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連載アイコンSTARTUP GROWTH TALK [10/10]
公開日: 2026/05/18

スタートアップの事業成長を加速させる、CEO×VC×伴走パートナーの共創

市川 紘

市川 紘

株式会社Facilo

湯浅 エムレ 秀和

湯浅 エムレ 秀和

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社

長谷 祐之

長谷 祐之

株式会社電通

スタートアップの成長を支援する電通メンバーが、起業家や経営者、投資家らと共に事業成長のリアルをひもとく連載「STARTUP GROWTH TALK」。

今回は、不動産仲介領域のDXに挑むFacilo(ファシロ)代表取締役CEO市川紘氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP) パートナー 湯浅エムレ秀和氏、電通スタートアップグロースパートナーズ(SGP)長谷祐之が座談会を実施。

「生活者向けプロモーションを起点に、不動産仲介会社の行動変容を促す」という挑戦的な施策を軸に、三者がどのように出会い、伴走しながら事業成長を加速させてきたのか、その舞台裏を語り合いました。

【株式会社Facilo】

「住みかえを軽やかに、人生を鮮やかに。」をビジョンに掲げ、日本の不動産取引をよりスムーズに、住みかえをより身近な選択肢へと進化させることを目指すスタートアップ企業。不動産取引のプロセスをクラウドで一元化・可視化し、営業の価値を最大化するとともに顧客体験の質を向上させる不動産コミュニケーションクラウド「Facilo」を開発・提供する。

不動産仲介の“体験”を再設計するFaciloの挑戦

長谷:お二人とは普段から密にコミュニケーションを取らせていただいていますが、こうして改めてじっくりお話しできる機会をいただけてすごく光栄です!スタートアップの皆さんや、スタートアップを支える方々にとって、事業成長やプロモーションのヒントが少しでも得られる座談会にできればと思っています。リスペクトしているお二人を前にしてちょっと緊張していますが(笑)、ぜひ楽しく進められたらうれしいです。

はじめに、改めてFaciloの事業内容について教えてください。

市川:Faciloは不動産仲介会社向けのSaaSを開発・提供しているスタートアップです。2021年に創業し、現在は5期目に入ったところです。当社のプロダクトは仲介会社の事務作業やバックエンド業務を効率化することに加え、そこで整備された情報を、その先にいる物件の買い手・売り手に対して、分かりやすく届けられる仕組みになっています。仲介会社の生産性向上に加えて、エンドユーザーの顧客体験まで支援できる点が、Faciloらしさだと思っています。

購入・売却・賃貸・事業用の4領域でプロダクトを展開。不動産仲介における顧客コミュニケーションと業務プロセスを一元化・可視化し、業務効率化と顧客体験の向上を同時に実現する

長谷:実際に初めてプロダクトを触らせていただいたとき、めちゃくちゃ使いやすいなと感じました!僕自身、家を買うときに使いたかったなと思うくらいで、UI/UXの完成度の高さにはかなり驚きました。

市川:そう言っていただけるとうれしいです!現在は大手から地域密着型の不動産会社まで導入が進み、店舗数でいうと約2500、営業ユーザーは1.5万人ほどに広がっています。おそらく都内で物件を探されている方であれば、知らないうちにFaciloのマイページを使って提案を受けているケースも、かなり増えてきていると思います。

長谷:かなり身近な存在になってきているんですね。市川さんのこれまでのキャリアについても教えていただけますか。

市川:新卒でリクルートに入社し、SUUMO事業部に配属されました。営業からスタートして、その後はプロダクトや経営企画、事業開発といった領域を経験しています。約8年間在籍しました。

その後、2016年にアメリカ・サンフランシスコに移り、不動産テック企業のMovotoに参画しました。CFOとして経営に関わるほか、不動産仲介会社の立ち上げも担当し、物件探しという入り口から住み替えまで含めた一気通貫の顧客体験を提供するエンドtoエンドのビジネスモデルに取り組んでいました。

その会社が2020年にM&AでEXITし、しばらくPMI(Post Merger Integration)にも携わったのですが、次は自分で事業を立ち上げたいと考えるようになり、日本に戻ってFaciloを起業しました。

