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言葉をつなげば、地図になる。企業を未来へ導くトップメッセージの「つくりかた」

(左から)伊藤健一郎 コピーライター、小林麻里絵 コピーライター、中山計 コピーライター、石川眞吾 PRプランナー、大川淳子 PRプランナー、高橋慶生 コピーライター、庄形和也 プロデューサー、中西夏奈子 コピーライター、廣瀬大 コピーライター

こんにちは。電通メッセージング・パートナーズの小林麻里絵です。連載の第三回となる今回のテーマは、「つくりかた」。
企業を未来へ導く力強いトップメッセージは、どんな順番で、どんな対話や思考を経て、ひとつの言葉としてかたちづくられていくのか。その流れを、ていねいにひも解いていきます。

電通メッセージング・パートナーズでは、企業やトップの方の状況に合わせて、さまざまなプロセスをご用意しているため、今回はその中から王道ともいえるアプローチをご紹介いたします。

まずは、“言葉の棚卸し”から

プロジェクトのはじめに私たちがまず行うのが、コーポレート領域の言葉を俯瞰(ふかん)して整理する、“言葉の棚卸し”です。なぜ、この工程が大切なのか。それは、多くの企業で言葉がすでに「あふれている」からです。

コーポレート領域の「トップメッセージ」と呼ばれるものには、たくさんの種類があります。企業理念、ビジョン、コーポレートスローガン、行動指針、年度方針、社長メッセージ……。けれど、その一つ一つの役割や目的が明確でないまま量産され、バラバラに並んでいる、ということも実は珍しくありません。

「あれ、うちの会社また新しいスローガン出してる」
「えっ、あの方針って使わなくなったの?」
「キーワードが多すぎて、逆に一つも覚えられない」……
皆さんの会社でも、そんな声を耳にされたことはないでしょうか。

言葉は、特別な設備や原料がなくても、生み出せてしまえるもの。だからこそつい、設計思想のないまま増やしてしまい、結果的に、そのどれもがスルーされてしまう。トップメッセージの「あるある」とも言える状況です。

けれど、普段の生活でも、口数が少ない人の言葉が不思議と心に残ることがあるように、企業のメッセージも、「多ければ良い」わけではありません。数をそろえることよりも、「なぜこの言葉があるのか」。その理由を語れる言葉だけが、息の長いメッセージとして育っていきます。

だからこそ、メッセージングの起点として、社内に点在するピースを取り出し確認する、“言葉の棚卸し”が欠かせません。

この“棚卸し”に取り組む時に、よくこんな質問をいただきます。
「企業メッセージの体系って、どういう構造が正解なんでしょう?」
「何と何がそろっていればいいんですか?」
この問いに対して私たちは、
「コーポレートの言葉の枠組みに、絶対の正解はありません」とお答えしています。

もちろん「ミッション・ビジョン・バリュー」をはじめとした、オーソドックスなフレームはあるため、フィットするものがあれば使えば良いのですが、決してそのすべてを「埋めなければいけない」ということはありません。

ゴールから歩き方まで、道順を丁寧に指し示したい会社もあれば、大まかな方角だけを決めて、あとは従業員に委ねたいという会社もある。企業の文化や歴史、従業員の方々の気質、これまでの言葉の積み重ねなど、会社が置かれる状況によって完成図は違って当然だと、私たちは考えています。

だからこそ、既存のピースを見せていただきながら、どんなところに課題を感じ、どこまでを言葉として語りたいのかをお伺いし、“言葉の棚卸し”を一緒に進めさせていただきます。スピーチライティングの場合も同様に、過去の言葉を振り返りながら、今本当に必要なメッセージのありかたを探っていきます。


“ミッシングピース”の、輪郭を明らかにする

今ある言葉を棚卸しし、関係性を見つめなおすと、だんだんと「欠けているピース」が見えてきます。

たとえば、
「目指す世の中の姿は明確でも、そこでの自分たちの役割が描けていない」とか。
「行動指針が立派すぎて、実際の動きに落とし込みづらい」とか。
「今の会社のステージに合った、具体的なメッセージが欠けている」とか。

こうして見つかった言葉の“ミッシングピース”が、「今回あらたにつくるべき言葉/磨きなおすべき言葉」になります。
その上で、ピースに必要な要件についても、いくつかの視点で整理していきます。

  • 社内向けのメッセージなのか。社外向けなのか。もしくはその両方なのか。
  • 永続的に使うものなのか。期間限定なのか。
  • 普遍的であるべきなのか。キャッチーさが必要なのか。

