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ソーシャルデザインを育む社会制度

ソーシャルデザインの時代を生きる №6

  • 福井 崇人

2013/07/25

ソーシャルデザインを育む社会制度

ロンドンはパブリックの意識がもともと強い土地であったとも言われています。個人が寄付を持ち寄って自然保護のために土地を買い取る「ナショナルトラスト」の制度の発祥の地でもありますし、美術館や博物館は寄付によって運営され、無料で公開されています。社会をよくするしくみを、市民が自らの手で勝ち取っていたという歴史が、彼らの自信や誇りにもつながっているのでしょう。

そればかりではなく、ロンドンにはソーシャルデザインを加速する社会的な制度も充実しています。例えば、ソーシャルプロジェクトに対する税的優遇措置があるのです。NPOのような組織体系をとっていなくても、プロジェクトそのもののソーシャル性が高いと認められると、政府がそれをきちんと評価してくれるのです。 

ロンドンの街には、古着回収ボックスがあります


最近The Hub(以下、ハブ・ロンドン)という、会員制のシェアオフィスがつくられました。ここは社会課題に関心のある、個人事業者を中心とした人たちが集まり、交友し、ネットワーキングをはかるクリエーティブな場として注目を集めています。ロンドン市はこのハブ・ロンドンに20%もの出資をしていいます。更に驚くことには、国営放送BBCの社員十数名が、個人として会員登録しているというのです。情報が集まり、人がフラットにつながっていく場所はソーシャルデザインが生まれる場所でもある。政府もメディアも、こうしたムーブメントを高く評価しているのです。

日常的にソーシャルな、つまりパブリックを意識したマインドを持っているからこそ、デザインにもソーシャルが自然と組み込まれていく。デザインの可能性が理解されているからこそ、洗練されたクリエーティブな商品サービスがどんどん市場に受け入れられていく。

そのことを象徴的に表していたのが、今年のカンヌライオンズで多くの賞を受賞した「まぬけな死に方(Dumb Ways to Die)」という、メルボルン鉄道の死亡事故防止キャンペーンようにつくられた作品です。愛らしいキャラクターたちが歌って踊るこの映像作品は、シニカルな表現やブラックなユーモアを含むものでしたが、テレビを含む多くのメディアに注目され、世界中のひとに共有されたばかりでなく、実際に死亡事故の防止に成果をあげました。このように公共性が高くセンシティブなソーシャルテーマで、自由にクリエーティブが発揮されるケースは、日本ではほとんど見当たらないのではないでしょうか。クリエーティブを受けとめる社会的土壌を育てることが、ソーシャルデザインを高めることにもつながるのだと感じました。

ハブロンドンの玄関