Facilo 市川紘氏

長谷:ご経歴を伺うと、今の事業につながる必然性がすごくありますね。では続いて、エムレさんお願いします。

エムレ:当社は日本を拠点とする独立系VCで、現在は700億円規模のファンドを運用しています。BtoB・BtoCを問わず、テクノロジーやインターネット領域を中心に、これまで200社以上のスタートアップに投資してきました。多くの投資先に対してボードメンバーとして関わり、IPOやM&AといったEXITまで、ステージに応じた支援を長期的に行っています。Faciloには2024年にシリーズAラウンドでリード投資を行い、私は社外取締役として経営課題の解決を支援しています。

GCPは、時価総額1000億円を超える企業を継続的に生み出していくプラットフォームになることを目指しています。そうした中で、Faciloのように大きな産業に対して本気で進化を促そうとしている会社に出合えるのは、私たちとしてもすごく面白いですし、やりがいを感じる瞬間でもありますね。

グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)  湯浅エムレ秀和氏

長谷:改めて伺うと、やっぱりGCPさんはトップクラスのスケール感がありますね……!われわれ、電通スタートアップグロースパートナーズ(SGP)は、スタートアップの成長フェーズに応じて、事業・マーケティング・コミュニケーションの観点から伴走する、スタートアップ支援に特化した専門チームです。単発の施策提案ではなく、課題整理から実行まで中長期的に伴走するのが特徴で、スタートアップが次の成長局面に進むための推進役として、事業に深く入り込みながら支援させていただいています。

電通 スタートアップグロースパートナーズ(SGP) 長谷祐之

巨大市場・強いチーム・伸びるプロダクト。GCPが見たFaciloの可能性

長谷:続いて、市川さんとエムレさんの出会いについてお聞きしたいです。お二人はアメリカで出会われたんですか?

エムレ:いえ、日本でしたよね。

市川:はい。アメリカから帰国し、Faciloを立ち上げて1〜2年経った頃ですね。ただ実は、アメリカ在住時に現地の不動産テックに関する情報をブログで発信していたのですが、そのブログをエムレさんが読んでくださっていたと、後から知りました。

長谷:そのブログが最初の出会いだった、と。

エムレ:そうなんです。不動産テック領域をリサーチする中で、市川さんのブログにたどり着きました。日本からユニコーン企業を輩出することに貢献したいと考えると、まずは大きな産業に向き合う必要があります。その点、不動産業界は非常に魅力的な市場なので注視していましたし、その中でも市川さんの情報発信は「面白いことをやっている人がいるな」と当時から注目していました。

長谷:そこから実際にお会いする流れになったのは、資金調達のタイミングですか?

市川:はい。2022年のシードラウンドの調達の際に、ほかのVCの方からご紹介いただきました。当時はまだ立ち上げ期だったので、シリーズA以降が主戦場のGCPとは少し距離があるかなと思っていたのですが、将来を見据えてつないでいただいたのが最初です。

エムレ:私たちは投資判断において「市場・チーム・プロダクト」の3要素を重視しています。Faciloは市場もチームも非常に魅力的でしたが、プロダクトについては、実際に市場でどう受け入れられるかを見極めたいと考えていました。その後も継続的にコミュニケーションを取りながら進捗を追い続け、「今だ!」と思ったタイミングでシリーズAのリード投資を決めました。

長谷:Faciloさんのチーム規模って、当時はどれくらいだったんですか?

市川:最初にエムレさんにお会いした頃は5〜6人くらい。投資をしていただいたシリーズAのタイミングでも12人程度でした。

長谷:なるほど。エムレさんがそのタイミングで「チームがいい」と判断されたのは、どんな点だったのでしょうか?

