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文脈抽出ソリューション「MINUKERU」は、どこまで見抜けるのか!?No.2

トヨタのファンはどんな人?X投稿を「MINUKERU」で見抜いてみた!

2025/06/02

2024年6月、電通は、大阪大学大学院経済学研究科 勝又壮太郎教授と共同で、テキストデータから、通常の分析では見えない「文脈」を抽出するデータソリューション「MINUKERU」(※)をローンチしました(概要はこちら)。「MINUKERU」は、個人情報を保護した状態で、アンケートや口コミなどのテキストから、いくつかの文脈をスピーディに抽出することができます。

今回は、実際に「MINUKERU」を使ってXの投稿データを分析している、トヨタ・コニック・プロ ブランドマーケティング本部の竹原章浩氏をお招きし、具体的な活用方法や「MINUKERU」の可能性についてお話を聞きました。聞き手は、「MINUKERU」の開発メンバーの一人である電通の高橋一樹氏です。

※MINUKERUは、電通側でデータを分析し、その結果に関するレポートをクライアントに納品します。また、その分析結果に基づいて、電通側で施策立案なども可能です。
 
MINUKERU


 

変化する車需要に対応するため、「MINUKERU」でXの投稿を分析

高橋:トヨタ・コニック・プロさんは、トヨタグループの変革をサポートするマーケティング企業です。昨年、私から、開発中の「MINUKERU」を紹介し、そこから一緒に下準備を行って、約15カ月分のXの投稿データを使って投稿分析を行いました。まずは「MINUKERU」を使ってみようと思われた理由や課題感、背景について教えてください。

竹原:これは当社というより自動車業界全体の課題だと思うのですが、近年、そもそも車を持つことが当たり前ではなくなってきています。車を持たない人も増えていますし、例えばサブスクやカーシェアといった形で車を利用する人も多くなっている。車の需要そのものが変わってきているんですよね。

そのような背景の中で、われわれも、単に車の需要を押し上げるのではなくて、車のさまざまな持ち方・使い方に対応した、「よりよいモビリティ社会」を実現するようなマーケティング活動をしなければならないと考えています。

その一環として重要なのが、トヨタに関心を持ち、積極的に情報発信をしてくださっている方々の声を把握することだと思ったのです。すでにトヨタのファンになっていただいているお客さまや、好意を持っていただいているユーザーの声や発信を大切にして、そこからマーケティング/コミュニケーションに生かしていきたいと考えました。

高橋:それで、「MINUKERU」を使ってみようと思ってくださった?

竹原:はい。もちろん以前からXやInstagramの投稿分析は行っていたのですが、今回は、よりきめ細やかな、解像度の高い分析を行いたいと考えていました。そんなときに、テキストデータと数値データを掛け合わせて精度の高い分析が行える「MINUKERU」を紹介していただいて、「使ってみよう」となったわけです。

ただ漠然と投稿の内容や傾向を見るのではなく、トヨタに関心が高いユーザーを抽出し、その人の趣味嗜好(しこう)による投稿内容の傾向や、フォロー数・フォロワー数、つまり影響力を見ることができると聞き、「これは面白いな」と感じて導入に至りました。

MINUKERU

投稿×プロフィール情報×フォロー数・フォロワー数の分析で、人物像が見えてくる

高橋:具体的にはどのような分析をされたのでしょうか?「MINUKERU」を使って実施した、Xの投稿分析についてお聞かせください。

竹原:まずは、「トヨタ」「アルファード」「GR86」「トヨタイムズ」など、トヨタに関連のあるキーワードを織り交ぜた投稿をしている人のアカウントデータを抽出しました。この時点で50万程度のアカウントがあり、そこからこの15カ月の間に20回以上トヨタ関連の投稿をしているユーザーを抽出して、最終的には6000アカウントまで絞り込みを行っています。

この6000アカウントについて、Xのプロフィール情報と投稿データを活用し、「どんな趣味嗜好のある人がいて、どんな投稿をしているか」を統計的に分析していきました。すると、車を軸とした投稿をする人だけでも、「車を見ることを楽しむファン」「車に乗ることを楽しむファン」「関連商品を収集するファン」「車の情報を発信するファン」などがいて、例えば「見るファン」だとモータースポーツを楽しんでいる方が多いことや、「乗るファン」だと車だけでなくバイクにも乗っているケースが多いことなどがわかったのです。

さらに、「収集ファン」の場合はミニカーをコレクションしている方が多く、「情報発信系ファン」は新車の情報をどんどん発信して反応を楽しむ傾向が強いことも見て取れました。

