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キャッシュレス・インサイト2024:生活者と店舗の両側からみる日本の最新キャッシュレス事情No.1

“6割以上キャッシュレス” が約80%!利用頻度の明確化で決済事情の実態に迫る

2024/09/11

日本のキャッシュレス利用を、より推進していくにはどうすれば良いのでしょうか?

電通で決済領域のマーケティング戦略支援を行うプロジェクトチーム「電通キャッシュレス・プロジェクト」は、キャッシュレスを取り巻く状況や、活用推進における課題を明確にするため、2023年11月、インターネットによる第6回「キャッシュレス意識調査」を実施しました。(調査概要はこちら)。

今回の調査は、2022年に行った前回調査よりもさらにキャッシュレス利用状況を厳密に規定して実施しました。キャッシュレス利用頻度の数値化によって、私たちが「本格キャッシュレス派」と呼ぶ人々の実態を解明するためです。

「本格キャッシュレス派」はキャッシュレスを受け付けている場所において、60%以上をキャッシュレスを利用して支払っているセグメントを定義したものです。

日本のキャッシュレス比率は調査の時点で4割程度。日本がキャッシュレス先進国になるためには何を解決すべきなのか、彼らの実態を検証するとともに課題の核心を探ります。

<目次>
「利用頻度」をベースにした6分類でキャッシュレス利用実態を明確化する

日常生活で、60%以上キャッシュレスを利用している層は全体の78%

本格キャッシュレス派の6割強が、直近1年間でキャッシュレスの利用回数を
 増やしている


キャッシュレス利用頻度が高い層ほど、世帯年収が高いという特性

「利用頻度」をベースにした6分類でキャッシュレス利用実態を明確化する

今回の調査では、キャッシュレス決済の頻度を数値化し、前回調査での5分類から6分類へと細分化しました。6分類の内訳は下図の通りです。

キャッシュ連載2024#1_図版01

頻度を数値化することにより、前回調査の分類で使っていた「よく(利用している)」「たまに(利用している)」という主観によって誤差が出る表現をなくしました。これで100%キャッシュレス派の人たちがどれくらいの比率いるのかが明確になると考えたからです。

同時に、6 分類のうち、60% 以上がキャッシュレスという層は「本格キャッシュレス派」、40% 以下がキャッシュレスという現金利用度が高い人たちは「現金派」と定義して、定量的に区分したうえで実態を検証できるようになりました。

日常生活で、60%以上キャッシュレスを利用している層は全体の78%

6 分類にした結果、キャッシュレスを利用できるところでは「100%キャッシュレス」を使う人たちは40.3%、日本の成人の10 人中4 人もいることも明らかになりました。続いて「80%キャッシュレス」は26.3%、「60% キャッシュレス」は11.4%でした。これらを合計した本格キャッシュレス派は78.0%になります。

前回の調査では、「ほぼキャッシュレス」が43.9%、「たまに現金利用」は25.4%。これらを合計したキャッシュレス派は69.3%だったため、約9ptも上昇したことが分かりました。

一方、現金派は前回調査の30.8%から、今回は22.0%に減少しています。今回の調査結果の内訳は、「40% キャッシュレス(60% 現金)」が6.7%、「20% キャッシュレス(80% 現金)」が8.8%、「現金しか使わない(100% 現金)」が6.5%でした。

キャッシュ連載2024#1_図版02
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります(以降同様です)。

本格キャッシュレス派の6割強が、直近1年間でキャッシュレスの利用回数を増やしている

キャッシュレスの利用推進を考えるうえで、キャッシュレス利用度の人口構成比よりも重要なのが、実際の決済場面でキャッシュレス決済の回数が増えたかどうかです。

今回の調査結果では、直近1年間で「かなり増えた」が34.2%、「増えた」が25.3%、「変わらない」が37.9%、「減った」が1.1%、「かなり減った」が1.5%となり、約6割(59.5%)が増えたと回答しています。

では、セグメント別では、どの層が決済回数を増やしたのでしょうか。「かなり増えた」に「増えた」を加えた数字で最も多かったのは「80%キャッシュレス」で、67.7%でした。次いで「60%キャッシュレス」が65.4%、「100%キャッシュレス」が60.4%と続きました。本格キャッシュレス派における増加が目立ちます。

逆に現金派の決済回数増加率は、低い状態です。「40%キャッシュレス:60%現金」の増加率は43.7%、「20%キャッシュレス:80%現金」は35.3%でした。特に本格キャッシュレス派と現金派の差が大きいのは、「かなり増えた」の回答者数。現金派は10%しかいませんが、本格キャッシュレス派はいずれも30%を超え、「100% キャッシュレス」では「かなり増えた」の回答者が45.0%にもなっています。

キャッシュレス決済比率が6割を超える層の方が、相対的に、利用回数が増えていく傾向が伺えます。

キャッシュ連載2024#1_図版03

キャッシュレス利用頻度が高い層ほど、世帯年収が高いという特性

本格キャッシュレス派の人たちは、どんな特性をもっているのでしょうか。まずは年代を見てみると「100%キャッシュレス」は若年層ほど多く、高年齢層になるほど少なくなる、というイメージが一般的なように思われます。

調査の結果でも、「100%キャッシュレス」が最も多かったのは、20代(44.1%)でした。しかし、2位につけたのは50代(44.0%)で、30 代(43.1%)は第3位でした。さらに、「100%キャッシュレス」の割合が最も低かったのは60代(39.0%)ではなく、40 代(32.5%)となったのは、これまで調査に携わってきた筆者も意外でした。

また、本格キャッシュレス派(60%以上がキャッシュレス)が最も多かったのは、やはり20代(81%)ですが、年代による差はほとんどありませんでした。性別の差においては、若年層が顕著でした。「100%キャッシュレス」は20代男性が50%に対し、女性は38%で、12ptの差がありました。30代では男性が49%、女性が37%で同様の差となっています。40代や60代では男女差はないようです。

こうした特性状況の中で、世帯年収を見ると差が顕著になります。年収1000万円以上の割合のトップは、「100%キャッシュレス」(17.6%)でした。「80%キャッシュレス」は11.1%、「60%キャッシュレス」は9.3%、「60%現金」はやや増えて12.1% となりますが、「80%現金」は8.2%、「100%現金」は6.4%と漸減します。

年収601万円以上の比率でも、キャッシュレスをよく使う層の方が、多くなる傾向にあります。言い換えると、キャッシュレス頻度が高い層ほど、世帯年収が高い、という相関関係がうかがえます。

キャッシュ連載2024#1_図版04

昨年調査の時点では、「たまに利用」層がカギとなっていましたが、今回実施した調査のこうした結果から、今後日本のキャッシュレス推進におけるコアターゲットは、利用頻度が高いキャッシュレス高関与層であることがうかがええます。

では、キャッシュレス高関与層をはじめとした各セグメントの貯蓄・ポイント意識や投資における関心はどのようになっているのでしょうか?

次回は、店舗の業種業態別のキャッシュレス利用に加えて、キャッシュレス決済と投資・資産運用の関係について考察し、今後のキャッシュレス決済推進におけるヒントを探ります。

【調査概要】
タイトル :第6回「生活者のキャッシュレス意識調査」
調査手法 :インターネット調査
調査時期 :2023年11月17日~20日
調査エリア:全国
調査対象 : 20~69歳男女1000名(人口構成に基づきウェイトバック集計を実施)
調査主体 :電通 電通キャッシュレス・プロジェクト
調査会社 :楽天インサイト

 

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