エムレ:DXにおいて重要なのは、業界解像度とプロダクト開発力の掛け合わせだと考えています。不動産仲介のような業界は専門性が高くプロフェッショナルの集団なので、表面的な業界知識では通用しません。業界理解が深く、さらにその課題解決をテクノロジーで実装できるチームであることも重要です。Faciloはその両方を備えていると感じました。

市川:当時の開発は、CTOの梅林とエンジニア数名で回していました。梅林はまだサンフランシスコに住んでいたので、日本とアメリカで開発を分担することで、時差の関係でほぼ24時間開発が進むような体制に。夕方にお客さまからいただいたフィードバックが翌日の朝には反映されているという、なかなかのスピード感でプロジェクトを進めていました(笑)。

エムレ:すごいですよね。そのようなスピードやプロダクト改善へのこだわりは、今も変わらない印象です。

市川:はい、そこはかなりこだわっている部分です。現時点のプロダクトの完成度だけでなく、「このスピードで改善され続けるなら、今後もっと良くなる」という期待も含めて評価していただいていると感じています。

長谷:僕らもご一緒していて、そのスピードには驚きました。チャットのレスポンスも早いですし、経営陣の皆さまの意思決定も早いので、こちらも負けていられないなと(笑)。

市川:スタートアップにとってスピードは一番の差別化要素なので、そこは組織としてもかなり意識しています。定例会議を減らしたり、社内向けの資料を“パワポ禁止”にしたり、さまざまな工夫によって一番大事なコア業務に集中できるように設計しています。

エムレ:そういうカルチャーも含めて、すごく魅力的だなと感じましたね。

長谷:逆に、市川さんから見たGCPの印象はいかがでしたか?

市川:国内トップクラスのVCですし、アーリーステージの私たちにとってはまだお会いするのは早いかなと思っていました。ただ実際にお会いしてみるとすごくフラットで話しやすく、早い段階から真剣に向き合っていただけたのが印象的でした。

長谷:そこから投資判断に至るわけですが、決め手になったポイントはどこだったのでしょうか?

エムレ:基本的には先ほど挙げた「市場・チーム・プロダクト」の3要素で判断するのですが、特にプロダクトの魅力は大きかったです。実際に、初めてお会いしてから1年強の間で、かなりのスピードで企業への導入が進んでいました。Faciloのプロダクトの強みは、既存の業務を効率化するだけでなく、顧客体験の向上や売上の向上という新しい価値を生み出している点です。業務効率化にとどまらず売上にも直接貢献するプロダクトは、投資目線でも非常に魅力的です。その手応えが明確に感じられたので、「ぜひご一緒したい」と思いました。

長谷:実際に仲介会社からの反応はどんな感じだったんですか?業界的にはテクノロジーに対する抵抗感も強そうなイメージを持っていたのですが……。

市川:かなり手応えを感じました。その理由の一つは、既存の業務フローそのものを大きく変える設計にはしていないことです。デジタル化というと、これまでのやり方を一気に置き換えるイメージを持たれがちですが、それだと現場ではなかなか定着しません。Faciloは、不動産仲介の現場でこれまで行われてきた業務の流れを踏まえた上で、その一つ一つをより便利に、より分かりやすくする形で設計しています。

実際、導入を判断される管理職の方からは、いい意味で「自分が営業の頃に欲しかった!」「これがあればもっと成果を出せたのに!」と怒られることもありました(笑)。現場の営業の方からも、「かゆいところに手が届く」「こういうのが欲しかった」といった声をいただいています。

長谷:うれしい反応ですね!ちなみにエムレさんは、シリーズAから社外取締役として関わられていますが、どのように伴走されているのでしょうか?

エムレ:月次の取締役会で事業の進捗と意思決定の議論を行うのが基本です。スタートアップは判断のスピードが重要なので、市川さんから持ち込まれるテーマに対して、その場で議論していく形ですね。加えて、採用支援など必要に応じてリソースも提供しています。

「テレビCM、やめませんか?」から始まった本音の議論

長谷:僕が市川さんにお会いしたのは、2024年末頃でしたよね。エムレさんチームから「ぜひ一度会ってほしい」とお声がけいただいたのがきっかけだったのですが、そもそもどんな背景でこの話が生まれたのでしょうか?