などなど、確認点は多岐にわたります。

もちろん、実際に言葉を書き、具体案をつくることで見えてくる部分も多くありますが、できるだけこの「設計思想」の段階で事前にすり合わせをすることで、本当に使える、強いトップメッセージが生まれていきます。

“対話型セッション”で、ピースを磨き上げていく

「設計思想」を固めた上で取り掛かるのが、素材集めです。共有されている情報だけでは足りないとき、私たちが実施するのが、皆さんの考えや思いを引き出す対話型セッションです。

ここではいくつかの刺激材をご用意しながら、企業の中、経営者の中に眠る言葉のヒントをお伺いし、点と点を線でつないでいきます。セッションの方法は、メンバーによっても個性が出るところですが、筆者である小林が大切にしているのは、「さかのぼる」と「深掘る」という二つの視点。

コーポレートメッセージなら創業時の話、トップスピーチならその方がこの仕事を始めたきっかけなど、「そんなこと、今回のテーマと関係ある?」ということも含めて、「さかのぼる」。
今ある事業にどんな展望を託されているのか、会社として10年後・100年後どうありたいのかなど、公式に語られていることからさらに踏み込み、取り繕わない本音を語っていただきながら、「深掘る」。
この二つのアプローチで、経営トップやご担当者との対話を繰り返し、ピースの素とも言える素材を丹念に揃えていきます。

こうしたセッションを経て、いよいよ「トップメッセージ」をかたちにする上で欠かせないのが、「使いやすさ」という視点です。タグラインやビジョンなら、従業員の方々が、「これ、自分たちのことだ」と思えるかどうか。スピーチなら、トップが自分の声で本音として語れるかどうか。従業員をはじめとした聞き手が、「そんな言葉が聞きたかった」と心から思えるかどうか。

いくら一片としての完成度が高くても、はめ込んだ時に、しっくりこないピースは使われません。現場でしっかりと機能する言葉。繰り返し、口にしたくなる言葉。企業活動の制約になることなく、むしろ幅を広げてくれる言葉。企業の一部となり、「自分たちの言葉だ」と思っていただける言葉が、私たちが目指す「メッセージング」です。


組みあがったピースは、“未来への地図”になる

ここまでご紹介してきたのは、私たちが日々取り組む、トップメッセージの「つくりかた」の一例です。

まずは、すでにお持ちの言葉を丁寧に“棚卸し”する。次に、“ミッシングピース”を見つけ出し、そのピースの“設計思想”を丁寧にすり合わせる。そして、“対話型セッション”を通じて、ぴったりの一片として磨き上げていく……。

こうして生み出された言葉のピースが、意味を持って配置された時、そこに浮かび上がるのは、「その会社だけの地図」だと、私たちは信じています。たまにしか見返さず何が書かれていたかすら忘れてしまう、そんな「額縁に入った絵」ではなく、使う人が主役となり、時には会社の変遷とともに見直されていく、「自分たちだけの地図」。緻密に設計され、つくりこまれたメッセージには、そんな力が宿ります。

言葉だけで、すぐに何かを変えることは難しい。けれど、よりどころとなる「地図」を手にして、従業員の皆さんが歩まれた時、企業は、今よりもっと遠くまで進んでいける。私たちはそんな光景を、何度も目の当たりにしてきました。

冒頭でも触れたように、言葉は並べるだけならそう難しくないものです。だからこそ、企業が掲げるトップメッセージにも、どこかで聞いたような言い回しや、時代のバズワードが集まりやすい。けれど、それではあまりにももったいないと、私たちは思うのです。

個人の個性が大切にされる時代になったように、企業にも一社一社にしかないオリジンがあり、強みがあり、魅力があるはずです。その“企業の個性”を見える形にし、未来へと花開かせる第一歩として、「自分たちの言葉」で紡がれたトップメッセージは、大きな力になります。

これからどこへ向かっていくのか。何を大切にして歩いていくのか。

そんな道しるべが必要なとき、ぜひ、私たち電通メッセージング・パートナーズを思い出していただき、“未来への地図”を一緒につくらせてもらえたらうれしいです。


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電通メッセージング・パートナーズ
Email:messaging@dentsu.co.jp

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著者

小林 麻里絵

小林 麻里絵

株式会社 電通

第2ビジネス・トランスフォーメーション局

コピーライター

電通入社後、ブランディング部門を経て、経営×CR領域へ。法人の個性が輝く未来を目指し、タグラインやビジョン、トップスピーチなど、コーポレート領域のメッセージライティングを担っている。仕事のモットーは、「KPIは、涙」。経営トップの“言葉の力”をサポートする「電通メッセージング・パートナーズ」のメンバーとしても活動中。

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