音声広告の効果を可視化する。新ソリューション「SONATA」とは?

河田 淳
Spotify Japan K.K.

稲葉 弘明
株式会社電通
音楽ストリーミングサービスが日常に深く浸透している昨今。Spotify広告は、視覚メディアとは異なる “ながら聴取” の強みを生かし、ユーザーのモーメントに寄り添い、集中や没入を妨げずにブランドメッセージを届けられるメディアとして注目を集めています。
その効果をより確かなものにするため登場したのが、来店率や購買への貢献度まで可視化する「SONATA(ソナタ)」です。本記事では、SONATAの特徴を紹介しながら、音声広告の可能性をどのように広げていくのかを探っていきます。
Spotify広告の効果を”可視化”する
これまでSpotify広告では、来店や購買にどれほどつながったかを定量的に測る仕組みが構築されていませんでした。そこで、電通はスポティファイジャパンと、広告会社として世界初の計測パートナーシップ協定を締結し、Spotify広告への接触による定量的な効果検証、さらにはその投資対効果の可視化を可能にするソリューション「SONATA」を共同開発・リリースしました。
「SONATA」は、プライバシーを保護しながら、Spotify広告接触データを起点とし、電通が保有する生活者のさまざまな行動データをひもづけて統合分析できる計測ソリューションです。主な特徴は以下の通りで、測定・比較・改善を一気通貫で行えます。
- 広告純増効果の計測:Spotify広告の接触者データを来店・サイト訪問・購買などの行動データとひもづけたうえで、非接触群との比較による広告純増効果の算出が可能。
- プランニングにつながる多角的な分析:ターゲット別、クリエイティブ別、時間帯別など多角的に分析し、次の施策のプランニングに生かしていくことが可能。
- 他メディアとの統合検証:テレビやラジオの広告効果との比較に加え、重複リーチや重複接触効果の可視化まで可能。
- カスタムセグメント作成と効果計測の統合型配信設計:テレビ視聴データや来店データをもとに、電通独自のセグメントを作成し、Spotify広告でのターゲティングから結果分析までを統合的に実施可能。
実証事例:来店率+1.58ポイント、推定純増来店者数2万9662人、推定純増来店者CPA 178円
KDDI「Pontaパス」では、主にサービス認知拡大と某所への来店促進のために Spotifyの音声広告キャンペーンを実施しました。分析では、Spotify広告の広告接触データと来訪データをひもづけたうえで、広告接触者と非接触者の来店率を比較したところ、
- 来店率:1.58ポイントリフト
- 推定純増来店者数:2万9662人
- 純増来店者あたりの推定 CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価):178円
という結果が得られました。
こうした具体的な数値が示されることで、広告主は「音声広告がどれほど成果につながるのか」を、感覚ではなく客観的な指標として判断できるようになります。
さまざまなメディアの接触データやクライアントの1stPartyデータとの連携へ
「SONATA」はリリースされたばかりのソリューションですが、既に実データを用いた分析プロジェクトが複数進行しています。主な分析テーマは以下の通りです。
①他メディアとの重複接触効果分析
テレビ・動画・OOHなど複数メディアをまたぐ接触について、“音声×音声”や“視覚×聴覚”による相乗効果の可視化ができるようになっています。
例:
・ラジオ × Spotify広告 のクロスリーチ計測
・OOH × Spotify広告 のクロスメディア効果
②リッスンスルーCV (音声広告を聴いたユーザーによるコンバージョン) の標準化と、非クリック型ROI評価
現在の広告効果測定は、「ラストクリックモデル」に象徴されるように「クリック」を前提に成り立っています。しかし、音声広告ではクリックがなくても購買やサイト訪問につながるケースが多く見られます。SONATAでは「広告を“聴いた”ことによる行動変化」の計測が可能です。今後も、従来指標では捉えきれなかった「リッスンスルーCV」の標準化を進めていきます。
③電通とSpotifyが描く未来像:クライアント1stPartyデータ×Spotify独自データの統合分析
将来的には、広告主が保有する会員データやEC購買データと、Spotifyが持つファンダムデータや楽曲嗜好データを統合して分析できる環境の構築を進めています。これにより、たとえば“ロイヤルカスタマーと相性の良いアーティストやジャンル”を明らかにすることで、ターゲティング精度の向上や顧客理解の深化につなげることができるソリューションを目指しています。
音声広告が“計測可能な投資先”へ
音声広告はこれまで「行動につながったかを数値で示しづらい」メディアとされてきました。しかし、「SONATA」 の登場によって、音声広告は効果を可視化できるメディアへと進化しつつあります。
広告主・マーケターにとっては、これまで“感覚”や“経験”に頼りがちだった音声広告のプランニングを、確かな成果指標に基づいて最適化できるようになること。それが「SONATA」によってもたらされる大きな価値です。音声広告を“根拠ある成果指標を持つメディア”として位置づけられるチャンスでもあります。そして、Spotifyが提供する “音の体験” と、電通が持つデータ統合・計測・運用の知見が掛け合わさることで、音声広告は今まさに次のスタンダードへと歩み出しています。
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著者

河田 淳
Spotify Japan K.K.
Product and Commercial Growth
Product Marketing and Partnerships Manager, JAPAC Lead
行動科学領域にて、ヒト内分泌系と社会行動の進化に関する研究により修士号取得。株式会社フリークアウトを経て、Twitter(現X)にてSMB事業部での広告営業および代理店事業部での経営企画に従事した後、2023年にSpotify入社。入社後はデータパートナーとのマーケティングソリューション開発や、自社製品のGTM戦略の立案と実行を担当。

稲葉 弘明
株式会社電通
エンターテイメントビジネス・センター
データ・アナリスト
サービス工学領域における医療ビッグデータ解析研究により修士号を取得。入社後は、テレビ・ラジオの視聴ログ分析を通じた広告効果検証やデータソリューション開発に従事。3年目以降は領域をコンテンツへと拡張し、コンテンツプラットフォーマーのデータクリーンルーム開発や、アーティストおよびコンテンツのIPグロース支援を担当。データを起点としたIP価値の最大化に取り組んでいる。