市川:きっかけは「次の成長をどう加速させるか」を考えたことでした。2024年は組織も12名から50名ほどに拡大し、プロダクトも順調に伸びていました。ただその一方で、さらに成長を引き上げる打ち手が必要なのではないかという問題意識がありました。

そこで考えたのが、BtoB営業以外のアプローチです。現場では物件購入を検討しているエンドユーザーの方が、仲介会社にFaciloの画面を見せて「これ使えないんですか?」と尋ねるケースが出てきていて、そこからの問い合わせはほぼ受注につながっていました。この動きを意図的につくれないかと考えたのが出発点です。エンドユーザーに認知されることで、Faciloを導入している仲介会社が選ばれる状態をつくる。BtoCを起点にBtoBを動かす、という発想でした。

ただ、BtoCのプロモーションは自分たちの専門ではないので、そこを一緒に考えてくれるパートナーを探していた、という流れですね。

エムレ:この課題は、Faciloに限らず多くのBtoBスタートアップで共通しています。大手企業には直接アプローチできるのですが、中小企業や地方への展開は難しい。そこをどう突破するかは、われわれVCとしてもずっと考えているテーマでした。その解決策の一つとして「BtoCからBtoBに還流させる」というアプローチは面白いですし、実現できれば他の投資先にも応用できる可能性がある。そういう期待もあって、スタートアップのプロモーション支援を得意とする電通SGPに相談したんです。

長谷:お声がけいただいたときは、僕自身すごくうれしかったのを覚えています。実は以前からエムレさんのポッドキャストの大ファンだったので、まさか直接ご相談いただけるとは思っていなくて(笑)。

「なんでもやります!」という意気込みですぐにチームをつくったのですが、最初に注力したのはとにかく業界理解でした。不動産業界のことを何も知らなかったので、現場の実態を知るために不動産会社に勤めている実弟にヒアリングをしたり、実際に街の不動産会社に足を運んだりして、仮説をもって初回の提案に臨みました。そのときに大きな論点になったのが「テレビCMをやるべきかどうか?」でしたよね。

市川:そうですね、まさにそこが最初の分岐点でした。

長谷:「テレビCMをやりたい」というご相談だったのですが、初回の提案で「テレビCM、やめませんか?」とお伝えしましたよね。ご相談の内容を否定する形にもなるので、内心かなり緊張していたのですが……。

市川:そうだったんですね。そこが、むしろ一番信頼できたポイントでした。正直、最初は「電通さんがわれわれのようなスタートアップにどこまで向き合ってくれるのか?」という不安がありました。しかし、実際には地に足のついたリサーチをされた上で、「今は、テレビCMは違うと思います」とはっきり言ってもらえた。それがすごくポジティブに映りましたし、「このチームと一緒にやりたい」と思う決め手の一つになりました。

長谷:そうおっしゃっていただけて安心しました……!僕らとしても、単にテレビCMをつくって流すことが目的ではなくて、事業成長につながるかどうかを基準に考えていました。そこで初回提案では、BtoB向けの施策をメインで提案させてもらったんですよね。

市川:はい。皆さんの真摯な姿勢に応えたいという思いもあって、ご提案いただいた内容に対してこちらもかなり率直にお話ししたんですよ。「BtoBは自分たちでやるので、電通さんにはBtoCの設計とクリエイティブに集中してほしい」と。少し踏み込みすぎかなとも思ったのですが、せっかくオープンに議論できていたので、ストレートに思いをお伝えしたんです。

長谷:僕らとしても、あの場でそこまではっきりと言っていただけたのは、本当にありがたかったです。そのおかげで腹を決めて、「BtoCtoB」のプランニングに集中することができましたし、そこから一気にプロジェクトが進んだ感覚があります。

共創で生まれた攻めのクリエイティブで事業成長に貢献

長谷:ここからは、実際のプロジェクト進行について振り返りたいと思います。今回の取り組み、率直に言ってかなりチャレンジングでしたよね。

エムレ:そうですね。王道のBtoBマーケティングではなく、生活者へのコミュニケーションを起点に、仲介会社側の行動変容までつなげようとした。私たちとしても、投資先でほとんど経験のないアプローチでしたし、うまくいけば素晴らしいユースケースになるけれど、本当に成立するのかはやってみないと分からないというものでした。

長谷:僕らも、難易度はかなり高いと感じていました。だからこそ注力したのは、「誰に何を伝えて、どう行動を変えたいのか」という全体設計。生活者がFaciloの価値を理解できるようにキャンペーンサイトを用意し、その上でウェブCMやPR発表会、SNSキャンペーン、NewsPicksでの情報発信などを組み合わせながら、認知から理解、行動までのジャーニーを段階的に設計していきました。さらに、店頭で活用できるチラシや動画なども含めて、不動産仲介会社側にもアプローチする手段もご提案しました。

