 秀輔氏

堤:私は、昨年の9月から金林さんと同じチームのXRメタバース開発部で、XR系の仕事をご一緒させていただいています。

Q.そもそも、この「メタバースに関する意識調査」を実施した経緯は何だったのでしょうか?

森岡: 2021年頃から「メタバース」がバズワード化し、電通グループ全体で「メタバースってそもそも何?」「企業はどんなふうに参画できるの?」といったお問い合わせをいただくことが増えていました。そうした中で、まずは1次データを収集し、電通グループ全体でメタバースの知見を増やしていくこと、今後の浸透策や活用方法を検討し、メタバース関連事業の促進につなげることを目的に調査を実施したいと考えました。

1年ごとに同じ内容で調査することで変化が見えてくるので、こうした意識調査は定点観測的に行うのが重要。今後も第3弾、第4弾と継続していく予定です。

Q.金林さんは電通のメタバース事業の中心的存在として活動されていますが、2021年に1回目の調査を行った時の反響や調査を行う意義について、どのように感じていますか。

金林: 2021年時点での「メタバース」というワードは、企業の間では多く語られているけれど、肝心の生活者がどのように意識しているのかは全く見えていない、という状況だったんですね。そこはクライアントさまにとっても気になる部分だと思うので、調査を通して生活者がメタバースをどのように意識していて、どのように使っているのかを明らかにしたいなと。

1回目の結果をさまざまな企業の方に説明したところ、メタバースの使い方を含めた現状を理解しやすいと、とても良い感触がありました。マーケット側の動向をしっかりと捉えて、その結果を企業の方に示していくことが、今後のメタバース関連事業を発展に導く上で重要だと考えています。

株式会社 電通 金林 真氏

メタバースの認知度は大幅にアップ。市場規模も年々、拡大傾向

Q.2回目となる今回の調査結果が既に公表されていますが、あらためて、調査結果の注目ポイントを教えてください。

森岡:まず「メタバース」という言葉の認知率に関しては、全世代を通して第1回と比べて約4倍と大幅に伸びました。さらに世代別で見ると、第1回では低かった40代、50代の認知率が他の世代と比べてもかなり伸びている。やはりビジネスシーンを含め、世の中的にも広く浸透してきていると感じますね。

森岡:一方で、「メタバース」という言葉自体は聞いたことがあっても、それに関するプラットフォームやサービスを実際に使ったことがある人は決して多くない。対して、使っている人たちはかなり使いこなしている、といったことも分かりました。メタバースを既に体験しているユーザーは、流行に敏感で自ら情報を収集するアーリーアダプターの特性を持っているということが顕著に表れましたね。

利用率はそれほど高くないとはいえ、利用者の数そのものは第1回と比べて1.4倍〜1.7倍に増加しています。年間の課金額・利用金額も1.6倍〜2.2倍で、「課金サービス年間総利用額」に至っては約3倍。この結果は、メタバースの1つの市場規模・ポテンシャルを表していると言えるかもしれませんね。これらの数字が増加しているということは、いよいよ企業にとってビジネスチャンスが出てきたのかな、と感じています。

堤:私は年齢的にはミレニアル世代になるのですが、大学時代くらいからスマホアプリやゲームに課金するのは当たり前になっていた印象です。なので、今後もっと若い世代はメタバースへの課金に対しても、ゲームをやるのと同じような感覚で、それほど抵抗感がなくなっていくのではないでしょうか。

株式会社 電通 堤 史門氏

メタバースの広がり方は?若者世代には「当たり前の存在」として浸透

Q.調査の結果を踏まえると、メタバースの認知度はわずか1年のうちに急速に広がったという印象を受けますね。ここ最近のメタバースの広がり方について、何か特徴や傾向はあるのでしょうか?

金林:メタバースの広がりは、スマートフォンが普及した時の現象に近いと感じています。短期間に何倍も利用者数が増えて、スマートフォンという概念は急速に広がっていきましたよね。でも、そこと比較した時に少し異なるのが、先ほど森岡が言っていたように、メタバースは認知こそ広がっているものの、利用者数が爆発的に伸びる段階にはなっていない、という点。私たちは今後、社会の進化や生活者の受け入れの動向によって、利用者数が一気に増えるポイントが出てくると予想していて、そこをターゲットにしたサービス展開を目指しています。

森岡:同じく注目度の高いWeb3.0、特にNFTやブロックチェーンといったところと比較すると、ビジネスシーンだけでなく、世間一般に広く浸透しているのがメタバースの特徴だと思います。一方で、特に若い世代に関しては、例えば「ゲームで遊んでいたら実はそれがメタバースだった」というように、メタバースというワード自体は意識せずに、いつもの行動・体験の延長にあるものとして広がっている印象です。

 


 

時代を象徴するバズワードとなり、将来性が期待されるメタバース。今回の「メタバースに関する意識調査」では、全世代を通じて認知が急拡大している一方、それが必ずしも実際の使用経験と結び付いているわけではない、といった現状も明らかになりました。こうした結果を踏まえ、後編ではメタバースとリアルの関係性や、今後、メタバースをビジネスにどう生かしていくべきかを詳しく聞いていきます。

※掲載されている情報は公開時のものです

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

著者

金林 真

金林 真

株式会社 電通

電通入社後、社内で初のスマートフォンメディアの取扱を担当。その後、Web制作、営業を経て現部署にて、VR/AR/MR等の最新技術を活用したクライアント向けソリューションのプランニング・開発を担当。クライアントビジネスのXRによる進化を促進するグループ横断組織「XRX Studio」を主宰。

森岡 秀輔

森岡 秀輔

株式会社 電通グループ

新卒で電通入社。新規事業開発の部署に配属後、大手飲料ブランドなどの担当営業を経て現部署。現在は海外の有望パートナー企業のソーシング・投資業務・アライアンス構築含めて日本・アジア市場における事業開発及びアクセラレーションを推進。主に3Dメディア・ゲーミング領域を担当。ACCゴールド受賞。

堤 史門

堤 史門

株式会社 電通

入社から新聞局にてメディアセールスや新聞社との協業ビジネスを経験し、2022年から現職。併せてグループ横断組織「XRX STUDIO」プロジェクトにも所属。XR・メタバースによる事業開発やイベント主催・運営を始めとした、XRによるビジネストランスフォーメーションに従事。

あわせて読みたい