MINUKERU

竹原:そして、非常に興味深く感じたのが、各グループに、車だけでない趣味嗜好やポストの特徴が見られたところです。例えば「見るファン」はモータースポーツだけでなく自転車競技などにも関心が高く、実況ポストをしながら各競技を楽しむ傾向がありました。「乗るファン」はアウトドアやキャンプを趣味としている方が多いこと、「収集ファン」は、アニメ、ゲーム、鉄道、カメラといったこだわりの趣味を併せ持つケースが多いことなどが明確になりました。

このように、各グループで頻出するキーワードやポストの特徴は異なるのですが、一方で、いずれのグループにおいても「GR」「86」「スープラ」といった同様の車種キーワードが頻出しているということも分かっています。

MINUKERU

竹原:こうしてXの投稿を、より細かな粒度で、ていねいに見ていくことで、トヨタファンの人物像が見えてきました。どのグループにどんな情報を届ければ刺さるのか、ユーザーのためになるのかということもハッキリしてきたように思います。

高橋:フォロー数・フォロワー数についてはいかがでしょうか?どのように分析し、どんなことがわかりましたか?

竹原:やはり法人が運営するようなニュース系のアカウントがもっともフォロワーが多いようです。次いで、個人の方が運営しているような「情報発信系ファン」のアカウントがフォロワー数も多く、こういった方々に「車がある生活」を広めていただくというのも大事なことだなと改めて認識しています。

高橋:単純に「『見るファン(アカウント)』が多いよね」とか、「『乗るファン(アカウント)』も結構いるね」みたいなことではなくて、「アカウント数自体はそんなに多くないけど、フォロワー数が多くて拡散力が強いのは『情報発信系ニュースファン(アカウント)』なんだね」とか、「フォロー数・フォロワー数が多く似た嗜好を持つファンと密につながっているのが『情報発信系個人ファン』なんだね」とか。そういう、拡散力、影響力までわかるっていうことなんですね。

竹原:その通りです。今回の分析で、どんなグループが、どんな趣味嗜好を持つ人で、どのような文脈を持って投稿しているかがわかり、しかも、そのグループの影響力や拡散力まで可視化できました。過去に行っていた表面的なテキストデータ分析では得られなかった解像度の高い投稿分析ができ、とても満足しています。

竹原章浩

車という軸だけでない、ユーザーの興味関心に寄り添った情報発信をしていきたい

高橋:Xのプロフィールはいい意味で個性が出ていると思います。普段の投稿と、こうしたプロフィール情報を掛け合わせることで、対象グループの人物像がよりはっきりと見えてくるのが「MINUKERU」の強みですよね。

竹原:そう思います。テキストベースで、しかも匿名性の強いSNSということもあって、「20代男性」とか「30代女性」みたいな形式的なプロフィールではなく人物像が表出していて、分析してみて、改めて、「Xのプロフィール情報は分析対象としても面白いな」と思いました。

高橋:ありがとうございます。ここまでお話を伺って、「MINUKERU」が、トヨタ・コニック・プロさんでのより深いユーザーコミュニケーション立案に寄与する分析結果をもたらしたとわかりうれしく思いました。

これは私見ですが、トヨタさんって、そもそも、みんなにいい企業だと思われている会社だと思うんですよね。この状態から、さらにエンゲージメントを高めるというのは、結構、難しい課題だなと思っていて。「もう一歩深い理解を促したい」「もっと濃いネットワークやコミュニケーションを構築したい」となると、従来のやり方ではなかなか難しいんじゃないかと思っていました。

そこで、能動的なファンに光を当てて解像度高く分析できるツールとして「MINUKERU」をご紹介したわけなんですが、すごくうまくマッチしたなあと感じています。今後も、よりよいユーザー体験、高いエンゲージメント、360度エクスペリエンスの創出に貢献できるとうれしいですね。

 高橋一樹

高橋:では最後に、今後の活用の計画や展望についてお聞かせください。

竹原:現在は、分析の結果を踏まえてどんな施策を行うか検討を進めているところです。今回の結果をベースにして、どんな人に向けて、どんな情報を出すかを検討していき、実際のPRやコミュニケーションに生かしていきたいと思っています。

また、貴重なユーザーの生の声からの分析結果として、SNSだけでなく、広告、店舗での情報提供、お客さま対応、イベントやキャンペーンなどの施策にも生していきたいですね。

今回は約15カ月分のデータを使用して分析を行いましたが、同じように期間を区切って定期的に分析を行うことで、各グループのアカウントの増減やトレンドの変遷についても見ていくことができると思っています。

今は、単純に車の情報だけ出していたのではユーザーに届きづらい時代になっています。いかにユーザーの関心領域と掛け合わせ、車という軸だけでない、お客さまに寄り添った情報発信ができるかが勝負になってくる。今後も、変化するモビリティの在り方にしっかり対応できるよう、「MINUKERU」を活用して、車のある生活を盛り上げるようなユーザーエクスペリエンスを提供していきたいと思っています。

MINUKERU

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