市川:最初は「本当にやるのか」も含めてフラットな状態だったんですけど、初期提案の段階でクリエイティブ案まで見せていただいて、「これならやる意味がある」と思えたのが大きかったです。

実行フェーズに入ってからは、PR発表会の設計やウェブCMの制作、キャスティング、撮影、各施策の進行まで、かなり幅広くリードしていただきましたし、長谷さんがハブになって全体を回してくれたのが印象的でした。

長谷:毎週の定例に加えて、分科会もかなり多かったですよね。タスクを細かく分解して、こまめに進捗を確認しながら進めていきました。

市川:かなり短期間で複数の施策を並行して進めたので、あのプロジェクトマネジメントは本当に助かりました。長谷さんは、ほぼ社員のような動き方をしていましたよね(笑)。

エムレ:FaciloのCOO・浅岡さんからも、「長谷さんが社員みたいに動いてくれている」という話を何度も聞きましたよ(笑)。

長谷:めちゃくちゃうれしい……!僕自身、Faciloの社員になったつもりで駆け回っていたので、とても励みになります!市川さんや浅岡さんが、その場ですぐに意思決定してくださるので、こちらもすごくやりやすかったです。本音で議論できる関係性だったからこそ、タイトな進行にもかかわらずスピード感を持ってスムーズに進められたと思っています。

市川:最終的に完成したクリエイティブもすごく良かったです。特にバッテリィズさんを起用したウェブCMは印象に残りました。今回は生活者に不動産購入における不便なことを伝えながらも、実際の顧客である仲介会社を揶揄しないようにするという難しさがあったのですが、「紙の山から頭を出す」というユニークな演出と、エースさんの「ピュアに鋭いことを言う」キャラクターがうまくハマったと思います。一般の方が見ても面白いですし、業界の方が見ても「あるある」と感じてもらえる、ギリギリのラインを実現できたのが良かったですね。

実際、不動産仲介会社の方々からも「このチラシを配りたい」「店舗でCMを流したい」といった声が相次いでいて、BtoC向けの施策でありながら、B側からも反響が得られたのはうれしかったです。

エムレ:仲介会社の方にも刺さっていたと思いますね。紙のやり取りに対して課題感を持ちながらも、なかなか変えられていなかった部分を、うまく代弁していたというか。

市川:そうですね。商談中の案件の受注率が上がったり、問い合わせが増えたりと、明確な変化はありました。もちろん、一気に世の中が変わったわけではないですが、少なくとも市場に対する働きかけとしては、大きな一歩だったと思います。

長谷:それは本当にうれしいですね。事業の前進につながっているのがSGPとして考える一番の成果です。

バッテリィズがスペシャル物件を提案する「バッテリィズ不動産キャンペーン」を展開

エムレ:投資家の立場で言うと、やはり成果が出ていることが重要です。今回は認知や受注率に良い影響が出ていますし、次の投資判断もしやすくなりました。まだ市場には大きな余白がありますし、その中でこうした打ち手が機能することが見えたのは大きいですね。

市川:加えて、当社としてはこのプロジェクトをやり切れたこと自体も大きかったです。全社を巻き込んでここまでのプロモーションを実行した経験は、確実に組織の力になっていると感じています。

スタートアップ・投資家・伴走パートナーの共創で、日本のDXを前に進める

長谷:今回ご一緒したことで、僕らとしてもBtoCからBtoBへ還流させる取り組みの手応えや学びがかなり得られました。その上で、ここから先をどう広げていくのか、ぜひお聞きしたいです。市川さん、今後のFaciloのビジョンについて教えていただけますか。

市川:当社は「住みかえを軽やかに、人生を鮮やかに。」というビジョンを掲げています。日本の住み替えは、まだまだハードルが高いのが実態ですが、本来はもっと当たり前に選択されるべきものだと思っています。特に今後は新築の供給が難しくなっていく中で、中古流通の重要性はさらに高まっていくはずです。

