PR視点でメッセージは“届く”ものへ

こんにちは。電通メッセージング・パートナーズの石川眞吾です。連載第四回の今回はメッセージの「届け方」についてお伝えしたいと思います。
——社会と企業をつなぐコミュニケーション設計とは
企業が社会と向き合うとき、最初に問われるのは「どんなメッセージを発信するか」です。しかし、メッセージは“つくって終わり”ではありません。“届け方”を設計してこそ、企業が社会と健全な関係を築くことができます。
今回取り上げるのは、企業メッセージを社会へ浸透させるための「PR視点」。
コミュニケーションを“社会の動き”から捉え直しながら、実務としてどう取り組むべきかを整理していきます。

「発信したい」だけでは届かない時代に
これまでの連載で企業が伝えたい核となるメッセージづくりについてお伝えしてきました。
一方で、SNSを中心とした情報環境の変化により、メッセージは受け手側の解釈で瞬時に評価されます。
今は、“発信したいメッセージ”と“社会に受け入れられるメッセージ”の両立が不可欠になっています。ここで必要となるのが、社会からどう受け止められるかという「PR視点」です。
PR視点をつくる5つの「目」
PRは広報活動の枠を超え、企業と社会の関係価値を高めるコミュニケーション戦略へと進化しています。つまり、PR視点とは、“社会の目で企業を見る”ことです。今回は、企業と社会をつなぐ5つの視点をご紹介します。

1. 蟻の目:ファクトとバリューを拾う(マーケティング発想)
まずは、自社の「事実(ファクト)」をひとつずつ拾い集めることで、自社のバリューを可視化させる視点です。抽象的な理念ではなく、具体的・定量的な価値を棚卸しすることで、メッセージに説得力が生まれます。
連載三回目の記事で言葉の「棚卸し」に触れていましたが、ファクトについても、製造工程・サービス体験・データ・内部資料などを幅広く確認し、ファクトと価値を分類しながら可視化することで何をアピールすべきなのかが見えてくることがあります。
これらのファクトと開発したメッセージを重ねてみることで、メッセージを社会に理解されやすい言葉へ言い換える材料にしていきます。
2. 鷹の目:社会の期待を俯瞰する(社会発想)
次に社会全体が企業に何を求めているかを俯瞰(ふかん)し、企業メッセージと“社会的期待”を接続させる視点です。メッセージが社会にいかに受け入れられるかを見極めるための重要な工程になります。
セッションやワークショップを通して社会潮流・世論・政策・業界トレンドを総覧し、自社に影響するテーマを抽出します。その際に社会視点と企業メッセージの整合性を確認し、社会の視点を取り入れた言い換え・再編集を行っていきます。
3. 魚の目:近未来の課題を読む(未来発想)
水流の変化を読むように、未来に起こる社会課題と企業のアクションを接続する視点です。
想定される「未来社会に起きうる課題」や「未来の生活者インサイト」などのインプット情報から未来のくらしを可視化し、自社が未来の課題にどのように対応すべきかを選定します。自分たちが「どんな社会を目指し、どんな約束をするか」を言語化することで、未来アクションとメッセージを接続します。
連載三回目に「メッセージングは未来への地図」という言葉がありましたが、未来社会の課題と接続することで地図のゴールにナビゲートするイメージです。
これだけではなく、電通未来事業総研と連携することで未来に向けた新規事業開発をお手伝いするケースもあります。
4. 虎の目:メディアの評価軸を読む(マスコミ発想)
獲物を狙うように鋭い目でニュース性を狙う視点です。はメディアの理解を得られるようなアウトプット設計を行うということでもあります。
手順としては社会性・新規性・公共性・意外性などのメディアが報道したくなるような基準を整理し、自社の活動をその軸に照らし合わせて、報道される“切り口”を特定します。そのうえで、メディアが語りたくなるストーリーを設計するために「背景→社会課題→企業の取り組み→未来」構成で情報コンテンツを組み立てていきます。
マスメディアやネット系メディア、専門媒体などで興味関心のポイントが異なるため、彼らが「どこに興味を持つか」がストーリー設計のカギになります。
5. 猫の目:変化する環境に柔軟に対応する(テクノロジー発想)
SNS、AIなど、コミュニケーション環境は頻繁に変化します。その変化に機敏に反応し、「最適な届け方」を選ぶ視点です。
近年は企業側も自社サイトや自社運営SNSを通じて自らの言葉で発信することが増えてきており、SNS、動画、検索、コミュニティなどの変化を解析してチャネルごとにどういったメッセージが受け入れられるかを整理しています。「YouTube向け」「ニュースメディア向け」など、メッセージをどのチャネルでどう見せるかを最適化することで、メッセージが社会からより受け入れられやすいものになっていきます。
これらの5つの視点を掛け合わせることで、メッセージは以下の状態へ進化します。
- 事実に裏付けられ
- 社会潮流に沿い
- 未来を見据え
- メディアから評価され
- テクノロジーと共に広がる
この視点に沿ってメッセージを磨き上げることで、企業の“姿勢”が社会に“伝わる”ものになっていきます。
メッセージを浸透させるために
メッセージの価値を最大化するためには、自社の内外にメッセージを広げるプロセスが欠かせません。ここではメッセージ浸透のための代表的な手法を3つご紹介します。
1. トップの言葉で語る(トップ発信)
経営トップが語る言葉には、他にはない重みがあります。
トップコミュニケーションは、「自分の言葉で語れる状態にする」「社会が受け止めやすい形に編成する」ことで、信頼と説得力が高まります。そのために、トップ向けのスピーチトレーニングなども支援しています。
2. 社員が“自分ゴト化”する(インナー浸透)
社員が「自分の言葉で語れる」ようになった瞬間、メッセージは組織文化となります。
ワークセッションや社内向けにガイドラインやクレドブックの作成などを通して、自社の社員がメッセージを語れるようになる文化を醸成します。
3. メディア・顧客へ広げる(アウター発信)
5つの視点の部分でも触れましたが、メディアには“記事にしたくなる理由”を、顧客には“共感と体験”を提供していくことでメッセージは社会の中に広がります。記者に興味を持ってもらうニュースバリューの抽出や顧客向けの体験・コンテンツの設計によって、メッセージは社会の中へ自然に広がります。
社会と共鳴するメッセージへ
企業のメッセージは、単に伝えるだけでは受け止めてもらえません。
- 企業の事実
- 社会の期待
- 未来の課題
- メディアの視点
- コミュニケーション環境の変化
これら5つの視点を掛け合わせて初めて、社会と企業が“共鳴”するコミュニケーションが生まれます。
メッセージング・パートナーは、メッセージの設計から浸透まで一貫してサポートし、企業の「声」が社会の中で確かな意味を持つよう伴走していきます。
電通メッセージング・パートナーズ
Email:messaging@dentsu.co.jp
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著者

石川 眞吾
株式会社 電通
第4マーケティング局 未来シナリオコンサルティング部
シニア・コンサルティング・ディレクター
電通入社後、新聞局で広告・編集・データベース支援などさまざまな側面から報道の現場に関与し、その支援、交渉業務に携わる。 2021年より現在の第4マーケティング局に所属。企業のリブランディング支援、選挙時のSNS対策支援、コーポレート広報の支援、政府広報のニーズ調査分析業務。他、実績多数。