一方で、不動産売買は売り手・買い手に加えて、売り仲介・買い仲介といった複数のプレーヤーが関わる、非常に複雑な取引です。ここをテクノロジー やAIの力で、もっとシンプルで分かりやすい体験にしていくことが大きなテーマになります。

これまで4つのプロダクトを展開してきましたが、今後はさらにプロダクトの幅を広げながら、現場の課題に一つずつ向き合っていきたいと考えています。

長谷:ありがとうございます。続いてエムレさん、投資家の視点から見て、今後期待することを教えてください。

エムレ:Faciloが取り組んでいるテーマは、単一のプロダクトで完結するものではないと思っています。不動産取引全体をなめらかにしていくためには、必要に応じてプロダクトを増やしたり、新しい事業に踏み込んだりしながら、長期的に取り組んでいく必要がある。その中で、この領域を真正面からやり切っていただきたいという期待があります。

加えて、今回の取り組みは個社に閉じた話ではなく、日本全体のDXにもつながる示唆があると感じています。BtoBのスタートアップはどうしても大手や都市部にリーチが偏りがちですが、それだけでは社会全体の変革にはつながりません。今回のように、従来の営業手法では届かなかった層にアプローチする方法が見えてきたことは、大きな価値があると思っています。

スタートアップはプロダクトをつくる力は非常に強い一方で、それをどう届けるかという点にはまだ伸びしろがあります。電通SGPの皆さんには今回のような取り組みを通じて知見・ノウハウを蓄積し、それを他のスタートアップにも還元していただきたいですね。どうすればより多くの企業にプロダクトを届けられるのか、日本全体のDXをどう加速させるのか。そのための「知見のハブ」のような存在になっていただけると、VCとしても非常に心強いです。

長谷:ありがとうございます。今回のような取り組みを一つのモデルとして、スタートアップ・投資家・伴走パートナーが一体となって成長を加速させていく。そうした関係性を、今後も広げていけたらと思っています。

エムレ:そうですね。関わる全員にとって価値がある形がつくれるといいですよね。企業の生産性が上がり、ユーザーの体験が良くなり、結果として社会全体も良くなる。そういう循環を生み出していきたいですね。

長谷: Faciloのこれからの挑戦に、僕らもしっかり伴走していきたいですし、今回得られた知見を、より多くのスタートアップの成長支援に生かしていけたらと思っています。本日はありがとうございました!

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

市川 紘

市川 紘

株式会社Facilo

代表取締役 CEO

リクルートに入社後、SUUMOにて営業・プロダクト・経営企画マネージャー・新規事業開発部長として従事。2016年にサンフランシスコに渡り、シリコンバレーの不動産テック企業MovotoのCFOとして勤務。同社をアメリカ第4位の不動産ポータルサイトに成長させ、年間18億円の赤字の状態から黒字化に成功。2020年にはOJO LabsへのM&AによるEXITを実現。この実績を評価され、米国のTop 100 Leaders in Real Estate and Constructionに選出された。2021年に帰国してFaciloを創業。

湯浅 エムレ 秀和

湯浅 エムレ 秀和

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社

パートナー

2014年6月グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。主に産業変革(デジタルトランスフォーメーション)を目指す国内ITスタートアップへ投資。前職は、デロイトトーマツコンサルティングおよびKPMGマネジメントコンサルティング(創業メンバー)にて、企業の海外進出や経営統合(Post Merger Integration)に従事。グロービス経営大学院(MBA)講師。ハーバードビジネススクール卒(MBA)、オハイオ州立大学ビジネス学部卒。

長谷 祐之

長谷 祐之

株式会社電通

Startup Growth Partners(スタートアップグロースパートナーズ)

ビジネスプロデューサー

電通入社後、ラジオテレビ局にてメディアバイイング・番組企画を担当。その後、ビジネスプロデューサーとして大手化粧品メーカーのブランディング・戦略立案・クリエイティブ制作・戦略PR・キャンペーン立案・IPコラボ・SNS戦略などを幅広く担当。2024年よりスタートアップ専門組織であるStartup Growth Partnersに参画。スタートアップの事業成長支援に従事。座右の銘は「一生感動、一生青春」

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